こんにちは。WMS:倉庫管理システム「SLIMS(スリムス)」を提供するセイノー情報サービスです。
製造業では原材料の搬入から製品の出荷まで、多くの物流・搬送プロセスが存在します。これらの作業を人力に依存しすぎると効率性や正確性に限界が生じ、コスト増や納期遅延のリスクも高まります。こうした課題を解決するために注目されているのが「マテハン(マテリアルハンドリング)」です。
この記事では、工程ごとにみたマテハンの種類や導入メリット・デメリット、検討時の注意点までを整理し、物流の自動化を考える際の参考になる情報を解説します。
目次
4. マテハン導入のメリット
5. マテハン導入のデメリット
6. マテハン導入時の注意点
7. まとめ
マテハン(マテリアルハンドリング)とは?
マテハンとは、マテリアルハンドリング(Material Handling)の略称で、物流現場における資材・部品・製品の搬送・保管・仕分け・荷役・情報管理に関わる仕組みや機器のことを指します。従来は、モノの保管や出荷、移動に使われる機器そのものを指していましたが、現在では単なる「機器設備」ではなく、作業の流れ全体を効率化・最適化する考え方そのものをマテハンと呼びます。
例えば、倉庫内での荷物搬送をAGV(自動搬送車)で自動化することもマテハンの一部です。また、在庫管理システムと連動させることで、作業効率をさらに高める取り組みもマテハンの範囲に含まれます。
マテハン機器が用いられる代表的な工程
マテハン機器が用いられる代表的な工程は、主に5つに分けられます。それぞれの工程について解説します。
積み込み・積み下ろし
積み込み・積み下ろしは、荷物や梱包資材を搬送用の車両やコンテナに積載・降ろす工程です。フォークリフトやパレタイザなどのマテハン機器がよく用いられ、重い荷物でもスムーズに作業を進めることが可能です。
搬送
搬送は、荷物や材料を倉庫内の指定された場所まで運ぶ工程です。コンベヤや搬送ロボットなどのマテハン機器を活用することで、広い倉庫でもスムーズに物の流れを確保できます。なお、搬送システムのなかには、床だけでなく天井のスペースも使って荷物を移動させるタイプもあります。
保管
保管は、倉庫に入庫した荷物や材料を所定の場所に置き、倉庫内で管理する工程です。自動倉庫や移動棚といったマテハン機器を利用することで、倉庫内のスペースを有効活用しながら、入庫や出庫を効率的に行うことができます。
仕分け・ピッキング
仕分け・ピッキングは、出荷先ごとに荷物を分けたり、注文書などの指示に従って必要な荷物を取り出したりする作業です。どちらも正確さとスピードが求められるため、マテハン機器を活用することで効率的に進められます。たとえば、ソーターや自動ピッキングシステムを使用することで、後工程に影響を与えず作業を進められます。
梱包
梱包は、出荷前に荷物を内容物に適した梱包資材や包装資材で包み、出荷作業を進める工程です。マテハン機器としては、自動製函機などが用いられ、手作業に比べて品質やスピード、正確性を保ちながら出荷準備を行うことができます。
工程別にみるマテハン機器の種類
マテハン機器にはさまざまな種類があります。各工程で活用される代表的な機器を解説します。
積み込み・積み下ろしで用いられるマテハン機器
パレタイザ・デパレタイザ
パレタイザは、荷物を自動的にパレットへ積み上げる機械で、デパレタイザはパレット上の荷物を自動的に取り下ろす機械です。いずれも「パレタイザー」「デパレタイザー」と呼ばれることもあります。
これらの機器は、重量物の積み下ろし作業を自動化することで、作業者の身体的負担を大幅に軽減できるのが特徴です。タイプにはロボット式と機械式があり、ロボット式はさまざまな形状やサイズの荷物に柔軟に対応できる一方、機械式は同一形状・同一サイズの荷物を大量かつ高速に処理する用途に適しています。
フォークリフト
フォークリフトは、車体前部のフォーク(ツメ)をパレットなどに差し込み、荷物を持ち上げて運搬する車両型のマテハン機器です。重量物の運搬だけでなく、ラックなどへの高所への積み上げや取り下ろしにも対応できます。
運転には免許が必要ですが、近年ではセンサーやAIを搭載した自動運転タイプ(無人フォークリフト)も登場しており、倉庫や工場での自動化が進んでいます。
バンニング・デバンニングシステム
バンニング・デバンニングシステムは、コンテナやトラックへの荷物の積み込み(バンニング)および積み下ろし(デバンニング)作業を支援する設備です。
代表的な機器には、荷台とプラットフォームの段差をなくすドックレベラーや、コンテナ内部まで荷物をスムーズに移動させる伸縮式ベルトコンベヤなどがあります。これらを組み合わせることで、安全性と作業効率の向上が図れます。
搬送で用いられるマテハン機器
AGV(無人搬送車)
AGVは、磁気テープやQRコードに沿って走行する搬送ロボットです。ルート上に障害物があると停止しますが、無人で荷物を安全かつ一定の速度で搬送できるのが特徴です。倉庫内の作業負担軽減や人件費削減、人手不足対策に役立ちます。
導入事例:Ranger GTPを導入し物流センターの省人化を実現(西川株式会社)
AMR(自律走行移動ロボット)
AMRは、自分の位置を認識しながら荷物を目的地まで運ぶ搬送ロボットです。人や障害物があっても自動で回避できるため、倉庫内の変化にも柔軟に対応できます。あらかじめルートを設定する必要がありません。
導入事例:WMSと協働型ロボットの連携で倉庫内作業の生産性を向上(スケーター株式会社 ラピュタAMR導入)
コンベヤ
コンベヤは、荷物を一定の方向と速度で運ぶ装置です。ローラー式、ベルト式、チェーン式などがあり、倉庫の環境に合わせて使い分けられます。連続して搬送できるため、手作業より効率よく正確に運ぶことが可能です。また、搬送中の荷物に対して組み立てや加工などの作業を同時に行えます。
天井搬送システム
天井搬送システムは、天井のレールに沿って荷物を運ぶ装置です。床の作業動線を妨げず、天井空間を活用することで、限られたスペースで効率よく搬送できます。製品によっては、リチウムイオン電池で走行するタイプもあります。
保管で用いられるマテハン機器
自動倉庫
自動倉庫は、入出庫や保管業務を自動化するシステムです。倉庫スペースを有効活用できるほか、作業の属人化防止や業務品質の安定化も期待できます。取り扱う荷物の種類や量により最適な自動倉庫は異なります。そのため、導入前に荷物の特徴や施設のレイアウトを確認して検討しましょう。
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移動ラック
移動ラックは、ラック自体を可動式にして通路スペースを最小化する保管システムです。必要なときに通路を作ることで、多くの荷物を効率的に保管できます。倉庫スペースの有効活用だけでなく、在庫管理の精度向上や作業負荷の軽減にもつながります。荷物のサイズや重量、出入庫頻度に応じて最適なラック仕様を検討することが重要です。
ネステナー
ネステナーは、入れ子構造により使用しないときは重ねて収納できるコンテナです。軽量で移動や積み重ねが容易なため、保管効率の向上やスペースの節約に役立ちます。また、可搬性が高く、作業現場での一時保管や仕分け作業にも適しています。扱う荷物の形状や作業フローに合わせて、サイズや材質を選定するとより効果的です。
仕分け・ピッキングで用いられるマテハン機器
ソーター(自動仕分け機)
ソーターは、出荷先や品目ごとに物を仕分ける機械です。短時間で大量の仕分けを正確に行えます。コンベヤを分岐させるタイプや搬送ロボットで仕分けするタイプがあります。
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GAS(ゲートアソートシステム)
GASは、ピッキングした荷物の仕分けを補助する機器です。各荷物のバーコードをシステムに認識させると、該当する仕分け先のゲートだけが開きます。複数の荷物をまとめて取り出し、出荷先ごとに仕分けする種まき方式の現場で主に使われます。
SAS(シャッターアソートシステム)
SASは、仕分け用の機械で、複数の箱の投入口にシャッターが付いています。バーコードを読み取ると対象箱のシャッターだけ開き、投入数が表示され、投入後ボタンを押すとシャッターが閉まります。仕分けミスを防げる点が特徴です。
DAS(デジタルアソートシステム)
DASは、仕分けや種まき方式のピッキングに使うシステムです。棚ごとのデジタル表示器で投入数量を確認し、投入後ボタンを押して完了を通知します。ピッキングリストを都度確認せずに仕分けでき、ミスを防げます。
DPS(デジタルピッキングシステム)
DPSは、棚ごとに取り付けたデジタル表示器を見ながら商品をピッキングするシステムです。数量表示に従って商品を取り出し、ボタンで取り出し完了を通知します。棚の位置を覚える必要がなく、効率化とミス防止が可能です。
オートラベラ(ラベル自動貼り機)
オートラベラは、コンテナや段ボールにラベルを自動で印刷・貼付する機器です。ラベルを正確な位置に貼り、送り状などの個別情報の誤貼付を防げます。
梱包で用いられるマテハン機器
自動製函機
自動製函機は、平らな段ボールを自動で組み立てる機器です。底面の折り込みからテープ貼りやホットメルト接着まで自動で行う「全自動製函機」と、テープ貼りのみ自動で行う「半自動製函機」があります。梱包作業の効率化や省人化、保管スペースの削減に役立ちます。
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自動封函機
自動封函機は、荷物を詰めた段ボールの封函作業を自動化する機器です。製品によっては底面の折り込みまで行えるものもあり、梱包後の作業効率を高めます。
マテハン導入のメリット
マテハンを導入することで得られる主なメリットは、次の3点です。
業務効率化を図れる
マテハンを活用することで、物流業務を効率的に進められます。手作業を機械化することで作業スピードが向上し、労力や時間の削減が可能です。また、自動制御により人的ミスの発生も抑えられます。
省人化によりコストを削減できる
マテハンの導入により、製造や物流の作業を少人数で対応できるようになります。その結果、新規従業員の採用や教育にかかるコストの削減が期待できます。
労働災害の防止
重量物の搬送や長時間作業など、人の負担が大きい業務を機械に任せられます。その結果、作業者の負担が軽減され、労働災害のリスクを低減できます。
マテハン導入のデメリット
マテハンを導入する際に注意すべき主なデメリットは、次の2点です。
初期費用・導入コストがかかる
マテハン機器の導入には初期費用だけでなく、メンテナンス費用や電気代などのランニングコストも継続的に発生します。人手不足の解消や人件費削減といったメリットは期待できますが、コスト面を十分に考慮したうえで導入を検討することが重要です。
システム障害や故障によるリスクがある
自動化やシステム制御を伴うマテハンは、障害や故障が発生すると業務全体が停止し、納期遅延や取引先への影響が生じる可能性があります。そのため、定期的なメンテナンスを行うとともに、トラブル発生時の対応手順をマニュアル化し、業務への影響を最小限に抑えることが重要です。
マテハン導入時の注意点
マテハンを導入する際には、いくつか注意すべき点があります。ここでは、特に重要な4つのポイントを解説します。
導入目的を明確化する
まず目的をはっきりさせることが重要です。そのためには、現状の課題を正確に把握しましょう。注目すべきは、単一の工程だけでなく、前後の工程も含めた全体の流れで課題を整理することです。前後工程のボトルネックや作業のムダを見落とすと、期待した効果が得られない可能性があります。また、マテハンの費用は目的や機能によって大きく変わるため、課題があいまいなまま進めると不要な設備を抱えるリスクがあります。
運用マニュアルを整備する
作業プロセスが変わることに合わせ、マニュアルも見直しましょう。事前に手順やルールを整理しておかないと混乱が生じる可能性があります。導入時だけでなく、運用中の変更点もマニュアルに反映させ、全従業員に周知することが大切です。
使いやすいレイアウトにする
工場や倉庫内の設備配置もあわせて検討しましょう。作業員や操作者の動線を考慮し、設備や機器の稼働を妨げないレイアウトにすることで、効率的で使いやすい作業環境を整えられます。
サポート体制を整える
システム障害や機器トラブルに備え、復旧体制を事前に整えておくことも重要です。準備が不十分だと対応が遅れ、復旧までに大きな損害が生じる可能性があります。土日や夜間など人の目が届きにくい時間帯も含め、受けられるサポート内容を事前に確認しておきましょう。
まとめ
マテハンは、搬送・保管・仕分け・梱包などの工程で物流自動化を実現し、業務効率化や省人化、労働災害の軽減に効果があります。ただし、初期費用やランニングコスト、システム障害のリスクにも注意が必要です。導入目的の明確化、マニュアル整備、作業環境の最適化、サポート体制の確保を行うことで、マテハンの効果を最大限に引き出せます。
セイノー情報サービスは、倉庫管理システム(WMS)「SLIMS」を提供しています。オンプレミスとクラウドのいずれにも対応しており、すでに400社以上で導入され、メーカーや卸売、小売、倉庫事業など、さまざまな業種で活用されています。また、マテハンとの連携実績も数多くあります。マテハンとWMSの活用を検討されている方はご相談ください。
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