2024.10.11

物流コストの可視化とは?取組みのポイントや重要性を解説

大手企業ほど陥りやすい物流のブラックボックス化

 

こんにちは。統合物流管理システム「LMS(エルエムエス)」を提供するセイノー情報サービスです。
コスト削減の第一歩である「可視化」が、実は大変難しいことをご存じでしょうか。
当コラムではどういう状態を「可視化できている」というのか、取り組むメリットや注意すべきポイント、コスト削減につなげる方法などを解説します。「物流コストの削減に取り組んでいるが、思うように成果が出ない」とお悩みの方はぜひご覧ください。

 

目次

  1. 1. 物流コストとは

  2. 2. 実はブラックボックス化しやすい物流コスト

  3. 3. 物流コストを可視化するメリット

  4. 4. 物流コストを可視化する際のポイント

  5. 5. 物流コストを削減する方法

  6. 6. まとめ


 

物流コストとは

物流コストとは、物流業務を行うのにかかるコスト全般を指します。企業にとって、物流コストは「経費」の1つです。そのため利益を少しでも増やそうと、多くの企業が物流コストの削減に取り組んでいます。

物流コストの分類方法

物流コストを把握する場合、コストをいくつかのカテゴリに分類すると自社の特徴を掴みやすくなります。
今回はよく用いられる分類方法を3つ紹介します。

機能別 物流機能ごとに分類
先に紹介した「物流コスト調査」の5つの費目は、この分類方法に従ったもの
支払い形態別 コストを自家物流で発生したものと支払物流で発生したものに分類
領域別 物流プロセスごとにコストを分類
例:調達物流費、社内物流費、販売物流費、返品物流費、回収物流費

物流コストの内訳

先に紹介した分類方法3つのうち、一番よく用いられるのは機能別分類です。今回は日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が毎年行っている「物流コスト調査」の項目に従い、機能別分類における内訳5つを紹介します。

輸送(運送)費 輸送を委託している運送事業者に支払う運賃、輸送に必要な資材の購入費用や保険料 など
保管費 在庫の保管や管理にかかる保管料、外部倉庫の賃貸料や自社倉庫の維持費、火災に備えた保険料 など
荷役費 ピッキングや包装、トラックへの積卸 など
人件費のうち倉庫における荷役作業に関わる費用
包装費 包装用の資材費、包装作業にかかる人件費 など
物流コスト全体におけるインパクトが小さいため、「荷役費」に内包して管理する企業も多い
物流管理費 物流システムの導入・維持費、物流作業や戦略立案など物流業務全般にかかる人件費
人件費はそのインパクトの大きさから、物流管理費には含めず独立した費目として管理する企業も多い

日本ロジスティクスシステム協会「物流コスト調査票(集計フォーマット)」
出典:日本ロジスティクスシステム協会「物流コスト調査票(集計フォーマット)」

 

実はブラックボックス化しやすい物流コスト

実は「コストを可視化」できている企業は多くありません。「各事業者への支払い金額や物流コストの総額は分かる」など詳細なコストはブラックボックス化してしまっている場合が殆どです。特に複数の倉庫・委託先企業があると管理が複雑になり、正確に把握するのが難しくなります。

物流コストのブラックボックス化の例

  • ・委託先に支払っている金額(総額)は分かるが、内訳や妥当性が分からない
  • ・業務が属人化しており、担当者にしか詳細が分からない
  • ・営業や生産部門など他部門からの要望を優先し、物流計画を立てている
    (例:積載率やコストに関わらず貸切便で輸送)

関連コラム:物流のブラックボックス化とは?解決のポイントや事例を紹介

物流コストがブラックボックス化するデメリット

物流コストがブラックボックス化していると、問題に気づきづらくなります。
また「何が問題なのか」が具体化できません。
例えば「運賃が高い」と感じていたとしても、どの届け先(またはどの運び方)の分が・どの程度高いのか、いくらなら適正なのかを明確に示せないのです。そのため適切な取り組みができず「思うような効果が出ない」こともあります。
最近は人件費や輸送費が高騰しています。物流コストのブラックボックス化は、今後さらに重要度を増すでしょう。

物流コストがブラックボックス化すると起こる問題
 

物流コストを可視化するメリット

物流コストを可視化すると問題に気づきやすくなるため、効果的なコスト削減活動が行えるようになります。
以下でその理由を詳しく解説します。

改善すべきコストが分かる

物流コストが可視化できていると、どのコストの改善に取り組むと良いか分かるようになります。
「より大きな改善効果が見込める」ものや「問題がある」ものが見つけやすくなるためです。そのため物流コストを削減したいなら、まずは分類方法を決めて内訳ごとの金額を把握(可視化)することから始めましょう。

改善効果の出やすいコストが分かる

一般的に、改善活動を行う場合は「ボリュームや比率が高いもの」の方が大きな効果を得られます。
物流コストの場合は、金額または比率で判断します。「どの費目から取り組むのか」優先順位が付けられるため継続的な活動計画が立てられますし、経営層や他部署に「なぜそのコストに取り組むのか」説明しやすくなります。

問題を早期に発見できる

物流コストを可視化し続けると、問題の早期発見が可能になります。
例えば「貸切便の運賃が、物量・便数は変わらないのに高くなった」など通常とは異なる金額変動にいち早く気づけます。課題の発見が遅れれば対策を取るのも遅くなるため、その分だけ不要なコストがかかり続けてしまいます。コストを適正な状態で保つために、問題の早期発見は非常に重要です。

物流コストを可視化するメリット

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物流コストを可視化する際のポイント

どうすれば物流コストを可視化できるのでしょうか。可視化に取り組む際のポイントをご紹介します。

管理ルールを明確化

物流コストを算出する場合、経理的な観点から一定のルールはありますが「何を物流コストとして管理するか」など詳細は自社独自のルールが必要となる部分もあります。例えば人件費や管理費は販売管理費と物流管理費のどちらにも分類できてしまいます。算出・管理ルールを明確にし、経営層を含めた社内全体で合意・共有しておきましょう。

  • ・何を物流コストとして管理するか
  • ・どの分類方法で見るか(機能別、支払い形態別、領域別など)
  • ・どのコストをどこに分類するか
  • ・どの部門が、いつ算出・報告するか

内訳ごとに金額やコスト比率を可視化

物流コストの管理ルールの一環として取り決めた分類方法に従って、内訳を可視化しましょう。
一番よく使われるのは機能別分類ですが、他の分類方法を併用することもあります(例:支払い形態別や領域別に分類した後で機能別に分類)。また物流事業者はもちろんですがその他業種でも「分類」の1つとして得意先ごとにかかった金額を算出すると、売り上げに見合った原価かどうか(利益が出ているか)を確認できます。

物流コストはデータで管理

物流コストを算出・管理するなら、データ化することをお勧めします。
どの費目をどの内訳に含めるかなど、コストを見る際の切り口を変えやすいためです。
また単価など必要な情報が分かれば、自社でコストを算出できます。あらかじめ金額が分かれば、請求書が来てから「なぜこんなに高いのか」などと焦らずにすみます。「運送事業者からの請求金額を確認するため、送り状を1枚ずつ確認しながらチェックする」といった手間も省けます。
なお物流コストの算出・管理にはシステムの活用をお勧めします。エクセルなどの表計算ソフトでも可能ですが、リアルタイム性や正確性などの点でシステムの優位性が高くなります。

関連情報:セイノー情報サービスの統合物流管理システム「LMS」による物流コスト算出機能


物流コストを可視化する際のポイント

 

物流コストを削減する方法

機能別で物流コストを見る場合、削減対象として注目されやすいのは輸送費、保管費、人件費(管理費)です。
支払い形態別で見て、自家物流の在り方を検討する場合もあります。

輸送費

どの業種・企業でも物流コストに占める輸送費の割合は比較的高く、コスト削減の際に注目されやすい傾向にあります。

運び方を変える

例えば輸送リードタイムに余裕がある場合はモーダルシフトに切り替えるなど運び方を変えると、輸送費を抑制できます。積載率の低い貸切輸送は共同配送や積み合わせ貸切に切り替えて積載率を上げるのもお勧めの方法です。

関連コラム
・解決策の1つとして、共同配送・積み合わせ貸切について解説
荷主企業向け!物流2024年問題の課題と解決策6選


輸送頻度を下げる

例えば週2回の定期配送を1回に減らすと輸送費が削減できます。ただし在庫数の増加によって保管費が上がってしまう可能性もあるため、注意が必要です。輸送費・保管費など分類ごとで検討する場合も、他のコスト(業務)に影響が出ないか全体最適の観点で検討しましょう。

保管費

物流コストの削減として、在庫数を減らして保管費を抑制しようという取り組みもよく行われます。
先の通り輸送頻度を下げると抱える在庫が増加し保管費が上がったり、在庫を多く抱えることでムダな輸送(特に横持ちなど)が増加したりするため、保管費と輸送費はセットで改善検討する傾向にあります。

人件費(管理費)

人件費を削減する主な方法は、人員削減です。しかし実際に雇用人数を減らすことは難しく、繁忙期に臨時雇用ができず困る場合もあります。そのため残業時間の抑制や徐々に人員削減する準備として、生産性を向上させるための活動が行われたりマテハンやロボットを活用して省人化を図ったりします。

関連コラム
生産性管理で物流センターのコストを改善
物流ロボットとは?マテハンとの違いや種類を紹介

自家物流費

自家物流と支払物流を比較し支払物流の方が安くなるのであれば、物流機能をアウトソースするのも1つの方法です。
支払物流に切り替えることでコストが可視化しやすくなる、というメリットも得られます。機能別の分類とは別に支払い形態別の分類で物流コストを比較すると、切り替えるべきか検討しやすくなります。

セイノー情報サービスのアウトソーシングサービス

セイノー情報サービスは400社以上にWMS(倉庫管理システム)「SLIMS」を導入してきた経験を活かし、物流のアウトソーシングサービス「物流業務クラウド」も提供しています。現場運用の請負(3PL)から全体の適正化を目指した変革支援(4PL)、ロボットなどデジタル技術の活用提案やデータ分析(5PL)まで、お客様の課題や状況に合わせた柔軟な対応が可能です。
基礎から学ぶ物流アウトソーシングセミナー」も開催しているため、ぜひご活用ください。


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まとめ

物流コストとは、物流業務を行うのにかかるコスト全般を指します。 可視化できていないと、売上以上に手間(コスト)をかけてしまうこともあります。そのため「総額」ではなく、内訳まで細かく把握しましょう。可視化によって自社の特徴や改善すべき点が分かれば、効果的なコスト削減活動が行えます。


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このコラムの監修者
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セイノー情報サービスは400社以上へのWMS導入を通して培った物流ノウハウをもとに、お客様の戦略立案や物流改善をご支援しています。
当コラムは、経験豊富なコンサルタントやロジスティクス経営士物流技術管理士などの資格を持った社員が監修しています。
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