こんにちは。WMS:倉庫管理システム「SLIMS(スリムス)」を提供するセイノー情報サービスです。
KPIを活用した改善活動は多くの企業で取り入れられています。
しかし「どのようなKPIを設定したらいいか分からない」「KPIを使った改善活動で思った成果が出ない」など悩みをお持ちの方も多いようです。
そこで当コラムでは、KPIの基礎から正しい設定方法、物流分野における活用のポイントまでを幅広く解説します。改めてKPIについて知識を深め、改善活動を進めていきましょう。
目次
ロジスティクスKPI(物流評価指標)とは
KPIとは「重要業績評価指標」のことでKey Performance Indicatorsの頭文字をとった略称です。
あるべき姿に向けて目標を達成するための過程が適切に実行されているか、その達成状況(パフォーマンス)を定期的に計測し評価する指標のことです。分かりやすく言うと目標達成するための「ものさしや道しるべ」のようなもので、具体的な数値データで計測でき、誰が見ても客観的に評価できる指標を設定します。業種や業態・企業規模を問わず様々なビジネスシーンで活用されています。
物流現場は慢性的な人手不足を抱えており、その対策に向けて緊急性が高まっています。
新しく入った作業者をより早く戦力にするための人材教育やニュアル作成などの環境整備はもとより、より少ない人数で今の作業量を維持するための標準化や自動化など、多くの課題をスピーディに解決していかなければなりません。
こういった課題に対する日々の活動を客観的に評価するのが「KPI」です。
物流分野におけるKPIの歴史・発行されている資料
KPIの歴史はあまり古くありません。
1992年に米ハーバード大学のビジネスレビューにおいて「新しい経営指標(バランススコアカード)」の解説の中で初めて紹介されました。
この資料ではKPIについて「経営者が目標を適切に設定して定期的にモニタリングする経営上の活動であり、経営戦略には非常に重要である」と説明しています。
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)による普及活動
物流分野としては、日本ロジスティクスシステム協会(以下、JILS)が2005年から取組み始めています。
荷主企業向けのKPI普及活動として2007年に「ロジスティクス評価指標の概要‐荷主KPI‐」が発行されました。
この資料では指標の種類や管理方法、物流分野におけるKPIの特性などが解説されています。
その後も2014年には「ロジスティクスKPIとベンチマーキング調査報告書2014」が、2018年には「ロジスティクスKPI活用の手引き」が発行されました。特に製造業では物流課題は調達・生産・販売と連携して組織横断的に取り組む「ロジスティクス」が経営課題として認識されており、収益構造や業務改善を推進するためのロジスティクスKPIの活用方法や事例が紹介されています。
国土交通省による普及活動
国土交通省もKPI活用を推奨してきました。
2015年には物流事業者向けに「物流事業者におけるKPI導入の手引き」が公開され、「コスト・生産性」「品質・サービスレベル」「物流条件・配送条件」の観点でどのようなKPIが考えられるのかがまとめられています。
関連コラム:「物流事業者におけるKPI導入の手引き」に関する解説
・運営管理と運用管理
ロジスティクスKPI(物流評価指標)を活用するメリット
それでは、改めてKPIを活用することで得られるメリットを3つ紹介します。
課題の可視化
KPIによって日々の業務における課題が可視化できます。
毎日の業務では作業に追われ、各現場のプロセスが適切かどうかを判断することはとても難しいことです。
しかしKPIを活用することで、業務プロセスが定量的に測定されます。
一定期間計測することでその活動が良い方向に向かっているのか、悪化しているのかが客観的に可視化されます。
数字の裏付けを元にその原因を探ることで課題が明確になります。
コミュニケーションの円滑化
関係者間のコミュニケーションがスムーズになります。
物流には、たくさんのプレイヤーが関わっています。
本社物流部、物流センター長や現場の社員・パート・アルバイト、業務を委託している物流事業者、更に届け先や仕入先まで多岐にわたります。
社内外を跨る幅広い関わりとなるため、業務改善を行うにあたっては関係者がしっかりとチームワークを発揮しなければなりません。
「最近忙しいよね」「納品のクレームが増えてきたね」という抽象的な会話ではなく、KPIが「共通言語」となって認識の統一が図れることで、全員が一つの目標に向かって一丸となって進んでいくことができます。
合理的で公平な評価
KPIを正しく設定すると客観的かつ合理的で公平な評価が可能になります。
簡単に言うと「頑張った人が、頑張ったことがわかるようになる」ということです。
当たり前のように思われるかもしれませんが、実は難しく、そしてとても重要なことです。
「KPIの高い=評価の高い」物流センターや作業チームを見本とすることで、全体のモチベーションも向上し、見習ったり互いに協力し合う関係が築けるなど、会社全体に良い影響を与えることができます。
また、「紐づく活動が想像しやすい」KPIを設定することで、改善活動が促進されます。
ロジスティクスKPI(物流評価指標)活用のポイント
KPIを活用して課題を解決(成果を出す)にはどうしたら良いのでしょうか。5つのポイントを紹介します。
正しい設定方法
「今年度の指標は何を設定しようか」とKPIのことだけを考えていませんか。
残念ながら、多くの企業が誤った方法で設定しています。
「正しく設定」するには、いきなりKPIのことを考えるのではなく、KGI(重要目標達成指標)と呼ばれる指標から設定します。
KGIはKey Goal Indicatorの頭文字をとった略称で、「あるべき姿(目標)が達成できているか」を数値で把握するための指標です。
活動指標を検討する際は「あるべき姿=KGI」を先に決定し、KGIを達成するために重要な「カギ(Key)」となるものをKPIに選びましょう。
事前に運用の実現性を確認
KPIを決定する前には、必ず運用の実現性を抑えておきましょう。 運用の実現性とは「そのKPIを活用して継続的に改善活動を行えるか」ということで、ポイントは安定性と単純性です。
- ・安定性:簡単かつ安定的にデータ収集できるか
- ・単純性:関係者全員が理解しやすい内容・数値を設定しているか
KPIが悪化したときにどうするか
KPIを設定して改善活動を進めても、思ったように成果がでないことがあります。
逆にKPIの値が悪化することもあるかも知れません。
そういった場合は当然対策をたてて運用を見直すのですが、値の変化を見つけてからどうしようか考えていると、対策を取るまでに時間がかかってしまいます。
それを防ぐために、考えられる原因と対応策を事前に整理して「運用手順書」としてまとめておくのが良いでしょう。
KPIが悪化しても素早くリカバリー対応できれば、少しでも早くゴールにたどり着くことができます。
継続的な改善活動(PDCAサイクル)
KPIを用いた改善活動は、継続的にPDCAサイクルを回しましょう。 ポイントは、きちんと振り返りをして次のサイクルに活かせる情報(変化の兆しや傾向)を見つけることです。 データ分析や現場のヒアリングを参考に、きちんと振り返りをしましょう。
次年度のKPI設定に向けて
皆さんは年度末や四半期など、決まったタイミングが来るとその活動を反省することでしょう。
その時にはぜひKPIとKGIの結果を組み合わせて評価をしてみてください。
KPIとKGIの両方が達成できていなければ、活動が十分に行えていない可能性があります。
また、片方だけ未達成だったとしたら、KPIとKGIの関係性が正しくない可能性があります。
PDCAサイクルにおける振り返りの1つとして、ぜひ確認してみてください。
セイノー情報サービスの「ロジスティクスKPIサービス」
セイノー情報サービスはBPOサービスの一環として、お客様のKPIマネジメントを支援する「ロジスティクスKPIサービス」を提供しています。 KPIの設定、データ収集・集計、可視化、分析・評価、改善案策定という一連の流れ(PDCA)をトータルサポートすることで、皆さんのロジスティクス目標の達成を支援します。
関連情報:「ロジスティクスKPIサービス」の詳細
まとめ
KPIとは「重要業績評価指標」のことで、目標を達成するために重要な「カギ(Key)」を数値で把握するための指標です。 あるべき姿(目標)を達成するための過程が適切に実行されているか、その達成状況を計測し評価するためにとても有効な活動です。
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物流分野でKPIを活用するポイントは5つです。
- ・設定: KGI(目標)を先に決定し、重要なカギ(Key)となることをKPIに設定
- ・運用可能性:安定性と単純性を兼ね備えているか確認
- ・運用手順書:KPI数値が悪化した場合の想定理由と対応策を事前にまとめておく
- ・PDCA:1サイクル終了したら振り返りを行い、次のサイクルで活かす
- ・次年度の設定:KPIとKGIの結果から正しく設定できていたか評価
目標に合ったKPIを設定し定期的な評価や指標の見直しをすることで、課題解決に向けた取り組みが、これまで以上に中身のある活動になることでしょう。
このコラムの監修者 |
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