2024.3.18

<第2話>荷主企業向け!物流2024年問題の課題と解決策6選

2024年問題と日本の物流の未来

 

2024年問題によるドライバーの労働時間の減少は、荷主企業の物流にも大きな影響を与えます。
当コラムでは荷主企業向けの解決策を紹介します。メリットだけでなくデメリットも解説しますので自社に適したものをお選びいただけます。

 

目次

  1. 1. 物流の2024年問題とは

  2. 2. 「運べない」より先に起こる危機とは

  3. 3. 2024年問題が荷主企業にもたらす課題

  4. 4. 荷主企業におすすめ!2024年問題の解決策6選

  5. 5. まとめ

 

コラムのポイント

  • ・豊富な選択肢の中から自社にあった解決策が選べる
  • ・各解決策のメリットとデメリット

 

物流の2024年問題とは

通称「働き方改革関連法」によって、2024年4月1日からドライバーの労働時間が規制されます。
この規制によって生じる様々な問題は「2024年問題」と呼ばれ、多くの荷主企業が懸念を抱いています。

 

ドライバーに適用される規制とは

ドライバーの労働時間に関わるもののうち、影響が大きいものを2つ紹介します。

時間外労働の上限規制

働き方改革関連法によって、ドライバーの時間外労働(残業)が「年960時間」までと決められました。
1か月で80時間、1日で4時間(1か月が20営業日の場合)残業できます。「余裕のある規制」と思われるかもしれませんが、それ以上働いているドライバーが一定数います。全日本トラック協会のモニタリング調査では「年960時間越のドライバーがいる」との回答が27.1%、長距離ドライバーにいたっては48.1%にもなりました。

拘束時間と休息期間の基準値変更

改善基準告示の改正によって、ドライバーの拘束時間が見直されました。

  • ・1年の拘束時間:原則3,300時間(従来より-216時間【減】)
  • ・1か月の拘束時間:原則293時間、最大310時間
  • ・次の始業までの休息期間:「継続8時間」から「継続11時間を基本とし9時間下限」へ変更
時間外労働の上限規制と合わせて考えると、ドライバーの労働時間を現状よりかなり減らさなければいけないことになります。

※改善基準告示とは
正式名称:自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
トラック、バス、タクシー・ハイヤーなど「自動車運転者」の「労働条件の向上」を目的として拘束時間や休息期間について基準等を定めたもので、「自動車運転者」への新基準値適用は2024年4月1日より開始



 

「運べない」より先に来る危機とは

労働時間が減少すれば、こなせる業務量も減少します。
ドライバーの場合は「運べる距離・量」が減少することになり、荷主企業の物流にも大きな影響を与えます。
当コラムでは特に重要な点のみ紹介し、詳しくは別コラム「物流の2024年問題とは?荷主企業への影響をやさしく解説」ではより詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。

2024年問題で物流のQCDが低下

2024年問題や物流クライシスによって、「モノが運べなくなる」と言われています。
しかし当社ではその前に「荷主企業における物流のQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)が低下」してしまうと考えています。例えば1日に運べる距離が短くなると輸送リードタイムが延び(Delivery:納期)、今までより輸送日数がかかることから人件費が増大し荷主企業への請求金額が上がる(Cost:コスト)といった問題が発生します。 昨今では物流がサービス(商品)の一環として考えられており、他社との差別化ポイントとして機能強化する企業も珍しくありません。「問題が起こったら考えればいい」「運送事業者が考えることだから」とは捉えず、積極的に2024年問題と向き合わなければいけない段階に来ているのです。

従来の運行と働き方改革関連法施行後の運行の違い
従来の運行と働き方改革関連法施行後の運行の違い


 

2024年問題が荷主企業にもたらす課題

2024年4月1日以降もQCDを維持・向上するためには、3つの課題を解決する必要があります。

  • ・長距離納品の継続
  • ・積載率の向上
  • ・ドライバーの拘束時間を削減

長距離納品の継続

先の通り遠方は今までより輸送日数がかかるようになるため、「今と同じ納品条件」を継続できるかがQCD維持のカギとなります。
納品リードタイムの延長や時間指定の廃止などに備えて顧客や自社の営業部門、生産部門と共に業務プロセスを見直すこともできますが、顧客がジャストインタイムを望んでいる場合などは競合他社に乗り換えられてしまう恐れがあります。逆に市場として納品リードタイムを延長する企業が多い中で自社が条件を維持できれば、強力な差別化ポイントになります。見直すべきリードタイムがある一方で、必要に応じてリードタイムを含む納品条件を可能な範囲で維持する工夫が必要な場合もあるのです。

おすすめの実現方法は2つです。当コラムの第4章で詳しく紹介します。


積載率の向上

ドライバーが不足しがちになるため、今の物流を維持したければ積載率を上げて効率的に運ぶ必要があります。
実は積載率を向上させることで、多くの問題が一気に解決できます。

  • ・ドライバー不足の解消:トラック1台で多くの荷物を運び、「運びたい時に運べない」を解決

  • ・ドライバーの賃金アップ:ドライバーは歩合制なことが多いため、積載率で賃金がアップ可能

  • ・運送事業者の売上確保:2024年問題で運べる距離・量が減少し、運送事業者の収入が減少

  • ・荷主企業の輸送コスト抑制:高積載で運べば、荷物1つあたりの単価が下がる

当コラム第4章で、積載率を上げるための具体的な方法を紹介します。


ドライバーの拘束時間を削減

先の通りドライバーの労働時間が減少する中で物流を維持するためには、「可能な限りトラックを走らせる(運行)時間は保ちつつ、拘束時間を削減」することになります。
その場合、減らさなければならないのは「発・着荷主拠点での滞在時間」です。
荷物の積卸などの作業を効率化する、「荷待ち」などの待機時間を短くする、といった方法で滞在時間が減らせます。

実現方法は当コラムの第4章で詳しく紹介します。


長距離貸切輸送における拘束時間の削減
長距離貸切輸送における拘束時間の削減



荷主企業向け!2024年問題の解決策6選

それではこの3つの課題を解決する方法を紹介します。

1.トラックでの長距離輸送をモーダルシフト

トラックによる長距離輸送で問題が発生するのであれば、モーダルシフトが解決策になり得ます。
トラックでは輸送リードタイムが延びてしまい、鉄道輸送の方が早く納品できる可能性が出てくるのです。輸送にかかるコストやCo2も抑制できます。
しかし利用できるルートが限られている、届け先が駅から遠いと効果が出づらい、といったデメリットもあります。
モーダルシフトによって自社の物流はどう変わるのか、しっかりとシミュレーションしましょう。


2.中継輸送で「拘束時間と休息期間」の壁を乗り越える

モーダルシフトが難しい場合は、中継輸送にするのも良いでしょう。
中継輸送とは、長距離輸送の途中で他のドライバーと交代する輸送形態を指します。交代方法はドライバーだけ交代する方法やヘッド交換する方法など様々ですが、どの方法もドライバーが2名関わるため輸送コストが上昇します。
しかし「休息期間」が不要なため、従来の貸切輸送と遜色ないリードタイムで納品できます。
中継輸送の仕組みを整えるのは簡単ではありませんが、構築できれば安定した輸送が実現します。


3.共同配送・積み合わせ貸切を活用

積載率を向上させる際に問題となるのは、中ロット貨物です。
出荷量が多いため、路線便では出しづらいが貸切トラックを満載にできないような場合でも、やむを得ず低積載のまま貸切便で出荷することがよくあります。そうした際に有効なのが、共同配送や積み合わせ貸切によって他社の荷物と混載することで積載率を向上させる方法です。
国土交通省も推奨している輸送方法で、同じ業界内で混載相手を募り同じ届け先へ一緒に輸送したり、重い荷物と軽い荷物を組み合わせて積載率を上げたりする事例が増えています。
そういった共同配送は高積載で輸送するために条件の合う荷主企業を集める必要があります。また各社が納品条件を強く主張するのではなく、輸送しやすいよう時間指定を解除するなど譲り合って条件を調整しなければいけません。

もしそれら調整が難しい場合は、運送事業者の提供する「積み合わせ貸切」サービスを利用するのも1つです。
直前まで混載相手が分からない、相手が見つからず通常の貸切便契約になってしまう難点はあるものの、混載相手探しは運送事業者にお任せできるため手間がかかりません。
積み合わせ貸切はスポット利用でも問題ないため、定期的に発生する出荷は共同配送、スポットで発生する出荷は積み合わせ貸切、といったように使い分けると良いでしょう。

中ロット専用の輸送ネットワーク

セイノー情報サービスの提供する「配送計画サービス」は、荷主企業の担当者に代わって運送手配するサービスです。
路線便、積み合わせ貸切便、鉄道など様々な輸送手段の中から、物量や納品条件に合った運び方を提案します。
「最適な輸送手段を選びたいが手間がかかる」とお悩みであれば、ぜひお問い合わせください。

資料「共同配送・積み合わせ貸切を活用するメリット・デメリット」への申込窓口

4.一貫パレチゼーションによる作業効率化

運行時間を保ちつつドライバーの拘束時間を削減するには、荷主拠点での作業効率化が欠かせません。
厚生労働省は実現方法の1つとして「一貫パレチゼーション」を推奨しています。
一貫パレチゼーションとは、商品をパレット等に積んだ状態(一貫した荷姿)のまま輸送・保管などの物流業務を行うことです。この方法を採用することで、積卸などの作業を効率化し荷役時間を削減できます。
しかし積み替え作業を行うと滞在時間はあまり減らせません。レンタルパレットの活用や届け先と協力してパレットを循環させる仕組みを作って積み替え作業を無くすことで、大きな効果が期待できます。


5.トラックバースの予約受付システムで待機時間を短縮

トラックバースの予約受付システムを活用すると、集荷・配達先でのトラックの待機時間を抑制できます。
ドライバーが専用アプリへ到着時間を入力する手間が発生するため、運送事業者の協力が必要不可欠です。

倉庫側の作業効率化も可能

予約受付システムを導入すると、倉庫側の生産性も向上します。
例えば入荷作業。何時にどの商品がいくつ到着するか事前に把握できるため、受け入れ準備を行えます。適切な準備によって作業の生産性が向上し、ドライバーの滞在時間も少なくて済みます。

セイノー情報サービスの提供する
バース予約管理システム「LMSロジスティクスバース予約」倉庫管理システム「SLIMS」と連携しているため、到着時間の早いトラック(便)から順に作業バッチが組めます。便ごとに進捗状況が可視化されるため、作業遅延もリカバリーしやすくなります。
ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。


6.拠点分散化

運行時間が減っても1日で納品可能な場所に自社拠点を設置すれば、運行距離(ドライバーの拘束時間)を削減できます。
これは非常にハードルの高い解決策です。
まず拠点を増やすとなると管理費用や横持ち費用など全体的な運営コストが増加するため、コストとQCDどちらを優先するか戦略的な判断が求められます。拠点配置が変わるため、物流ネットワークや在庫配置も見直す必要があります。
しかしケースによっては、輸送コストも削減できます。
BCP対策にもなるため、拠点の分散化を検討する荷主企業は一定数います。当社調査でも2024年問題に向けて「物流拠点のシミュレーションを支援企業に依頼中」「ストックポイントの設置」「拠点最適化(新設、再配置)」を実施(検討)しているとの回答が得られました。



まとめ

2024年問題によってモノ運べなくなると言われていますが、その前に物流のQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)が低下します。QCDを維持・向上するために荷主企業が行える解決策は6つです。自社に適したものはないか検討してみてください。

  • 1.トラックでの長距離輸送をモーダルシフト
  • 2.中継輸送によって「拘束時間と休息期間」の壁を乗り越える
  • 3.共同配送・積み合わせ貸切を活用
  • 4.一貫パレチゼーションによる作業効率化
  • 5.トラックバースの予約受付システムで待機時間を短縮
  • 6.拠点分散化で輸送距離を短縮

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