物流業界では「2024年問題」に加え、法制度の見直しや輸送効率化への対応など、企業が取り組むべき物流課題がより複雑化しています。こうした中、一定規模以上の荷主企業では、法改正によりCLO(物流統括管理者)の選任が求められ、物流を現場任せにせず、経営視点で部門横断的に管理・統括する体制づくりが重要となっています。 2. CLOが注目される背景 3. CLO選任による効果 4. まとめ
本記事では、CLOの定義・資格要件・役割に加え、注目される背景や選任による効果を解説します。自社の物流改善や体制整備を検討する際の参考としてご活用ください。
目次
CLO(物流統括管理者)の定義と役割
ここでは、CLOの定義や資格要件、担うべき役割について解説します。どのような責任を持つ人材なのかを理解し、CLO選任の意義を把握しましょう。
CLOとは
CLOは “Chief Logistics Officer” の略称で、企業において物流に関する取り組みを統括する責任者を指します。物流戦略の策定から運用方針の統括、サプライチェーン全体の効率化まで、経営視点で物流を横断的にマネジメントします。
なお、2026年4月施行予定の物流効率化法の改正により、一定規模以上の貨物を取り扱う荷主(いわゆる特定荷主)に対して、物流統括管理者の選任が求められる制度が整備されつつあります。
CLOの資格要件
法令上、CLOには「事業運営上の重要な決定に参画する管理者的地位にある者を充てること」が求められています。
これは、物流の効率化や適正化を現場レベルの取り組みにとどめず、企業全体で推進するには、経営判断に関与できる立場と権限が不可欠だからです。
そのため、役員・執行役員など経営層に近い立場の人材を充てることが想定されています。
加えて、調達・製造・販売など関係部門を横断して調整・意思決定できる能力や、データ活用やシステム導入を進めるためのIT・DXに関する理解・経験を有していることも望まれます。
CLOの役割
CLOは、企業の経営戦略と連動した物流戦略を統括し、物流を安定的かつ持続的に機能させる責任を担います。物流業務の改善にとどまらず、調達・生産・販売を含むサプライチェーン全体を俯瞰し、全社最適の観点から物流の方向性を示します。
また、物流を「現場のオペレーション」ではなく「経営課題」として位置付け、社内外の関係者を巻き込みながら、ドライバー負担の軽減や輸送の安定確保、効率化と品質向上の両立を図ります。
上記の役割を果たすため、CLOは主に次のような業務を統括・推進します。
- 1.物流に関する中長期計画の策定
- 2.トラックドライバーの負荷低減や、特定時間帯・特定拠点への過度な輸送集中を是正するための事業運営方針の策定および管理体制の整備
- 3.運送・荷役などの効率化を目的とした各種施策の企画・推進
- 4. 法令に基づく定期報告の作成や貨物運送の委託・受渡し状況に関する国からの報告要請への対応
- 5.事業運営上の重要な意思決定に関与する立場として、開発・調達・生産・物流・販売などの関係部門間における連携体制の構築
- 6.設備投資やデジタル化、物流標準化に向けた事業計画の策定・実行および効果検証
- 7.ドライバー負担軽減や物流効率化に関する社内研修・啓発活動の実施
- 8.リードタイム確保を目的とした、調達・生産・販売と連動した在庫管理計画の策定
海外における「CLO」「CSCO」
海外では、日本よりも早く物流・サプライチェーンの重要性が戦略レベルで認識されており、CLOやCSCO(Chief Supply Chain Officer:最高サプライチェーン責任者)を設置する企業が一般的です。
サプライチェーンマネジメント(SCM)を経営戦略の中心に据える企業が多く、SCM部門の経験を積んだ人材がCLOやCSCOとして登用されています。Appleのティム・クック氏やWalmartのダグ・マクミロン氏は、物流・SCM分野を起点に経営の中核へと進んだ代表例として知られています。
CLOが注目される背景
物流業界では「2024年問題」に代表される労働時間規制の強化により、ドライバー不足や輸送力の制約が顕在化しています。その結果、物流は運送事業者任せではなく、荷主企業自らが主体的に関与すべき経営課題と認識されるようになりました。さらに、燃料費や人件費の上昇、荷待ち・荷役時間の長期化、多重下請け構造による現場と経営の情報断絶などが重なり、物流コストや業務効率への影響は拡大しています。これらの課題は、現場ごとの対応や部分最適の改善だけでは解決が難しいのが実情です。
そこで、物流全体を俯瞰し、経営の視点で優先順位をつけながら改善を進める役割として、荷主企業におけるCLOが注目されています。
CLO選任による効果
CLOを選任すると、物流を現場任せにせず、経営の視点で整理・判断できるようになります。その結果、コストの見直しや業務効率化が進み、物流の安定性や品質が向上し、企業全体の競争力強化につながります。
物流コストが削減できる
現場では、倉庫費や輸送費、人件費などが部門や拠点ごとに管理され、全社としての物流コストの全体像が把握しにくい状況が多く見られます。そのため、コスト増の要因を特定できず、運賃交渉や人員抑制など部分的な対応にとどまりがちでした。
CLOが統括することで物流コスト全体が整理・可視化され、輸送ルートや積載率、在庫配置をデータに基づいて見直せるようになります。ムダなコストと投資すべき領域を切り分け、戦略的な物流コストの最適化が可能になります。
物流効率が向上する
これまで現場では、拠点や担当者ごとに業務の進め方や判断基準が異なり、改善も各現場任せになりがちでした。その結果、待ち時間や重複作業といった非効率が発生しても、全体としての改善につながらないケースが多くありました。
CLOが全社視点で物流を統括することで、業務プロセスの標準化や部門横断の情報共有が進みます。さらに、需要予測や自動化などのDX施策を一体的に推進することで、輸送時間の短縮や作業負荷の軽減が期待できます。
物流品質が向上する
現場では、納期遅延や誤配送、破損といったトラブルが発生すると、その場の対応に追われ、原因分析や再発防止まで踏み込めないケースも少なくありませんでした。また、品質管理も現場ごとにばらつきがありました。
CLOが品質指標を統一し、全社的に管理・改善を進めることで、配送精度や納期遵守率が安定します。物流品質の向上は、顧客満足度の向上に加え、企業の信頼性やブランド価値の強化にもつながります。
企業全体の競争力が高まる
物流に課題があっても、経営と現場の間で十分に共有されず、対応が後手に回るケースは珍しくありません。特に国際物流では、拠点や委託先ごとの対応に依存し、全体最適が図れない状況が生じていました。
CLOが物流を経営戦略の一部として位置付け、全体を統括することで、コスト・効率・品質の改善が連動します。さらに、海外拠点やフォワーダー、通関事業者との連携を一元管理することで、安定したサプライチェーンを構築でき、企業全体の競争力向上につながります。
まとめ
物流を取り巻く環境が大きく変化する中、CLO(物流統括管理者)は、物流を「現場任せの業務」から「経営が主体的に関与すべき戦略領域」へと引き上げる重要な役割を担います。法改正への対応にとどまらず、物流コストの最適化や効率化、品質向上を全社視点で推進することで、持続可能な物流体制と競争力のあるサプライチェーンの構築が可能になります。将来を見据えた経営判断を行うためにも、CLOの選任とその機能を十分に発揮できる体制整備が今後ますます重要になるでしょう。
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