2024.4.1

<第2話>在庫補充業務をブラックボックス化させないためのポイント

大手企業ほど陥りやすい物流のブラックボックス化

 

工場で生産された製品を物流拠点へ送る「在庫補充業務」は、ブラックボックス化しやすい傾向にあります。
在庫適正化や物流コストの削減に大きく関わる重要な業務であるものの、見落とされがちです。
当コラムでは、在庫補充業務のブラックボックス化とはどのような状態なのか、ブラックボックス化させないためのポイントとはどのような事か、事例をもとに解説します。

 

目次

  1. 1. 「在庫補充」がブラックボックス化している事にお気づきですか?

  2. 2. 在庫補充業務のブラックボックス化によるデメリット

  3. 3. 2024年問題をきっかけに社内在庫の最適化を図ろう

  4. 4. 事例に学ぶブラックボックス化しないためのポイントとは

  5. 5. まとめ

 

コラムのポイント

  • ・在庫補充業務が重要な理由(改善すべき理由)
  • ・2024年問題との関係性
  • ・なぜブラックボックス化してしまったのか、どうすべきだったのか
 

「在庫補充」がブラックボックス化している事にお気づきですか?

工場で生産された製品を物流拠点へ送る「在庫補充業務」は、ブラックボックス化しやすい傾向にあります。
在庫補充は工場(生産部門)所属者が補充の計画や手配を担当することもありますが、製造工程とも物流工程とも言いづらい「間(はざま)」に位置する業務です。そのため「部門で数値目標を持って管理」されていなかったり、生産システム・基幹システム・物流システムのどこにも入れられずエクセルで管理されていたりします。
そのため熟練者の経験に頼った運用になっており、「担当者しか分からない」「適切に補充されているのか誰にも分からない」といった状態になりがちです。



 

在庫補充業務のブラックボックス化によるデメリット

在庫補充業務がブラックボックス化していると、どのようなデメリットがあるのか整理してみましょう。
ここでは在庫補充に絞ったデメリットを取り上げます。業務のブラックボックス化に共通するデメリットは別コラム「物流のブラックボックス化とは?解決のポイントや事例を紹介」をご覧ください。

在庫配置を最適化できない

在庫補充では運用がブラックボックス化するだけではなく、「担当者が業務に必要なはずの販売計画や今後の出荷予定情報を知らない」というブラックボックス化も起こります。
「いつ・どの物流拠点で・何が・いくつ必要になりそうか」「今在庫はいくつあるのか」が分からないと、必要となる拠点へ・必要となる製品を・必要な分だけ送ることはできません。そのため在庫過多の拠点から欠品している拠点への在庫移動が発生したり販売機会の損失につながったりと、様々な問題が起こります。
多くの企業が在庫最適化を気にしているものの、在庫補充業務は見落とされがちです。在庫の最適配置を担う重要な役割として、補充業務にも着目してみてください。


本来不要な物流コストが発生

ある企業の物流現場では「工場から在庫がどんどん送られてきて置き場所が無い」と困っていました。
この場合、保管スペースを広げるか他の物流拠点で保管するよう移送することになります。賃貸倉庫の場合だと在庫スペースを広げることは保管コストの増大につながり、加えて在庫移動をすれば輸送コストも発生します。さらに問題なのは、業務がブラックボックス化しているため本来不要な物流コストが発生している事自体に中々気づけないことです。
在庫最適化と同じように物流コストの削減も重要な企業課題ですが、在庫補充に関わる物流コストは改善対象から外れてしまいがちです。物流コストの削減を求められている物流部門は、補充業務に関わっていないことが多いためです。在庫補充に責任を持つ部門を明確にし、その部門で補充に関わるコストも管理しましょう。

在庫補充業務のブラックボックス化によるデメリット


 

2024年問題をきっかけに社内在庫の最適化を図ろう

2024年問題によってドライバーの総労働時間が制限され、ドライバー不足が更に進むと考えられています。
また2024年問題によって運賃が値上がりするため、企業としては在庫の過不足による在庫移動など本来必要でない輸送を抑制したいと考えています。比較的改善しやすい社内間物流は、今後重点的に効率化されていくでしょう。在庫補充も例外ではなく、在庫の適正配置とともに輸送の最適化にも取り組みましょう。

なお当社が独自に行ったアンケート調査では、2024年問題への対策として「物流拠点の新設や分散化を検討している」とした荷主企業の回答が複数得られました。拠点数が増えれば在庫補充業務が複雑化してくるため、検討される際は物流ネットワークとともに在庫配分や補充業務についても見直すべきです。2024年問題は在庫補充業務を見直す良いきっかけとも言えます。
2024年問題によって運賃が値上がりする理由はこちら



 

事例に学ぶ 在庫補充業務がブラックボックス化しないためのポイントとは

在庫補充業務がブラックボックス化していた状態を詳しく紐解くことで、失敗しないためのポイントが見つけられます。事例を2つご紹介します。

事例(1)熟練者に頼った運用

ある企業では各物流拠点を受け持つ補充担当者が、それぞれ個別のエクセル台帳で業務を行っていました。
1人で約150SKUもの在庫を担当しており、さらに積載量やCO2排出量に配慮しながら輸送モードの選択まで行っていたため、「次々と作業に追われる毎日」だったのです。
その他にも、点在する情報を集めなければならず非効率な状態であったり、熟練者の経験・判断に頼った運用であるため自由に休みを取ることができなかったりと、様々な問題が発生していました。また新入社員なら作業をしっかり覚えるのに1年かかるなど、業務の引継ぎや教育面での課題もありました。

この場合、システム化とそれに伴う運用ルールの策定で課題解決できます。
ポイントになるのは、データの活用方法です。
熟練者は社内にあるデータを参照するだけではなく、既存数値をグラフ化して情報を読み解きやすくするなどエクセル台帳上で様々な工夫をしています。それをシステムで生成できるようにするのです。
例えば各物流拠点の在庫数などのデータを活用して「各物流拠点の在庫数の経時変化」を算出できるようにしておくと、その数値を根拠として補充計画を最終調整できますし、第三者にもどういう判断がなされたのか分かるようになります。
必要な情報を一元管理するだけでもメリットを得られますが、可能な限りエクセル台帳を廃止する、もしくは担当者間での精度のバラつきを防ぐためには熟練者のノウハウをシステムや運用ルールに取り入れる必要があります。
逆にそこが出来ていないとシステムを活用しても属人化された部分が残ったままとなり、本質的な課題解決には至りません。熟練者のノウハウを余すところなく、システムや運用ルールに反映しましょう。

在庫補充業務におけるシステム化のポイント

事例(2)各営業員がそれぞれ在庫を補充

ある企業では、営業部門の指示で各物流拠点に在庫を補充していました。
各営業員が現在の在庫量と自身の顧客からの発注を鑑みて、工場へ補充依頼をかけるのです。「在庫量と販売情報を元に補充依頼をかけるため問題ないのでは?」と思われたかもしれませんが、物流拠点では置ききれない量の在庫が送られてくるので困っていました。

この場合、補充の量とタイミングを決めるためのルールがあると在庫過多を防げます。
営業員が販売計画に合わせて補充依頼をかけるのは、発注業務に似ています。発注業務で注意が必要なのは、不足することを恐れて「少し多め」に量を見積もってしまうことです。発注業務と同じように補充業務でも、依頼をかける・タイミングや量を決めるための客観的な基準を設定しておきましょう。

また、各営業員が個人個人で依頼をかけるのではなくコントロールする担当者を決めておくのも有効です。
複数名が補充依頼をかけていると、例えば在庫過多だと分かっても自分事として認識しづらくなります。つまり「責任の所在が不明確」になり、改善が進まないのです。補充業務だけでなく、在庫問題は往々にして「責任の所在が不明確」になりがちです。営業部で責任を持つなら、部内にコントロールする担当者を作って管理させると良いでしょう。もしくは営業部門から販売計画を共有した上でSCM(サプライチェーンマネジメント)部門を設けてコントロールさせるのも方法の1つです。
「在庫責任を明確にする」とは、単に担当部門を決めることではありません。誰が責任をもって在庫量をコントロールするのかを決めることであり、責任を負った担当者・部門は適切に運用するためルールやPDCAサイクルを回す体制を整える役割を担わなければいけないのです。そういった仕組み作りを担えるのかを加味して、担当部門を決めると良いでしょう。

在庫が過剰に補充されてしまう仕組み


まとめ

工場で生産された製品を物流拠点へ送る「在庫補充業務」は、ブラックボックス化しやすい傾向にあります。
在庫補充業務がブラックボックス化してしまうと、大きく2つのデメリットが発生します。

  • ・在庫配置を最適化できない

  • ・ムダな保管コスト・輸送コストが発生

多くの企業が在庫適正化や物流コストの削減を重要な経営課題として捉えていますが、在庫補充業務が原因で最適配置できなかったりムダな物流コストが発生したりしていることには気づけていません。またその役割を担う熟練の担当者に依存した運用になっているため大きな負担がかかっており、企業としてもリスクをかかえていることになります。
働き方改革やドライバー不足への対策として、在庫補充業務を見直してみませんか。

記事一覧に戻る

メルマガ登録

導入事例や新しいソリューション情報など、メルマガ会員限定で先行案内しています。

登録はこちら
CONTACT

お問い合わせ

サービスに関するご相談、資料請求は
以下よりお気軽にお問い合わせください