こんにちは。WMS:倉庫管理システム「SLIMS(スリムス)」を提供するセイノー情報サービスです。 ERPから物流機能を切り離し、WMSなどの独立したシステムで、物流を管理する企業が増えています。この記事では、WMS(倉庫管理システム)とERPの概要や導入目的、メリットなどについて解説します。ERPでの倉庫管理に課題を感じている方は、参考にしてください。
目次
1. WMSとERPの概要
2. WMSとERPの導入目的
5. WMSとERPの連携方法
7. まとめ
WMSとERPの概要
WMSとERPの概要について解説します。

WMSとは
WMSはWarehouse Management Systemの略称で、バーコードリーダーを使って入荷・出荷・保管の作業を効率化し、倉庫を管理及び作業精度を向上させるシステムです。作業の進捗状況をリアルタイムに可視化し、管理者のマネジメント業務も支援してくれます。
ERPとは
ERPはEnterprise Resources Planningの略称で、日本語では「企業資源計画」と訳され、企業が持つ経営資源である「人・モノ・カネ・情報」を効率的に活用するための考え方や経営手法を指します。最近ではERPという考え方を実現するためのシステム自体も「ERP」と呼ばれることが一般的です。
ERP(システム)は、企業の基幹業務である販売管理、生産管理、財務会計などを一元的に管理できることが特徴です。以前は大手企業を中心に導入されていましたが、最近では中小企業向けのERPパッケージも登場し、さまざまな規模の企業にとって重要なシステムとなっています。
WMSとERPの導入目的
WMSとERPの導入目的は異なります。ここでは、それぞれの目的について解説します。
WMSの導入目的
WMSの導入目的は、倉庫業務を効率的にマネジメントすることです。具体的には、管理者が倉庫のマネジメントをより効果的に行うことを支援し、物流におけるQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)の向上を目指します。
物流のQCDが向上すると、物流サービス全体の質が向上し、顧客満足度が高まります。また、他社との差別化にもつながります。
参考コラム:WMS導入の目的と業務改善
ERPの導入目的
ERP(システム)を導入する目的はERPという経営手法を実現することです。販売管理システムや生産管理システムなど、従来は異なるシステムで管理されていたデータを一元的に管理することで、経営資源(人・モノ・カネ・情報)の効率化を図れます。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も、ERPの普及が加速している要因の1つです。
参考コラム:DXを促進する新ERPモデル

WMSとERPの導入メリット
WMSとERPは導入メリットも異なります。ここでは、それぞれの導入メリットについて解説します。
WMSの導入メリット
WMSは先入れ先出しや期限に基づき最適な出荷指示を行い、バーコードリーダーを使用して精度を大幅に向上させ、ミスを減らします。ピッキング方式の選定により、歩行時間や無駄な作業を削減し、全体の作業効率を上げます。 また、作業手順が標準化されているため、新人でもベテランと同じレベルで作業が可能です。リアルタイムで進捗や在庫状況を可視化でき、遅延を早期に発見して迅速に対応することで、業務全体の管理がスムーズになります。
ERPの導入メリット
ERPの導入には多くのメリットがあります。まず、販売や生産のデータを一元管理でき、経営判断が迅速かつ正確になります。これにより、業務の効率化が進み、少ない労力で成果を上げることができます。 さらに、システムの統合により、社内ルールが整備・統一され、システム同士の連携が円滑になります。これにより、転記ミスやデータの不整合を防止できます。 また、近年のERPはセキュリティ対策が充実しており、ログインパスワードが1つで済むため管理が容易です。不正アクセスなどのリスクも軽減されます。
参考コラム:アドオン開発から脱却し、DXを促進|メリット・デメリットとDX事例
WMSとERPの違いと使い分け
WMSとERPの違いとその使い分けについて、以下で詳しく解説します。
WMSとERPの違い:導入目的、管理範囲
WMSとERPは目的や管理範囲が異なります。ERPは企業の基幹業務を一元的に管理し、情報を統合して管理することを目的としています。一方、WMSは倉庫業務に特化し、現場の作業やマネジメントの効率化を支援します。導入費用についてはERPの方が高くなる傾向があります。これは、ERPの方がWMSよりも管理範囲が広く、機能が多いためです。
WMSとERPの使い分け
WMSとERPの使い分けは、企業が何に重点を置くかによって決まります。倉庫業務や物流全体の効率化を追求する場合は、WMSを導入するのが効果的です。ただし、WMSを導入する際はERPと連携させて併用することが一般的です。 一方、ERPは業務の効率化ではなく、経営目線での資源の有効活用に重きをおきたい場合に適しています。ERPには在庫管理機能も備わっており、アドオン開発を行えば物流管理も可能です。
WMSとERPの使い分けに関する近年の動向
近年、WMSとERPの使い分けに変化が見られます。以前はERPで物流を管理する企業もありましたが、最近では物流情報や営業情報などの管理に特化したシステムを活用し、ERPと連携させる企業が増えています。この方法は、大手ERPベンダーや外資系コンサルティング会社が推奨している使い分け方です。
具体的には、ERP本体は販売管理や会計など普遍的な業務に特化し、スリム化を図ります。一方、変化が激しい物流や営業活動などの業務には、WMSなどのサブシステムを採用し、ERPと連携させて管理します。
以下は、WMSを活用しERPと連携させる主なメリットです。
- ・業務に特化したシステムであるため、現場運用やマネジメント、改善活動が行いやすくなるノウハウが含まれている
- ・サブシステム側の改修やリプレースにかかるコストを抑制し、スピーディーに導入できる
- ・改修時のリスク対策や負荷軽減などERPへの影響を最小限に抑えられる
- ・ロボットやAIなどのデジタル技術を活用する際に、システム改修が必要となる場合でも導入しやすい
関連コラム:ロジの素「DXを促進する新ERPモデル|次世代型ERPを採用する企業の増加」
商物分離の考え方
WMSとERPの併用は、「商物分離」という考え方に基づいています。商物分離は、販売管理などの商流と、在庫管理や輸配送といった物流を切り分けて管理する方法です。営業部門と物流部門は役割や扱う情報が異なるため、同じシステムで管理するのではなく、各部門の特性に合わせて業務を分担することが推奨されています。以下は、商物分離を実施するメリットです。
- 物流機能を物流部門に集約することで、業務の効率化や標準化、コスト適正化が図れる
- 在庫管理がより効率的になり機会損失を恐れての在庫過多が抑制され、適正化が図りやすくなる
- 営業部門が商談活動に専念でき、より効果的な営業活動が可能になるため、売上が増加する可能性が高まる
WMSとERPの連携方法
WMSとERPの連携は必要不可欠です。以下で連携方法について解説します。
WMSとERPの連携は必要不可欠
商流と物流は、それぞれ専用のシステムで分離して管理しますが、両者の業務は密接に関わっているため、情報連携が不可欠です。ERPは上位システムとして、業務に必要な情報をWMSに提供し、WMSから実績データがERPに返される仕組みです。
例えば、ERP内の受注データはWMSに出荷指示データとして連携され、倉庫作業者に作業指示書が発行されます。また、倉庫で入出荷作業が完了すると、その結果として業務終了後に完了情報と実績情報がERPに連携され、WMSとERPの在庫データが同期化されます。
WMSとERPの連携はAPIやEDI(電子データ交換)による連携が一般的です。それぞれの連携方法については、以下で詳しく解説します。
API連携
API連携は、あるアプリケーションの機能を別のアプリケーションから呼び出して連携することでその機能を拡張させることを指します。アプリケーションの一部を公開(APIを公開)することで外部連携を可能にします。最近はAPIを公開しているアプリケーションが増え、連携が容易になっています。WESなどリアルタイム性が求められるシステムと連携する際に利用されます。
EDI連携(電子データ交換)
EDI連携は専用回線やインターネットを通じて、ファイル単位でデータを連携する方法です。ファイルのやり取りに加え、事前に定めたルールに従って、データのレイアウトや文字コードを自動で変換できます。一般的には、基幹システムからの「出荷予定情報」はWMSへ都度送信され、WMSからの「作業実績情報」は作業終了後に連携されます。
WMSと連携できる他システム
WMSは他のシステムと連携することで物流業務全体を効率化できます。以下は、WMSと連携可能な主要なシステムです。
- TMS(輸配送管理システム):出荷から配達先に届くまでの過程を管理するシステム
- LMS(統合物流管理システム):基幹システムとWMS、TMSの中間に位置し、情報の一元管理とマネジメント強化を実現するシステム
- WES(倉庫運用管理システム):WMSとマテハンやロボットを連携させ、設備を統合的に管理するシステム
また、WMSはロボットの他に、最近ではAIを使った画像検品との連携も進んでいます。
まとめ
WMSは、バーコードリーダーを用いて、入荷・出荷・保管作業を効率化し、倉庫管理と作業精度を向上させるシステムです。一方、ERPは、販売管理、生産管理、財務会計など企業の基幹業務を一元的に管理できます。2つのシステムを上手く併用し、業務全体の効率を高め、より効果的な管理を実現しましょう。
セイノー情報サービスでは、物流現場の各フェーズに最適なソリューションを提供し、経験豊富なスペシャリストが物流現場の課題解決をサポートします。WMSの導入をお考えの人は、ぜひ資料をご請求ください。

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