2020.4.22

3PL事業者選択時に評価すべきポイント

物流アウトソーシングを成功させるポイント

 

提案依頼フェーズ(全3回)にて、提案依頼フェーズにおける『3PL事業者選択プロセスにおけるポイント』をお伝え致しました。今回は、2つ目の提案評価フェーズにおける『3PL事業者選択時に評価すべきポイント』をお話させて頂きます。

3PLコンペにて、複数の3PL事業者へ提案に必要な情報を提供し、3PL事業者より提案書・見積書を受領した後、各社の提案内容を評価するフェーズに入ります。
その際に、どのような観点でどのように評価するかが重要となります。今回は、3PL事業者選択時に評価すべき4つのポイントをお話させて頂きます。

 

QCDに対する評価

基本的な評価軸は、やはり、Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)です。この3PL事業者選定についてのQCDをご説明します。

Quality

物流センター業務の運用開始後は、在庫差異率・誤出荷率・庫内破損率などの数値で定量的に作業品質を評価できますが、3PL事業者選定においては、それはなかなか難しいと思います。
3PL事業者が運用する他社の事例について前述した作業品質の数値を確認したとしても、物流センターにおける取扱商品や出荷特性に伴う作業内容によって求めるまたは求められる作業品質は異なってまいります。
そのため、その作業品質が優れているか否かは判断できません。但し、作業品質に関する数値をスムーズに答えられる3PL事業者は、日々の運用の中で品質に関する数値目標を設定し、数値に基づく品質管理・改善活動を実施していると想像できますので、評価できるポイントと考えられます。

Cost

コストに関しては、現状運用コストや各3PL事業者から提案されたコストを比較することで明確に評価できます。
但し、そのためには、提案依頼する際に物量条件・見積項目・見積範囲・契約期間が統一されている必要があります。(提案依頼する際のポイントは「第2回:見積を比較できるように見積条件を明確化すること」を参照ください)

Delivery

物流センター作業における納期のポイントは、「入荷した商品が、いつ出荷可能な状態になるのか(入荷作業リードタイム)」や、「何時までに出荷依頼すると当日中に出荷できるのか(出荷依頼受付締め時刻)」などです。
そのため、3PL事業者の想定する業務タイムスケジュールを確認することが重要となります。

費用体系に対する評価

上記のコストと合わせて評価したいポイントは、費用体系が細分化または変動費化されているか否かです。
これらは、物流改善活動に対する源泉となり、重要な評価ポイントとなるため、保管料と作業料の2つを例として取り上げて具体的にお話します。

 

保管料の費用体系の違い

  • ・A業者の費用体系 : 1坪あたり1か月XXXX円、XXXX坪固定
  • ・B業者の費用体系 : 1パレットあたり1か月XXX円
  • ・C業者の費用体系 : 1ケースあたり1期XX円(3期制)

各社の保管料の合計費用が同額であったとしても、各業者の費用の基準物量単位が「坪/パレット/ケース」とそれぞれ異なり、費用の基準期間も「1か月/1期」と異なっています。
多くの企業様は在庫適正化に取り組んでみえますが、生産/発注ロットの見直しや生産/発注リードタイムの短縮により各商品の在庫量が圧縮できた場合は、保管料削減に繋がる費用体系であるかはとても重要な評価ポイントとなります。
もちろん、A業者の固定坪制においても、保管方法を見直して利用坪数を減らす交渉は可能ですが、在庫圧縮による確実な期待効果が荷主企業側で容易に試算できるC業者の費用体系の方が他の費用体系よりも高く評価できます。

 

作業料の費用体系の違い

  • ・A業者の費用体系 : 出荷作業料1000円/件
  • ・B業者の費用体系 : 出荷事務作業料100円/件+ケース出荷料50円/ケース
               +ピース出荷料20円/ピース、梱包作業料100円/箱

A業者とB業者の月額トータル費用が同額であったとしても、A業者とB業者との費用体系は大きく異なっています。
B業者の作業料は細分化されているため、「どのような作業にどれだけのコストが発生するのか」また「どの作業を改善すると、どのコストが低減できるのか」が明確になっています。
運用稼働後には、荷主企業様と3PL事業者と一緒になって物流改善に取り組むことになりますが、改善の結果が物流コスト削減に繋がる費用体系であるか否かは重要な評価ポイントとなります。

物流コーディネート力の評価

3PL事業者には、荷主企業より受領した提案依頼内容を分析・設計し、アセットやシステムを組み合わせて最適な物流サービスを提供する能力、つまり、物流コーディネート力が求められます。

物流コーディネート力について、以下の3つの要素を紹介します。

 

A)分析・設計能力

荷主企業より受領した提案依頼内容から、様々な分析・設計作業を行う必要があります。
届け先別の出荷物量データより物流センターの立地場所を分析したり、在庫データより物流センターに必要な保管スペースを設計したり、入出荷物量データより業務特性を分析し、最適な業務フローを設計します。
この分析・設計内容が適切に実施されていないと、大きく間違った物流業務が構築されてしまい、本番稼働後に大混乱することになります。そのため、3PL事業者からの提案・見積書を受け取る際には、どのような考え方で分析を行い、その結果どのように設計したのか、各社の考え方をしっかりと確認する必要があります。
つまり、コストのみを比較して安易に安い方を選定するのではなく、分析・設計内容を確認してコストの妥当性を評価する必要があります。



 ご参考)弊社における3PL構築フェーズにおける分析・設計などのプロセスを取り纏めた方法論 構築MeLOS はこちらでご紹介しております。

 

B)アセット調達能力

分析・設計の結果、必要な物流センターの場所・スペース・設備・要員数が求められますが、3PL事業者にはこれらを調達する能力が必要となります。
3PL事業者の自社アセットに限らず、関連会社のアセットの空き状況なども確認して分析・設計にできる限り近いものを調達できれば、最適な物流業務が構築できます。
よって、3PL事業者の保有するアセットの一覧や業務実績、また、関連会社とのパートナーシップを確認することで、アセット調達能力を評価することができます。
また、本番運用稼働後においても、繁忙期など想定外の物量増加により、急遽保管スペースや作業者の増員が必要な場合があります。そのような場合に、どのような対処方法が可能なのかを確認することも、アセット調達能力の評価方法として有効です。

 

C)IT活用能力

物流センターにて利用するITと言えば、やはり代表的なものはWMS(倉庫管理システム)です。
3PL事業者は既存の運用業務の中でWMSを利用していますので、WMSを持っているか否かは評価項目としては必要ありません。評価すべきポイントは、荷主企業からの提案依頼内容に対して、いかにITを活用してコストを抑え、サービスを高めようとしているかが重要です。
具体的には、3PL事業者より提示される業務フローにおいて、ITによる標準化・効率化・可視化に関する具体的な実現方法や期待効果が表現されているか否かを確認することで評価できます。

物流マネジメント力の評価

下の図は、物流の活動領域を「戦略」「企画・計画(運営管理)」「運用管理」「運用」の4つのレイヤーに分けて表現しています。
最下層にある「運用」といった作業・輸配送だけでなく、「運用管理」「運営管理」といった役割も3PL事業者には必要となります。

3pl_image4-1.png

具体的な運用管理の活動としては、日々の実運用に関して、寄託者から受領する入荷予定や出荷依頼の情報に基づいて作業員の要員計画を行ったり、保管スペースの確保を行ったり、作業の段取りを行います。
また、現場の作業進捗状況に応じた要員配置の見直しなど、現場のコントロールを行います。また、運営管理の活動としては、生産性や品質に関する目標設定に基づいて、継続的に改善活動を推進していきます。

このような現場コントールや継続的な改善活動を行うマネジメント力が3PL事業者の重要な評価ポイントとなります。そのため、3PL事業者から受領した提案書やプレゼンテーションにて、具体的な現場管理手法や改善手法・改善事例などを詳しく確認することをお薦めします。

 ご参考)弊社における3PL運用フェーズにおける運用管理・運営管理のプロセスを取り纏めた方法論 運用MeLOS はこちらでご紹介しております。



ロジスティクスは企業活動の根幹です。企業を取り巻く環境の変化が激しい中、事業を拡大または安定的に継続していくためには、変化に柔軟に対応できる物流を構築でき、物流改善・物流改革を継続的に推進できる3PL事業者を選定する必要があります。
3PL事業者の切り替えには、大きなリスクと費用が発生するため、今回ご紹介した評価ポイント(QCD、費用体系、物流コーディネート力、物流マネジメント力)に関して適切に評価しましょう。

今回のコラムでは、3PL事業者から提案が実施された際、どのような観点をどのように評価するべきかといった3PL事業者選択時の評価ポイントについてお伝え致しました。

次回は、3PL事業者を選定後、物流センター立ち上げプロセスにおけるポイントについて、お話させて頂きます。

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