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国際物流は、国境を越えてモノや製品をやり取りするための重要な仕組みです。輸送に加え、貨物の保管や荷役、流通加工、梱包、通関手続き、さらには情報の管理までを含む広範な業務領域で成り立っています。この記事では、国際物流の基本的な仕組みから業務内容、直面する課題とその解決策、さらに管理システムの選び方までをわかりやすく解説します。
目次
1. 国際物流とは
3. 国際物流の業務内容と流れ
4. 国際物流の重要性
5. 国際物流の課題
8. まとめ
国際物流とは
国際物流とは、海外との間で貨物を輸送・管理する一連の物流活動を指します。輸出入に伴う通関手続きのほか、船舶・航空機・トラックなど複数の輸送手段を組み合わせて、原材料や製品を目的地まで安全かつ効率的に届けます。日本のように海に囲まれた国では、海上輸送や航空輸送が主流です。また、輸送業務に加えて、貨物の保管、荷役、流通加工、梱包などの付帯業務も国際物流の重要な要素となります。
国際物流と国内物流の違い
国際物流と国内物流の主な違いは、「輸送手段」と「通関手続きの有無」にあります。国内物流では、多くの貨物がトラックで輸送され、遠方への配送では物流拠点を中継地点として積み替えながら目的地へ届けられます。
一方、国際物流では貨物が国境を越えるため、海上輸送(船舶)や航空輸送が中心です。また、輸出入時には通関手続きが必要であり、貨物は保税倉庫と呼ばれる専用倉庫に一時保管されます。国内物流では通関が不要なため、このような保税倉庫は使用されません。
国際物流の種類(海上輸送・航空輸送)
国際物流では、コンテナ船や航空機などを使って貨物輸送を行います。ここでは代表的な輸送手段の種類を解説します。
コンテナ船
コンテナ船は、規格化されたコンテナに貨物を積み込み輸送する手段です。コンテナのサイズが国際規格で統一されているため、積み替えや荷役作業を効率的に行える点が大きなメリットです。ただし、コンテナのサイズに合わない大きさや重量の貨物は積載できないため、事前の確認が必要です。
関連コラム: 物流コンテナとは?役割や種類、輸送方法などを解説
在来船
在来船とは、コンテナに限定されない一般的な貨物船のことです。特殊な形状や大型の貨物も積載でき、輸送コストを抑えやすい点がメリットです。一方で、荷役作業に時間や手間を要するほか、輸送日数が長くなる傾向があり、貨物の破損リスクがある点には注意が必要です。
バージ輸送
バージとは、河川や内陸水路を航行する小型の平底船のことです。港湾施設がなくても比較的自由な場所で荷揚げや荷下ろしができる点がメリットです。ただし、水位や水路幅といった自然条件の影響を受けやすく、輸送速度が遅くなる可能性もあるため、運航計画の立案やスケジュール管理には十分な配慮が求められます。
航空機・貨物便
航空輸送には、旅客機の貨物スペースを利用する方法と専用の貨物便を利用する方法があります。輸送スピードが速いため、緊急性の高い貨物や高価な商品の輸送に適しています。ただし、輸送コストが高めで、貨物のサイズや重量に制限がある点には留意する必要があります。
国際物流の業務内容と流れ
国際物流の業務は、貨物の輸送だけでなく、輸出入に伴うさまざまな準備や管理作業を含む複合的なプロセスです。ここでは、実際の業務の流れに沿って解説します。
受注・輸出準備
国際物流は、まず受注確認や輸送依頼の内容把握から始まります。輸送に必要な書類(インボイス、パッキングリスト、契約書など)を準備し、輸出先の規制や条件を確認することが重要です。
梱包
国際物流では、輸送距離が長く経由地も多いため、貨物の梱包には耐久性や安全性が求められます。海上輸送では水濡れや破損を防ぐために耐水性・耐久性の高い梱包材を使用し、航空輸送では運賃が重量に応じて決まるため、軽量でありながら十分な強度を備えた梱包が必要です。
通関の手続き(輸出)
梱包が完了したら、輸出国で税関にパッキングリストやインボイスなどの必要書類を提出し、通関許可を取得します。これにより、貨物は正式に国外へ輸出可能となります。
輸送
貨物は海上輸送や航空輸送、必要に応じて陸上輸送を組み合わせて目的地に届けられます。輸送手段は貨物の性質やコスト、納期に応じて選択されます。長距離輸送の場合は、海上輸送と航空輸送の特性を比較検討することが重要です。
通関の手続き(輸入)
到着国では、輸入に必要な書類を提出して税関審査を受けます。通関が完了して初めて、貨物は国内配送や倉庫への引き渡しが可能になります。
情報管理
国際物流では、貨物の輸送状況や到着予定を常に把握する情報管理が欠かせません。これにより、遅延やトラブルが発生した場合にも迅速に対応でき、業務全体の安全かつスムーズな運営に貢献します。
関連コラム:国際物流業界の事業構造
国際物流の重要性
近年、ビジネスのグローバル化や海外調達の拡大に伴い、国際物流の重要性はますます高まっています。企業が競争力を維持するためには、コスト削減や業務効率の向上が不可欠です。また、調達や生産拠点の海外移転が進む中で、物流業者の海外展開も加速しており、企業にはグローバルな視点で柔軟に対応する力が求められています。
国際物流DXの必要性が高まる
こうした環境を背景に、国際物流におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が増しています。国際物流DXとは、IoT やAI、ブロックチェーンなどの最新技術を活用し、物流業務を効率化・高度化する取り組みのことです。具体例として、次のような取り組みが進んでいます。
- ・IoTセンサーによる貨物のリアルタイム追跡
- ・AIを活用した需要予測や最適ルートの自動算出
- ・在庫・輸送・通関情報をインターネット上で一元的に管理・共有する仕組み
- ・ブロックチェーン(※)による通関手続きや取引の透明化
- ※ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、鎖(チェーン)のように連結して管理する分散型台帳技術のこと。輸出入書類や通関情報を安全に共有し改ざんを防ぐ技術。信頼性が高く、貨物追跡などにも活用されています。
実際、海外の企業ではDXを導入することで、問い合わせ対応の負担を減らし、在庫を過不足なく管理できる仕組みを構築しています。
国際物流の課題
国際物流は、グローバル化の進展により重要性が高まっていますが、一方でさまざまな課題も抱えています。ここでは代表的な課題を解説します。
物流プロセスがブラックボックス化している
国際物流では、輸出入に複数の企業や組織が関与するため、物流プロセスが見えにくくなる傾向があります。特に複数の国や拠点を経由する場合、関係者やシステムが分散していることから、貨物の引き渡し状況や輸送ルートの把握が難しくなります。その結果、輸送中の遅延やコスト発生の要因が分かりにくくなり、全体像が不透明になりやすいのが課題です。
リードタイムが長くなっている
商品の発注から納品までにかかる期間(リードタイム)が長くなる傾向があります。例えば、北米から日本への海上輸送では、輸送だけで数週間を要する場合もあります。このようにリードタイムが長いと、輸送中に状況が変化するリスクが高まり、在庫管理が難しくなります。そのため、企業は遅延に備えて多めの在庫を確保せざるを得ず、結果的に在庫コストの増加につながることがあります。
最適な輸送ルートを選べていない
情勢の変化や輸送経路の制限、関係者間の情報共有不足などにより、最適な輸送ルートを選ぶことが難しくなっています。その結果、輸送コストの上昇や納期の遅延が発生するリスクが生じます。たとえば、国際情勢の変化により主要ルートが使えなくなった際には、代替ルートの確保や迅速な判断が求められます。
国際物流の課題を解決する方法
国際物流の課題を解決する方法としては、既存する物流管理システムと最新の物流DX技術を組み合わせ活用することが有効です。ここでは、現在活用が進む取り組みと、今後期待される発展の方向性について解説します。
物流プロセスのブラックボックス化の解消
際物流の効率化には、倉庫管理システム(WMS)、輸送管理システム(TMS)、位置情報システム(LTS)を連携させ、一元的に管理することが効果的です。現在は、在庫や輸送状況の可視化、遅延やトラブルの把握に活用されています。
今後は、AIによる遅延予測や代替ルート・発注量の自動提案、ブロックチェーンを活用した通関・取引履歴の透明化が進むことで、物流プロセスの「ブラックボックス化」を解消し、より効率的で安全な国際物流の実現が期待されます。
リードタイムの短縮と在庫最適化
長いリードタイムによる在庫過多リスクには、AIを活用した需要予測や最適発注計画が有効です。現在は、過去の輸送実績や季節変動をもとに発注量の目安を提示する仕組みが導入されています。また、IoTセンサーやGPSによる貨物位置の把握とTMSとの連携により、輸送遅延やトラブルを可視化できるようになっています。
将来的には、リアルタイムデータをAIが統合的に分析し、在庫量や発注タイミングを自動調整することで、在庫リスクを最小化し、より効率的な供給体制の構築が可能になると考えられます。
最適な輸送ルートの選定
輸送ルートの最適化には、輸送手段や通関手続き、港湾の混雑状況など、さまざまな要素を総合的に考慮する必要があり、現場での判断が複雑化しやすい傾向があります。現在では、TMSを活用して輸送状況・通関情報・港湾混雑を一元管理し、効率的なルートを自動的に提案する仕組みが広く活用されています。
今後は、AIやシミュレーション技術の進化により、天候や港湾の混雑、国際情勢などの変化をリアルタイムに分析し、最適なルートを自動算出できるようになることが期待されます。まずは、輸送データの可視化と関係者間の情報共有を進め、代替ルートをあらかじめ確保しておくことが、輸送効率の向上とリスク管理の強化につながります。
国際物流管理システムの選び方
国際物流では業務の効率化や可視化を実現するために、物流管理システムの導入が有効です。ここでは、システムを選定する際に確認すべき主なポイントを解説します。
自社に必要な機能を搭載している
システムを選ぶ際には、単に多機能であることより、自社の課題を解決できる機能が備わっているかが重要です。
たとえば、輸出入業務で書類作成や船積管理を手作業で行うとミスや通関遅延のリスクが高まります。インボイスやパッキングリストを自動生成できる機能があれば、作業時間を短縮し、通関もスムーズになります。
また、複数の輸送手段を組み合わせる場合、貨物の位置や状況をリアルタイムで把握できるトレーサビリティ機能が有効です。さらに、多拠点・多通貨・多言語対応機能を備えたシステムなら、海外拠点との情報共有も円滑になります。
このように、自社の業務課題と改善したいポイントを明確にし、それに対応できる機能を持つシステムを選ぶことが重要です。
同業種における導入実績がある
国際物流で、輸出入や通関など専門性の高い業務が多いため、同業種や類似業態での導入実績があるかどうかを確認しましましょう。
また、システムベンダーがグローバル拠点への導入支援や法規制対応に強く、トラブル対応やアップデート実績があるかも信頼性の判断材料となります。単に大手であることを理由に選ぶのではなく、自社の物流要件に合ったサポート実績やノウハウを持つかを重視しましょう。
サポート体制を構築している
物流管理システムは長期的な運用が前提となるため、機能だけでなくサポート体制の充実度も重要です。トラブル時の迅速な対応に加え、輸出入手続きの設定支援や各国の通関ルール・貿易書類への対応など、海外取引を円滑に行うための支援体制が整っているかを確認しましょう。さらに、対応時間帯や手段(電話・メール・チャットなど)、自社業務に合うサポート内容、多言語対応や現地スタッフによるサポートの有無も選定のポイントです。
グローバル物流管理LMS-GLOBAL
まとめ
国際物流は企業のグローバル展開を支える重要な基盤です。しかし、輸送距離の長さや多様な輸送手段の組み合わせ、通関手続きの煩雑さなどにより、リードタイムの長期化やコストの増加が課題となっています。特に、長距離輸送による物流費の上昇、手続きや管理の複雑化による業務コストの増加、長期リードタイムに伴う在庫コストの増大が主な要因です。近年は、AI・IoT・クラウド、ブロックチェーンといった技術を活用した物流DXの推進により、業務の可視化と効率化が進んでいます。自社の業務に適した国際物流管理システムを導入し、十分なサポート体制のもとで運用することで、安定した国際物流と競争力の強化が期待できます。
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