こんにちは。WMS:倉庫管理システム「SLIMS(スリムス)」を提供するセイノー情報サービスです。
人手不足時代におけるWMS(倉庫管理システム)は、テクノロジー活用を促進する「システム基盤」としての役割を期待されています。この記事では物流現場が抱える課題やWMSの定義、メリット・デメリット、導入事例について解説します。
目次
1. 物流現場が抱える課題
4. WMS導入のメリット
5. WMS導入のデメリット
6. WMSを選ぶ際のポイント
7. WMSの導入事例
8. まとめ
物流現場が抱える課題
物流は「労働集約産業」と言われてきましたが、今後は人手をかけ人海戦術で対応していくことが難しくなります。
物流現場は人手不足へどう対応していけば良いのでしょうか。
人手不足は長期的な課題
国立社会保障・人口問題研究所における総人口の推計は、2070年には8,700万人まで減少するとされています。この課題の本質は、日本全体の人口減少よりも早いペースで「働き手」が減少していくことにあります。これからの時代、企業が生き残っていくには人海戦術に頼らずサービスを提供できるよう変革していかなければいけません。
人手不足に負けない物流現場とは
生産年齢人口の減少に伴い、物流現場も慢性的な人手不足に陥っています。この危機を乗り越え人手不足に負けない物流体制を構築するには、4つの観点をこれまで以上に重視することが大切です。
1.効率化:生産性を向上させ、より少人数でも多くの作業がこなせる基盤を作る
2.省人化・省力化:物流システムやロボットなどのテクノロジーを活用し、人海戦術に頼らない
3.標準化:属人化を防ぎ、全員が一定のレベルの作業や成果をだせるようにする
4.品質維持:人手不足を理由に物流のサービスレベルを下げるのではなく、1~3を実施することで維持・向上を図る
人手不足時代の倉庫管理と課題
人手不足時代、倉庫管理の観点ではどのようなことが課題になってくるのでしょうか。
そもそも倉庫管理とは
倉庫管理とは倉庫内の業務を管理・マネジメントすることで、物流センター長や各チームのリーダーが担う業務のことです。QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)の観点でマネジメントし、作業品質や生産性が維持・向上できるよう改善活動を進めます。
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倉庫管理の課題
人手がかけられないことによって、従来からの課題がより顕著になってくると考えられます。それら課題を解決し物流のサービスレベル(QCD)を維持・向上するには、4つの観点「品質維持、効率化、省人化・省力化、標準化」をより強く意識することが大切です。
人手不足によって発生しうる問題(例)
- ・少ない人数でより多くの作業をこなすこととなり、作業ミスが発生しやすくなる
- ・管理者が不足すると「兼務」が増えて多忙になり、作業遅延などの問題に気づきづらくなる
- ・荷物の積卸に人手をかけられず時間がかかり、ドライバーの待機時間が長くなる(待機料も発生)
物流現場の課題を解決するWMSとは
WMSとはWarehouse Management Systemの略称で、倉庫管理システムのことです。
倉庫業務のマネジメントを支援し、作業ミスの削減や効率化などを実現します。
先に挙げた「効率化、省人化・省力化、標準化、品質維持」を推進するにはテクノロジーの活用が不可欠ですが、WMSは活用を促進するシステム基盤になります。バーコードリーダーを始め、ロボットもWMSからの指示が基となって稼働します。最近ではAIを搭載・連携しているWMSも出てきています。
企業にとっての基幹システムのように、WMSは企業が物流機能を成り立たせていくための根幹を支えるものとして、今後より重要性を増すでしょう。

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WMS導入のメリット
WMSを導入する主なメリットを4つ解説します。これらメリットは、人手不足時代でも重要になってきます。
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ヒューマンエラー防止
例えばピッキングの際にロケーションや数量、ロット№などを目視で確認すると作業ミスが起こることもあります。しかしWMSとバーコードリーダーによる検品を行えば、作業・チェックの精度を向上できます。
倉庫業務の効率化
入出荷時に在庫の保管場所(ロケーション)を指定するなど、WMSには効率化のための工夫がたくさん盛り込まれています。先にあげた「ヒューマンエラー防止」は、リカバリーが不要となるため作業効率の向上も図れます。
リアルタイムな状況把握
バーコードリーダーを用いることで、作業の進捗状況をリアルタイムに把握できます。早い段階で作業遅延に気づければリカバリーできるため、出荷遅延などのトラブル防止にもつなげられます。
作業の標準化
WMSからの指示があれば商品やロケーションに関する知識は不要となり、誰でも一定の精度で作業できます。またWMSの導入過程で商品や作業者、得意先ごとに異なる運用を統一できれば、より標準化が進みます。

WMS導入のデメリット
WMSを導入すると多くのメリットを得られる反面、デメリットも生じます。
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周辺システムとのデータ連携が必要
WMSと周辺システムとを連携させるには両システムに改修が必要となり、コストも手間もかかります。しかしWMSを効果的に活用したいならデータ連携は必要不可欠です。WMSベンダーに連携時の注意点を聞くなど、効率的かつ抜け漏れなく手配を進めましょう。
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操作説明や教育が必要
WMS導入に限らず新しくシステムを導入する際には、管理者・作業者への操作説明や教育が必要となります。マニュアルを用意し、事前に説明会を開くなどしましょう。手間はかかりますが、事前教育によって導入時のトラブルを抑制できます。
WMSを選ぶ際のポイント
WMSを選ぶ際には、以下のポイントを確認するようにしましょう。
- ・必要な機能が標準で備わっているか
- ・自社と類似する企業の導入実績はあるか
- ・ITベンダーのノウハウは豊富か
- ・デジタル技術を活用しやすいか
- ・周辺システムと連携できるか
上記の中でもデジタル技術や周辺システムとの連携は、特に重要です。例えば省人化・省力化に向けたAIやロボットの活用が必須となるため、連携が容易なものをお勧めします。またロボットを有効活用するためのWESやバース予約システムなど周辺システムをうまく活用することで、作業の効率化が促進されます。

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WMSの導入事例
WMSを検討する際は「導入するとどのような課題が解決できるか」イメージを持つことも大切です。
ここでは、セイノー情報サービスが支援した6つの事例を紹介します。
株式会社テクノアソシエ:業務の標準化、可視化
株式会社テクノアソシエ様は、産業を支える多様な部材や機構部品を提供するエンジニアリング会社です。
物流システムのリプレースを機に、業務の標準化や可視化を強力に推進されました。WMS導入による標準化は人手不足への対策になりますが、同社ではさらに自動化への布石にもなると考えています。
- 【課題】
- ・得意先ごとに作業者が選任され、多くの個別運用が存在
- ・いつ出荷準備を行うか(作業計画)は作業者に任されており、管理者は状況が把握しづらい
- 【成果】
- ・WMSの標準機能をベースとして業務ルールを見直し、得意先ごとに必須となる個別運用以外の部分を標準化
- ・システムによる作業計画の立案が可能となり、属人化が解消
- ・作業計画のシステム化やバーコードリーダーの活用によって作業進捗が可視化され、管理者によるマネジメントが可能に
関連事例: 株式会社テクノアソシエ「WMS・LMSの活用で現物主義・標準化・可視化を実現」
株式会社明治:業務のブラックボックス化解消、標準化
株式会社明治様は食品と医薬品の提供を通じて、消費者の生活を支えてきた企業です。同社は複数あったWMSを一本化し、人手に頼りブラックボックス化していた運用のオープン化・標準化を実現しました。
- 【課題】
- ・明治(旧:明治製菓と明治乳業)と物流子会社である明治ロジテックが、それぞれ異なるWMSを使用
- ・製品によってルールが異なるため、人手に頼った運用に(ブラックボックス化)
- 【成果】
- ・複数あったWMSを一本化
- ・製品によって異なっていた出荷管理や日付管理、拠点間のトレース情報を一元化し、運用のブラックボックス化を解消
- ・無人フォークリストなど自動化機器とWMSとの連携が強化され、現場の省人化・省力化が進展
関連事例: 株式会社明治 事例「WMS「SLIMS」を全国の拠点へ水平展開!システム統合により業務標準化とコスト削減を実現」
日本製紙物流株式会社:標準化、ペーパーレス化
日本製紙物流株式会社様は、日本製紙グループにおける東京以西の物流を担っている物流企業です。グループ外企業への売上を、全体のおよそ20%から30%に引き上げることを目指し新たなWMSを検討されました。
- 【課題】
- ・従来のWMSは製紙の取り扱いに特化しており、それ以外への汎用展開が困難
- ・限られた人材を有効活用するには、属人的な業務や仕組みをシステム面から見直す必要があった
- 【成果】
- ・ハンディターミナルやタブレット端末の活用により、ペーパーレス化が大幅に進展
- ・ペーパーレス化によって、伝票を取りに行ったり入荷時の二重チェックしたりする必要が無くなり、生産性が向上
関連事例: 日本製紙物流株式会社「WMS・トラック予約システム導入による業務変革で売上拡大を狙う」
アドレス通商株式会社:WMSで改善された現場の更なる効率化
アドレス通商株式会社様はロジスティクスサービス、DM発送サービス、総合人材サービスの3つの事業を展開されています。同社はWMSを軸に物流システムを拡張し、現場の変化に即応できる高度なマネジメントと効率化を実現しました。
- 【課題】
- ・WMSで改善された現場の更なる効率化と自動化
- ・これまでより早いスピードで課題解決への検討・対応が可能なマネジメント体制の構築
- 【成果】
- ・AMR(自立走行搬送ロボット)を活用し作業を大幅に効率化、歩行も削減
- ・作業進捗を数字とグラフで可視化する「LOGISTICS・COCKPIT」で管理者の現場マネジメントを支援
- ・WMSよりもさらに詳しく生産性を可視化できる「FLabor」で作業者ごとのバラつきや偏りを是正し、生産性を底上げ
関連事例: アドレス通商株式会社『「SLIMS」を軸に「RMS」と物流ロボットの導入で現場の更なる効率化を達成』
まとめ
人手不足時代の物流現場にはテクノロジーの活用が必要不可欠ですが、活用のシステム基盤となるのがWMS(倉庫管理システム)です。テクノロジーや周辺システムをうまく活用することで改善の幅が広がり、「品質維持、効率化、省人化・省力化、標準化」が促進されます。
人手不足を理由に物流のサービスレベルQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)を下げるのではなく、WMSを軸に物流DXを推進することで、人手不足に負けない物流体制を構築しましょう。
セイノー情報サービスのWMS(倉庫管理システム)「SLIMS(スリムス)」は、400社以上への導入実績をもとに多岐にわたるノウハウが活かされています。WMSの導入を検討しておられる方は、お気軽にお問い合わせください。

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