3PL(サードパーティー・ロジスティクス)とは
3PLとは
3PL(Third Party Logistics サード・パーティ・ロジスティクス)とは、企業内の物流部門が自ら物流業務を行なわず、社外の専門業者に物流業務を委託する業務形態を指します。
第三者(サードパーティ)が荷主企業に代わって、荷主企業のロジスティクス全体を包括的に一元管理し請け負います。

3PLの「L」ロジスティクスとは
「ロジスティクス」は、もともと「兵站(へいたん)」を意味する軍事用語で、「戦闘成果を上げるためにその部隊の後方で、兵士・兵器そして食糧などの輸送・補給、後方の連絡線を確保する活動機能」を言います。
ビジネス的観点から見たロジスティクスは「企業競争力の源泉」であり「経営管理」です。言い換えると、資源(人・モノ・カネ・情報)をどこに、どれだけ配分し調整するのかをマネジメントすることとも言えます。
ロジスティクスは以下の5つに分解できます。
(1)物流の諸機能を高度化する
(2)調達、生産、販売、回収などの分野を統合する
(3)需要と供給との適正化を図る
(4)顧客満足を向上させる
(5)社会的課題に対応する
荷主企業における3PL化の意義とは何でしょうか。
荷主企業は3PL化によって、自ら持つ資源(人・モノ・カネ・情報)や能力で行うよりも優れたロジスティクスが実現できるのであれば、すべて自前でロジスティクスを行う必要はないのです。
3PL市場の規模
3PL市場は右肩上がりに拡大しています。
月刊ロジスティクス・ビジネス紙(2023年9月号)によると2008年度は約1.2兆円だったのに対し、2022年度は約4.1兆円(およそ3.4倍)に成長しました。
国土交通省が物流事業者による3PL事業推進を支援していることや常態化する人手不足などから、今後も市場は拡大すると見られています。
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3PL事業者の種類
3PLサービスを提供する事業者は、大きく2つのタイプがあります。
アセット型
アセット型とは、運送事業者や倉庫事業者など物流リソースを保有している3PL事業者を指します。
外部の事業者と連携することもありますが、基本的には自らが持つ物流リソースを優先的に使用します。そのため事業者選定の自由度は下がってしまいますが、低価格でのサービス提供が可能です。また物流DXに積極的な事業者を選定すれば、荷主企業は投資することなく省人化・省力化を実現できます。
ノンアセット型
ノンアセット型とは、物流リソースを持たない3PL事業者を指します。
ノンアセット型の場合、実際に物流業務を遂行するのは3PL事業者と連携している倉庫事業者や運送事業者です。
3PL事業者自身は実行事業者の取りまとめや荷主企業との窓口役、運用実態をまとめたレポートの作成、改善策の立案などマネジメント部分を担います。知識(knowledge:ノリッジ)を活かしてサービス提供することから、「ノリッジベース型」とも呼ばれています。
ノンアセット型最大のメリットは、荷主企業の特性(課題や商品、出荷特性など)に合わせて最適な実行事業者を選択できることです。そのため、荷主企業のロジスティクスを適正化しやすくなります。
3PLの重要性
企業経営の目的は事業の継続です。しかし、荷主企業を取り巻く社会環境や事業環境は刻々と変化するため、それらに対応しながら利益を出し続けなければなりません。
それを実現する方策のひとつが3PL化であり、「本業への集中」を実現する手段です。
したがって、3PL化への期待は費用だけに留まらず、「本業に集中できる環境を整えること、変化する市場への適応力を高めること」で、次の4点に要約することができます。
(1)収益:在庫適正化による販売機会ロスの削減と顧客サービスの向上
(2)費用:調達・生産・販売における物流コストの削減
(3)運転資本:在庫の削減、売掛金回収サイクルの短縮
(4)固定資本:物流施設・設備コストの削減
3PL導入のメリット
3PLの導入は、ロジスティクス環境の変革による新たなキャッシュフローの創出と、企業の経営環境そのものが改善され、下記7つのメリットをもたらします。
(1)事業変化への適用
物流における業務・IT・組織・インフラは、事業の状況により常に変化し物流量も変動します。
専門能力と実践経験を持つ3PL事業者へ委託することで、事業の立上げ・廃止、物流ネットワークの拡大・縮小などの変化に対する適応能力を高めます。
(2) 財務状況(BS、PL、CF)の改善
物流に対する投資・コストの妥当性など、資源の有効活用やコスト構造の課題を解決する手段として3PLは有効です。
3PLは、BS(貸借対照表)を軽くするなど財政状態の改善、PL(損益計算書)の改善など経営成績の向上、およびCF(キャッシュフロー)の改善など財務に有効です。
(3) 物流サービスの向上
物流サービスは顧客サービスにおける重要な要素で、物流サービス=在庫サービス×倉庫業務サービス×輸配送サービスと言えます。3PLの価値は、これら3つの物流サービスの要素が統合されたマネジメントを実行し、顧客満足に導くことにあります。
(4) 物流コストの削減
物流コストは、販売や生産の方針や制約、取引先との間で決めている物流サービス条件に影響を受けます。したがって、物流コストを削減するには、方針・制約・取引条件の現状を可視化・情報化し、効率化・標準化・自働化に向けた社内外の業務改善が必要になります。
(5) 改善効果の早期獲得
3PLを活用すると、自社の資源や能力で物流改善をするよりも、早期に効果を得られる場合があります。 そのためには、3PL構築における6つのステージ「分析・設計・契約・開発・移行・稼働」におけるプロセスが十分に可視化され、関係者で共有できる方法論とITソリューションが必要です。
(6) 改善効果の継続的な獲得
QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)
における顧客満足は、一時的な効果の獲得よりも、その後の継続的な改善活動と深く関係しています。
3PLの構築における方法論・ソリューションだけではなく、運用の方法論・ソリューションを提供できる3PL業者への委託が必要条件です。
(7)情報システムの活用
物流の情報システムと言えば、代表的なものはWMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)です。いまや、物流機能の高度化には情報技術の活用が不可欠です。 3PL事業者は荷主企業の経営・ロジスティクス環境に適切なITソリューションを選択し、コストの削減とサービス向上に努めます。
常に進化し続ける物流ITソリューション
弊社は、WMSやTMSを中心にロジスティクス全般をサポートするITソリューションを、3PLサービスと合わせて提供しています。 それぞれを単体で利用しても効率化や標準化は実現できますが、KPIやコスト管理、可視化モニタと組み合わせることで導入効果を最大化します。 ロボット、AIなど物流DXにも注力しており、業務・ITの両面でお客様のロジスティクス変革をサポートします。
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関連コラム:
・WMS(倉庫管理システム)とは
・TMS(輸配送管理システム)とは
3PL導入のデメリット
しかしながら、3PLの活用で得られるのはメリットばかりでなく、デメリットが発生する可能性もあります。
業務がブラックボックス化
物流業務を委託することで、細かな管理が行き届かなくなったり、自社の物流に関する知識が不足するなどの弊害も発生します。その対策としては、3PL事業者との積極的な定例会をお薦めします。
定例会ではKPIを活用し、変化の確認を数字で把握します。また、繁忙期の物量予測や新商品の販促予定など、必要な情報を3PL事業者へ提供し、荷主企業としても積極的に物流運営に参画することも重要です。
関連コラム:物流のブラックボックス化とは?解決のポイントや事例を紹介
自社の物流人材の空洞化
3PLは物流業務全般を外部に委託するため、自社にノウハウが蓄積しにくくなります。物流現場でトラブルが発生したとしても、調査や解決にいたるまで全て3PL業者に頼らざるを得ません。本業に集中できる一方で、物流に詳しい人材は育ちというにくいデメリットがあるため、マネジメントや指標管理など、物流管理業務の一部は自社でも担う必要性があります。
関連コラム
・大手企業によるアウトソーシングのデメリット回避動向に関する解説
物流環境の変化
3PLの成功に向けたポイント
WMSを導入すると現場はどのように変化し、どんな効果が得られるのでしょうか。
導入事例をもとにご紹介します。
(1)経営トップが自ら関与すること
戦略的な経営管理としてのロジスティクスを第三者へ委託するには、高度な経営判断とリーダーシップが必要です。荷主企業の経営トップ自らが3PLの構想・計画に深く参画することが重要です。
3PLが、市場の変化に適応する有効な手段であることを十分理解していることがポイントです。そしてこの経営トップの取り組み姿勢や意識は、委託先である3PL事業者にも影響をおよぼします。
(2)3PL事業者を評価する基準と方法が確立されていること
3PL事業者を評価するための基準は、3PL化の目的や委託方針、委託領域により異なります。
一般的にはQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)の3つ観点が大きな評価軸となります。荷主企業と3PL事業者の間で役割分担がなされ、目標達成を判断するための具体的な数値が設定・共有されていることが重要です。
関連コラム:3PL事業者選択時に評価すべきポイント
(3)現場状況が可視化・共有されていること
全て任せっきりにするとブラックボックス化が進行します。そのため日々の稼働状況や進捗状況をリアルタイムに可視化する情報システムを整備する必要があります。これがない場合、対応すべきタイミングを逃し、業務遅延が発生したりお客様への迅速・確実な回答が遅れるなどの支障が生じます。
関連コラム
・アウトソーシングを成功させるポイントとして情報開示の重要性を解説
3PLコンペの具体的な進め方
セイノー情報サービスの3PLサービス
ビジネス環境の変化に伴い、4PLという概念も登場してきています。
ここでは、4PLと合わせて弊社の3PLサービスの主な特長をご紹介します。
関連情報:セイノー情報サービスの3PLサービス「物流業務クラウド」に関する詳細
3PLと4PLの違い
ここまで3PLについて説明をしてきましたが、物流の新しい潮流として注目されているのが「4PL(Forth Party Logistics)」です。3PLはオペレーションやマネジメント領域に重きを置いていました。4PLは3PLの対象領域に加え、荷主企業 の経営方針に基づいたロジスティクス戦略の立案から携わり、経営課題を解決するまでの領域をカバーします。
弊社はLLP(Lead Logistics Provider=4PL)を合言葉に、40年以上にわたり物流戦略の策定から運営・運用管理までのサービスを提供しており、この先もその方針はブレません。

関連コラム:3PLと4PLの違いは?注目されている理由や事業者の選定ポイントも解説
サプライチェーンを網羅する3PL
弊社の3PL事業を支えるのが「物流マネジメントセンター」です。約100名の物流プロフェッショナルがお客様と実行物流業者の間に入り、日夜業務改善に取り組んでいます。 包括的視野で提言し、販売物流にとどまらず、調達物流、循環物流・回収物流、ライフサイクルマネジメントなどサプライチェーン全体を網羅する3PLサービスを提供します。
物流アウトソーシングに興味のある方