2026年4月の改正物流効率化法の施行により、一定規模以上の荷主企業に対して、CLO(物流統括管理者)の選任が義務付けられます。これにより、物流は従来の現場任せの運営領域から、経営が主体的に関与すべき戦略領域として、その位置づけがより明確になりました。 6. まとめ
本記事では、CLOに求められる能力・スキルを整理するとともに、今後の物流戦略の方向性やCLOが押さておくべき管理指標について、わかりやすく解説します。
目次
CLO(物流統括管理者)に必要な能力・スキル
物流を取り巻く環境変化が加速するなか、企業には物流を経営視点で捉え、全社的に統括する役割が強く求められています。CLOは物流戦略を担う経営の要として、サプライチェーン全体の最適化や効率化を主導する存在です。ここでは、CLOに必要な能力・スキルを5つの観点から紹介します。
リーダーシップ力
CLOは経営視点から物流戦略を策定し、調達・製造・販売など複数部門を横断しながら、その実行を主導する立場にあります。そのため、明確な方向性を示し、関係者を巻き込みながら進めるリーダーシップが不可欠です。
部門ごとの利害や優先順位を調整しながら、全社的な物流戦略を実行に移し、効率化やコスト改善を通じて企業の競争力向上に貢献します。
また、災害や供給途絶など物流リスクが発生した際には、状況を迅速に把握し、適切な対策を判断・実行するマネジメント力も求められます。
意思決定力
CLOには、多面的な視点から的確な判断を下す意思決定力が求められます。
経営陣や現場、外部パートナーなど多様な立場の意見を踏まえながら、想定されるリスクと期待される効果を冷静に整理し、サプライチェーン全体にとって最も合理的な選択を行うことが重要です。
需給変動、コスト構造、設備投資や外注戦略の影響などをデータやシナリオをもとに整理・評価し、全体最適の観点から判断を下せる能力が期待されます。
サステナブルな物流の知見・実行力
持続可能な物流の実現は、社会的要請であると同時に、企業価値にも直結する重要テーマです。
CLOには次のような環境配慮と効率化を両立する施策を設計し、実行する力が求められます。
- ・CO₂排出削減(モーダルシフト、積載率向上など)
- ・再配達削減や配送効率の改善
- ・ドライバーの位置や稼働状況を可視化し、無理のない運行につなげる仕組みづくり
- ・梱包材の削減や軽量化、過剰包装を見直し
さらに、これらの取り組みを経営戦略に結びつけながら、中長期視点で最適化していく視点が重要です。
高いコミュニケーション能力
CLOは、サプライチェーンに関わる社内外の多様な関係者と連携しながら、全体最適を実現する役割を担います。
そのため、相手の立場や課題を理解し、認識をすり合わせていくためのコミュニケーション力が欠かせません。
こうしたコミュニケーション力は、日常的な業務調整から改善活動の推進に至るまで、さまざまな場面で発揮されます。
- ・社内(営業・生産・調達など)との情報共有や調整
- ・物流事業者やサプライヤーとの建設的な話し合い
- ・改善施策を進めるための合意形成
- ・現場の実態を正しく把握するためのヒアリング
専門的な内容であっても、背景や目的をかみ砕いて説明し、関係者の納得と協力を得ながら取り組みを前に進める姿勢が求められます。
AI活用
需給変動の拡大や物流条件の多様化が進むなか、AIの活用は、CLOがデータに基づいて合理的な判断を行うための重要な手段となっています。需要予測、在庫配置、配車計画、リードタイム管理などにAIを活用することで、経験や勘に依存しない、再現性の高い物流運営が可能になります。
さらに近年では、データ分析やレポート作成といった業務を支援するAIに加え、日々の物流データを継続的に監視し、注意すべき変化や判断のヒントを示すAIエージェントの活用も進んでいます。
CLOや現場責任者の意思決定を保管する存在として、物流運営の高度化に寄与します。CLOには、AIやAIエージェントを現場任せにするのではなく、経営課題や現場課題と結び付けながら活用領域を整理し、全社的な物流の高度化につなげていく役割が求められます。
CLOによる未来の物流戦略
CLOの選任により、物流の意思決定は現場や部門単位から経営レベルへと引き上げられ、物流は企業戦略の重要な要素として位置付けられます。
今後の物流戦略は企業ごとに異なりますが、特に注目される方向性として、次のような取り組みが挙げられます。
- ・環境対応、コスト、安定供給を踏まえた物流施策の全社的な整合
- ・AIやデータを活用した需給・在庫・配送の意思決定高度化
- ・部門や拠点をまたぐ業務・データの統合と標準化 → (3月頃に日販事例へのリンク)
- ・地政学リスクや供給不安を踏まえたサプライチェーンの見直し
CLOには、関係部門や社外パートナーの役割を整理し、優先順位を付けながら、全社横断で戦略の実行をリードする役割が求められます。
CLOが注力すべき管理指標(KPI)
CLOが重点的に管理すべきKPIには、次のような指標があります。
- ・車両積載率
- ・配送遅延率
- ・在庫日数
- ・欠品率
たとえば車両積載率の向上には、配送頻度の見直しや販売条件の調整、出荷ロットの最適化など、複数部門を巻き込んだ判断が必要になります。さらに、データ分析に基づいて改善効果を数値で示すことで、関係部門の理解や協力を得やすくなり、全社的な継続改善につなげることができます。
CLOが注力すべき経営指標
これまで物流は、主にコスト削減の対象として管理されることが一般的でした。
しかしCLOの役割は、単に物流コストを抑えることではなく、企業全体の経営成果にどのように貢献しているかという視点で物流を評価し、改善につなげていくことにあります。
そのために重要となるのが、投資対効果を示す経営指標です。なかでもROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率)は、事業に投下した資本がどれだけの利益を生み出しているかを示す指標であり、物流への投資判断や施策の優先順位を検討するうえで有効です。
ROICの向上に向けては、次のような取り組みが考えられます。
- ・物流拠点配置の最適化による資本効率の改善
- ・物流ロボットの導入による作業生産性の向上
- ・AIを活用した需要予測による在庫削減と欠品防止など
CLOに関してよくある質問
CLO(物流統括管理者)について理解を深めるうえで、特によく寄せられる質問を取り上げ、わかりやすく解説します。
「2024年問題」と「物流法改正」及び「CLO」の関係は?
物流2法とは、「物流効率化法(旧:流通業務総合効率化法)」と「貨物自動車運送事業法」の2つの法律を指します。
これらは、トラックドライバーの時間外労働規制強化によって顕在化する「 2024年問題」への対応策として、改正が進められてきました。
法改正の主な目的は、荷待ち・荷役時間の削減や商慣行の見直しなどを通じて物流全体の効率化を図り、限られた輸送力の中でも持続可能な物流体制を構築することにあります。その過程で、従来は運送事業者を中心に求められてきた対応が、荷主や関係事業者にも及ぶ形となり、物流の担い手としての主体的な関与や行動変容が制度上求められるようになりました。
こうした流れを背景に、荷主企業において物流全体を俯瞰し、戦略的に統括するCLOの役割と重要性が高まっています。
CLO選任が義務化される特定事業者は?
CLOの選任が義務化されるのは、年間取扱貨物量が9万トン以上となる、次の事業者です。
なお、年間取扱貨物量の算定にあたっては、第一種荷主・第二種荷主および連鎖化事業者としての取扱量を合算して判断されます。
CLOの義務化でサプライチェーンは効率化される?
CLOの選任が義務化されることで、物流は現場任せの業務から経営戦略の一部として位置づけられ、部門を横断した改善が進みやすくなります。その結果、積載率の向上や在庫の適正化、配送の効率化といった取り組みが連動し、サプライチェーン全体の効率向上が期待されます。
CLOは物流部長から選任していい?
法令上、CLOを物流部長から選任すること自体に問題はありません。
ただしCLOには、部門の枠を超えた調整や経営判断が求められるため、実務上は執行役員クラスが関与する体制や、経営層からの明確な権限付与が重要となります。
物流畑ではない役員がCLOになってもいい?
物流畑ではない役員がCLOに就任することも可能です。CLOの選任にあたって、特定の専門分野や経歴について法令上の要件は定められていません。
CLOは、調達・生産・販売を含むサプライチェーン全体を統括する役割を担うため、実務上は、生産部門など複数部門を管掌してきた役員が選ばれるケースも多く見られます。
一方で、荷待ち・荷役時間の削減や積載率向上など、物流特有の専門知識が求められる領域もあります。その場合は、社内に専門人材を配置したり、外部のコンサルティングサービスを活用したりすることで、知見を補完することが可能です。
まとめ
改正物流効率化法を背景に、CLOは物流を経営戦略として統括する中核的な役割を担います。求められるのは、リーダーシップや意思決定力に加え、サステナブルな視点、社内外をつなぐ調整力、そしてAIを活用したデータドリブンな判断力です。CLOがKPIや経営指標を通じて全体最適を推進することで、物流はコスト管理の対象から、企業価値と競争力を高める戦略領域へと進化します。今後は、経営と現場を結ぶCLOの存在が、持続可能なサプライチェーン構築の鍵となるでしょう。
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