物流センター改善において、管理者によるマネジメントは大きなウェイトを占めます。
そこで当コラムでは、管理者の役割について改善策をまじえながら解説します。何を行うべきか、どのような観点を持つと良いか再確認することで、物流センター改善へつなげていきましょう。
目次
- ・その作業は管理者の役割?
- ・物流現場管理者が本来するべきことは「管理」業務
- ・QCDの観点で業務をチェック
- ・データを活用し、継続的に数値として管理
4. まとめ
コラムのポイント
- ・現場管理者としての役割を再確認する
- ・管理者が本来するべき業務とは何かを整理する
- ・物流改善の本質「QCD」を理解する
物流センター改善の本質とは
物流センター改善とは、荷受・入荷検品・格納・保管・流通加工・ピッキング・出荷検品・包装・輸送梱包・荷渡などセンター内の業務を継続的に改善する活動です。
改善活動によって「品質向上」「生産性向上・コスト削減」「商品管理精度の向上」「作業の安全性向上」などの効果が得られます。その結果、企業競争力と利益創出力が大幅に高まります。
また、物流センターにはもう一つ取り組むべき課題があります。
それは、CS(顧客満足度:Customer Satisfaction)の向上です。
指定された商品・数量を指定されたタイミングで納品することは、顧客からみれば当然であり、満足は得られません。顧客に満足してもらい継続して取引を維持・拡大するためには、CS向上は不可欠です。
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CSを向上するための改善策(例)
- ・出荷ミスや配送事故の防止による、物流品質の向上
- ・顧客側の作業効率を考え、梱包の仕方を工夫
- ・問合せに対し迅速に回答
物流センター改善の先には、企業競争力や利益創出力、CSの向上があります。
そのことを念頭におき、いま行うべき改善策や管理者の役割について考えてみましょう。
物流現場に潜む課題を見つける方法はこちら
物流センター改善における管理者の役割
その作業は管理者の役割?
作業者だけでなく、管理者にとっても毎日の物流現場は忙しいものです。
忙しい日常の業務に追われ、業務改善を進めたいのだけれど計画する時間がなかなか持てないとも聞きます。
継続的に改善活動するために、まずは物流現場管理者の役割を整理してみましょう。
なお、当コラムにおける「物流現場管理者」とは、物流センター長(物流施設の責任者)だけでなく、各業務の責任者(リーダー)も含めています。
それでは、自社の物流現場管理者(または自分自身)が、日々どのようなことをしているか振り返ってみてください。
例えば、以下のような光景がよく見受けられます。
- ・人手が足りないため、管理者が作業を行う
- ・フォークリフト免許を持っている作業者がいないため、管理者が運転する
- ・知識や経験が必要な作業は管理者が行う
- ・ミスがないか、管理者が全て確認する
物流現場管理者が本来するべきことは「管理」業務
物流現場管理者の位置づけは、熟練度の高いスーパー作業者ではありません。
管理者自らが現場作業に没頭していては、本来やるべきことを実施できません。高い作業品質・生産性で運用できるように定期的に現場をチェックしたり改善策を考えることこそ、物流現場管理者の役割なのです。
物流センター改善における管理のポイント
作業の品質や生産性を高めたり納期を遵守するために、管理者はどのような管理を行うべきでしょうか。
管理(定期的なチェックや改善策の検討)のポイントについて解説します。
QCDの観点で業務をチェック
まずは、現場改善の本質であるQCDの観点から整理してみましょう。
Q:Quality(品質)
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日々の業務チェックや、作業ルールの定期的な見直しにより作業品質を向上
- ・日次チェック:作業の漏れや間違いを防止するためのチェック
- ・定期チェック:週次または月次で、定められた作業ルールが遵守されているかチェック
詳しい内容はこちら
C:Cost(コスト)
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生産性を向上させることで、主要コストの1つである人件費を抑制
- ・生産性が低下する要因の1つである「イレギュラー対応処理」について、迅速な対応ができるよう対応法をマニュアル化
- ・作業ごとの生産性を可視化し、一定の水準が保たれているか定期的にチェック
生産性を下げるイレギュラーへの対応についてはこちら
生産性の定期チェック手法はこちら
D:Delivery(納期)
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指定された納期通りに作業完了するための管理とコントロール
- ・目で見る進捗管理:作業リスト置き場や検品・梱包エリアなど、ポイントを押さえて目視チェック
- ・システムによる進捗管理:WMSで作業進捗を管理したり、進捗具合をモニターで掲示して状況を確認
詳しい内容はこちら
データを活用し継続的に数値として管理
想定した効果を早期に出すためには改善活動の継続的な実施と、数値として記録・評価することをお勧めします。
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継続的かつ数値で記録・評価するメリット
- ・現状をより正確かつ客観的に把握できる
- ・経営層や営業など、物流現場にいない人でも状況を掴める
- ・過去実績から改善目標を設定できる
昔に比べ、物流データの収集も容易になってきています。
WMSに蓄積されるデータや、運送事業者から提供されるデータなど簡単に大量に入手できます。
現場の作業実績などは、費用をかけない方法ならば手書き日報でも入手可能ですが、近年は物流DXの一環として、AI(顔認証)やIoT(カメラ・センサー)などの最新技術を駆使して簡単に精度の高いデータを入手し、生産性などのKPIを設定して継続的な取り組みをしている企業が増えています。
まとめ
物流センター改善は、物流現場の課題解決を目的としています。
しかし、得られるものはそれだけではありません。課題解決の先には企業競争力や利益創出力、CSの向上があります。
物流現場管理者はそのことを念頭において現場を管理することが求められています。
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管理するときのポイントは2つです。
- ・QCDの視点で業務を整理
- ・データを活用し、継続的に数値として管理
次回6話からは、より具体的な改善策について解説します。
即実践できる手法を中心に紹介しますので、ご関心のある方はぜひご一読ください。