2025.11.27

「物流を自動化」するとは?メリットと課題、その方法を解説

いまさら聞けない物流用語

 

こんにちは。WMS:倉庫管理システム「SLIMS(スリムス)」を提供するセイノー情報サービスです。
物流の自動化とは、荷物の配送・運搬、仕分け・入出庫といった物流業務をロボットやシステムを活用して自動で行うことを指します。
物流現場では、人手不足への対応や作業効率の向上、コスト削減などが喫緊の課題となっており、その解決策として「物流の自動化」が注目されています。現在では、倉庫内の作業だけでなく、輸配送のプロセスにも自動化技術が導入され始めています。
この記事では、物流の自動化が求められる背景やメリット、導入時の課題、さらに自動化を支えるシステムや導入事例を紹介します。自社の物流業務の改善を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

 

目次

自動倉庫
  1. 1. 物流の自動化とは

  2. 2. 物流の自動化が求められる背景

  3. 3. 物流を自動化するメリット

  4. 4. 物流の自動化における課題

  5. 5. 物流の自動化を加速させるために

  6. 6. 物流自動化を支えるシステム

  7. 7. 物流を自動化するシステムの導入事例

  8. 8. まとめ


 

物流の自動化とは

物流の自動化とは、倉庫内や輸配送の業務にロボットやマテハン、情報システムを導入し、人手に頼らず効率的に業務を進める取り組みを指します。単なる機械化ではなく、WMS(倉庫管理システム)などを活用した「管理の自動化」も含まれ、近年ではAIを活用した高度な自動化が進展しています。


 

物流の自動化が求められる背景

物流の自動化が進む背景には、主に「人手不足」と「市場・顧客環境の変化」があります。それぞれを詳しく解説します。

労働力不足への対応

物流業界では、少子高齢化や労働環境の厳しさを背景に、人手不足が深刻化しています。荷役・仕分け・配送などの現場では人員確保が難しく、1人あたりの作業負担が増加しています。さらに、2024年問題に象徴される労働時間の上限規制により、従来の体制では業務を維持できないケースも増えています。こうした課題を補い、持続的な物流体制を実現するために、自動化は避けて通れない選択肢となっています。

市場・顧客環境の変化

EC市場の拡大やデジタル消費の定着により、物流への要求は量・質ともに大きく変化しています。
荷物の取扱量が増える一方で、「即日配送」「小口多頻度」「リアルタイム追跡」など、顧客ニーズはより多様で高度化しています。企業間取引(BtoB)でも、在庫の最適化や柔軟なリードタイム対応が求められるようになり、従来の手作業中心のオペレーションでは対応が難しくなっています。
このような環境変化に適応するためには、倉庫や輸配送の自動化、データ活用による効率的なオペレーションが不可欠となっています。


 

物流を自動化するメリット

物流を自動化することで、生産性の向上やコスト削減など、さまざまなメリットが期待できます。ここでは代表的なメリットを解説します。

生産性が向上する

物流を自動化することで、荷物の入出荷やピッキング、搬送といったさまざまな業務を短縮化できます。人手に頼る場合は労働時間に制限がありますが、自動化すれば制約なく業務が進められるため、生産性の向上が可能です。効率的に業務を進めることで納期遅延のリスク軽減にもつながります。

業務品質が安定する

ロボットやマテハン、情報システムを導入することで、精度の高い業務をスムーズに行うことが可能です。経験やスキルに依存する品質のムラを減らせるため、常に一定の品質を維持できます。これにより、納品ミスや誤出荷を防ぎ、顧客や取引先からの信頼を得やすくなるでしょう。また、ヒューマンエラーの低減にも効果的で、トラブルやクレーム対応にかかるコストや労力の削減にもつながります。

安全性が向上する

高所や危険な場所で行う業務を自動化することで、転落や体が機械や器具の可動部分に挟まれたり巻き込まれたりするといった事故を減らせます。また、運搬時の荷崩れといった事故が発生する危険性がある労働環境での業務が減り、安全性が向上します。

従業員の負担を軽減できる

物流の業務には、重量物の運搬、長時間の立ち作業、荷物の長距離移動といった体に負担が大きいものが多く含まれます。これらの業務を機械に代替させることで、従業員の身体的負担を軽減できます。


 

物流の自動化における課題

物流の自動化は、従業員の負担軽減や安全性向上など多くのメリットがありますが、導入にはいくつかの課題も伴います。ここでは、代表的な4つの課題を解説します。

導入や運用にコストがかかる

物流の自動化には、システムやロボットを導入するための初期投資が必要です。さらに、導入後も維持管理や定期的なメンテナンス、ソフトウェア更新などの運用コストが継続的に発生します。
また、システム障害時の費用や業務停止による損失、人材育成にかかる教育コストなど、運用面でも費用負担は少なくありません。こうしたコストを正しく見積もり、自社の規模や業務量に見合った導入計画を立てることが重要です。

現場教育と意識改革の重要性

自動化の導入によって業務フローが大きく変わるため、従業員への教育と意識改革が欠かせません。
機器の操作方法だけでなく、自動化の目的や効果を理解してもらうことで、現場全体が前向きに取り組める体制を築くことが大切です。
また、マニュアル整備や運用ルールの策定など、教育面以外の準備にも時間とコストがかかるため、導入スケジュールには余裕を持たせる必要があります。

組織体制の見直しと最適化

自動化を円滑に進めるためには、業務プロセスの再設計や人員配置の見直しが不可欠です。
従来のやり方を踏襲したまま急激に自動化を進めると、システムの機能を十分に活かせない場合があります。
特に通常業務と並行して導入を進める場合は、一時的に現場の負荷が増すこともあるため、段階的な移行と社内全体での調整が重要です。

運用・スペースの課題とリスク対策

自動化機器の設置には一定のスペースが必要で、倉庫レイアウトや動線の最適化を検討しなければなりません。
また、機器の故障やシステムトラブルに備えて、予備機材の確保やバックアップ体制の整備、緊急時対応マニュアルの準備が重要です。さらに、環境変化やシステム更新に柔軟に対応できる運用ルールを整えることで、安定した稼働と安全な運用を維持することができます。


 

物流の自動化を加速させるために

物流の自動化は、闇雲に取り組んでも期待した効果が得られないことがあります。スムーズな導入・運用につなげるためには、進め方のポイントを押さえた計画的な進め方が重要です。ここでは、5つのポイントを解説します。

現状課題の定量的な把握

自動化による効果を最大化するためには、まず自社の現状と課題、導入の目的を明確にし、定量的に把握することが重要です。具体的には、業務量、作業時間、在庫回転率、出荷件数などのデータを収集・分析し、どの工程に自動化の優先度を置くべきかを明らかにしましょう。こうした数値に基づく分析は、導入後の成果評価や改善サイクルの設計にも役立ちます。

段階的な自動化ロードマップの策定

物流の自動化を成功させるためでは、段階的な導入計画が欠かせません。既存の業務フローや人員配置を見直さずに機器を導入しても、期待する成果を得ることは難しいでしょう。まずは自動化対象となる業務を特定、優先順位を決めたうえで、導入ステップを段階的に設計します。このようなロードマップをもとに計画的に進めることで、リスクを抑えつつ効果を高めることができます。

デジタル基盤の整備

受発注や在庫管理システムなどのデジタル基盤を整備することで、データの一元管理が可能になります。紙伝票や表計算ソフトに頼った管理方法をデジタル化することで、リアルタイムでの情報共有や分析が容易になり、自動化の効果を最大化できます。また、データの可視化により、トラブル発生時の原因特定や改善策の検討がスムーズになります。

人材の再配置と能力向上

自動化の導入に伴い、従業員に求められる能力や技術は変化します。そのため、従業員一人ひとりの適性や既存のスキルに応じて、人材の再配置を行うことが重要です。適切な配置はモチベーションや定着率の向上にもつながります。さらに、必要な能力を習得するための教育・研修を計画的に実施し、従業員が新しい技術や業務に対応できるよう支援することも、自動化の成功には欠かせません。

外部パートナーとの連携強化

物流の自動化を進めるには、システムベンダーや機器メーカーなど外部パートナーとの連携が重要です。導入設計や運用支援の専門知識を活用することで、自社だけでは難しい最適な仕組みを構築できます。また、導入後も継続的に情報共有し、改善を重ねることで、自動化の効果を長期的に高めることができます。


 

物流自動化を支えるシステム

物流自動化を実現するためには、ロボットやマテハン、情報システム、そしてAIによる管理が不可欠です。ここでは、主要なシステムについて解説します。

ロボット/マテハン

ロボットやマテハンは、倉庫内のピッキング・搬送・仕分け・梱包などの物理的作業を自動化する役割を担います。
これにより、作業効率の向上や人的負担の軽減、作業ミスの削減が実現します。
代表的な機器には、無人搬送車(AGV)や自動仕分け機、パレタイザ・デパレタイザなどがあり、荷物の形状や作業内容に応じて最適な機器を組み合わせることで、自動化の効果を最大化できます。
近年では、ロボットが自律的にルートを判断して荷物を搬送する「自律搬送ロボット(AMR)」も普及しており、レイアウト変更や作業エリアの拡張にも柔軟に対応できるようになっています。
省人化・省力化で人手不足を解決 Robot
Robot導入事例

WMS/WES

倉庫管理システム(WMS)は、倉庫内の在庫や作業状況を一元的に管理するシステムです。入荷・出荷・在庫移動といった各プロセスをデジタル化し、効率的な倉庫運用を支援します。 さらに、倉庫実行システム(WES)を併用することで、ロボットやコンベヤなどの自動化機器と連携し、リアルタイムで作業指示を出すことが可能になります。これにより、人の判断に頼らず、スムーズかつ正確な作業を実現できます。
近年では、WMSがAIやIoTと連携し、需要や現場稼働状況に応じた最適な作業計画を自動的に立案するなど、さらなる高度化が進んでいます。
WMSの詳しい解説はこちら
ロボットマネジメントRMS(WES)の詳細はこちら

AI(AIエージェント)

AIは倉庫や配送業務全体の最適化を支える重要な技術です。 中でも「AIエージェント」は、自律的に複数の作業を計画・調整できる点が特徴で、需要予測や在庫の最適化、ピッキング順序の自動計算、作業スケジュールの調整などをリアルタイムで実行します。
これにより、人手では難しい大量データの分析や即時判断が可能となり、物流業務の効率化や納期遵守の精度向上に貢献します。さらに、現場のボトルネックを特定して改善策を提示できるため、継続的な業務改善にもつながります。
物流版AIエージェント「ロジスティクス・エージェント」はこちら


 

物流を自動化するシステムの導入事例

物流を自動化するシステムを導入し、業務効率化や生産性向上などに成功した企業の事例を紹介します。

ブラザーロジテック

自動倉庫

ブラザーロジテック株式会社は、ブラザーグループの物流を担う企業として、製品や部品の保管・出荷を支えています。 老朽化したオンプレミス型の倉庫管理システム(WMS)を、クラウド型「SLIMS」へ刷新し、自動化と省人化を推進。24時間のサポート体制により業務停止リスクを解消しました。さらに、高密度保管ロボット「ハイロボ」を導入し、作業者の移動負担を軽減するとともに、限られたスペースでの保管効率を約2倍に向上させています。
今後は、「SLIMS」に蓄積されるデータを活用し、AIによる最適な在庫配置や自律的な倉庫運用の実現を目指しています。
WMS×ロボットで実現!倉庫の最適化と保管効率UPの秘訣(ブラザーロジテック事例)

スケーター株式会社

自動倉庫

スケーター株式会社は、お弁当箱やコップ、水筒などのプラスチック製家庭日用品や、ファンシー雑貨の企画・販売を行う会社です。新たに設立した大和郡山物流センターでは、敷地が広く、ピッキング時の歩行距離が長いという課題がありました。
そこで、ピッキングアシストロボット(AMR)を導入したことで、従業員の歩行距離が大幅に減り、業務負担が軽減されました。さらに、自動倉庫や自動梱包機を導入することで、出荷業務の生産性向上にも大きく貢献しています。
WMSと協働型ロボットの連携で倉庫内作業の生産性を向上(スケーター事例)

アドレス通商株式会社

自動倉庫

アドレス通商株式会社は、通販物流の「ロジスティクスサービス」、ダイレクトメールの「DM発送サービス」、人材サービスの3事業を展開しています。2022年に開設した「新習志野DC」では、RMSや物流ロボット、各種デジタルソリューションを導入し、作業効率の向上や従業員負担の軽減を実現しました。さらに、RMSによる設備の稼働状況のリアルタイム管理で作業計画の最適化や迅速なトラブル対応が可能となり、物流オペレーションの安定稼働と品質向上に貢献しています。
WMS「SLIMS」WES「RMS」とロボットの導入で現場の効率化を達成(アドレス通商事例)

西濃運輸・龍ケ崎支店

自動倉庫

西濃運輸・龍ケ崎支店の医療用品現場では、仕分け機「t-Sort」と、それを制御するロボットマネジメントシステム(RMS)、倉庫全体を管理するLMS、さらにWMSを組み合わせ、省人化と大量出荷を両立しています。t-Sort90台と350箇所のシュートにより、1日あたり4万ピースの仕分けが可能です。進捗状況を大型モニターでリアルタイムに可視化することで、作業ミスや返品の削減にもつなげています。限られた人員でも、高精度かつ高速な物流運用を実現しています。
t-Sort導入事例(西濃運輸事例)


 

まとめ

物流の自動化は、人手不足や需要変化への対応、生産性向上や品質安定を実現するための重要な取り組みです。ロボットやマテハン、WMS、AIといった技術の導入により、倉庫内の作業から輸配送業務まで幅広い工程を効率化できます。一方で、導入コストや現場教育、運用体制の整備など、乗り越えるべき課題も少なくありません。
しかし、段階的な導入や社内外の連携を進めることで、着実に成果を上げる企業が増えています。
今後は、データとAIを活用した自律的なマネジメントの重要性が一層高まっていくでしょう


セイノー情報サービスでは、現場で培った知見にITを融合させたWMS「SLIMS」やBig Data・ロボット・AI・IoT・シェアリングといった先端技術を組み合わせた「BRAIS(ブライス)」を活用し、物流ソリューションを提供しています。
特に近年は、物流業界に特化した業界初のAIエージェント「ロジスティクス・エージェント」の構築を進めています。
物流の自動化をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。


\ 400社以上への導入実績を持つWMSも!AIソリューションも!/


このコラムの監修者
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セイノー情報サービスは400社以上へのWMS導入を通して培った物流ノウハウをもとに、お客様の戦略立案や物流改善をご支援しています。
当コラムは、経験豊富なコンサルタントやロジスティクス経営士物流技術管理士などの資格を持った社員が監修しています。
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