前回では、提案評価フェーズにおける「3PL事業者選択時に評価すべきポイント」をお伝え致しました。
今回からは、3つ目の立ち上げフェーズにおける『3PL立ち上げプロセスにおけるポイント』をお話させて頂きます。
3PLコンペにて3PL事業者を選定後、荷主企業と3PL事業者と共に新しい物流センターにおける新しい業務を構築していく『立ち上げフェーズ』に入ります。その際に、早期に確実に立ち上げるために考慮すると良い7つのポイントをご紹介させて頂きます。
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目次
立ち上げタスクの明確化とプロジェクト内における共有
3PL化を初めて経験する荷主企業にとっては、自分達で何を行い、3PL事業者側では何を行うのかなどの役割分担が分からず不安な場合が多いと思われます。 また、お互いが「相手が行うだろう」と思い込み、やるべきことを漏らしてしまい、後戻りが発生してしまう可能性もあります。 そのため、誰が・何を・いつまでに行うのかを最初に定め、荷主企業と3PL事業者間で認識を合わせておく必要があります。物流センター立ち上げに関する活動タスクスケジュール(WBS)を作成し、荷主企業と3PL事業者との共同プロジェクト発足後のキックオフ会議において、プロジェクト内で共有して認識合わせをすることが重要です。 また、プロジェクトにて定期的に進捗会議を開催し、WBSに各タスクの進捗状況を確認することも必要です。 また、どのような活動タスクなのか“言葉”では認識のズレが発生してしまうため、それぞれのタスクのアウトプットも定義しておきます。こうしてアウトプットのサンプルを作成・共有することで、内容やレベル感のズレをさらに無くすことができます。
※ご参考までに、弊社では物流センター立ち上げのための方法論「構築MeLOS」を保有しております。
これは、上記のタスクスケジュールとアウトプットサンプルがセットになっているドキュメント集です。
これを活用することで、荷主企業とスムーズに認識合わせが実施できるため、3PL化を進める荷主企業及び3PL事業者には同様のドキュメント作成およびプロジェクト内の共有をお薦めします。
現状業務ルールのスムーズな引き継ぎ
新物流業務においては、業務プロセス自体は新たに構築することになりますが、納品先や商品に応じた固有ルールは現状の業務ルールを引き継ぐケースが多いです。その際には、現在利用しているマニュアルを荷主企業より提供頂き、マニュアルに基づいて確認することとなります。 ここで確認すべきことは、このマニュアルが最新化されているか否かです。マニュアルが存在しない、またはマニュアルが最新化されていない場合、荷主企業へ作成・最新化を依頼することも必要になりますが、時間を要してしまう場合には、現場作業者へヒアリングや現場視察にて実作業を確認する必要があります。 もちろん、現場責任者の立ち会いのもとで漏れが無いように確認することが重要です。 このような現状業務ルールの引き継ぎにあたりよく問題になるケースは、既存の3PL事業者から別の3PL事業者に切り替わる場合です。 既存の3PL事業者にとっては、長年携わってきた仕事が無くなってしまうことになるため、今まで培ってきたノウハウを丁寧に教えてもらうことは難しいものです。そのような場合は、やはり荷主から誠意をもって協力を依頼する他ありません。極力、既存3PL事業者に負担を掛けない形で協力を依頼することが、3PL化を成功に導くための重要な活動となるのです。
現状業務の再構築
3PLの目標を物流コスト削減とした場合、現状業務の効率化や単なる値下げ交渉では限界があります。現在運用されている荷主企業の物流部門、または既存の3PL事業者は、物流コスト削減に向けて長年改善に取り組んできたため、ちょっとした工夫では物流コスト削減に繋がるはずがありません。 そのためには、現状業務をリセットして、業務を1から再構築する必要があります。 まずは、入荷から出荷、配送までの物流業務の全般を細かい作業単位に分解します。 業務再構築の手順としては、ECRSの順番で検討を進めます。 ECRSとは、Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(入れ替え)、 Simplify(簡素化)の英語の頭文字を組み合わせた言葉ですが、E→C→R→Sの順番で業務改善を検討していきます。 E : この作業を無くすことで作業短縮できないか? C : この2つの作業を1つに集約して、作業短縮できないか? R : この2つの作業を入れ替えることで、別の作業を無くすことができないか? S : この作業を簡単にすることはできないか? このような流れで、不要な作業の排除、作業の組み合わせや入れ替えにより作業短縮を図ります。また、残った作業に関しては標準化できる業務とそうでない業務に分類します。この標準化できる業務に関して、ITや自動化設備を利用して効率化・省人化を進めます。 このように、現状業務を細分化して再構築することで、業務の効率化・標準化を検討していきます。また、事項に記載する全社的な取り組みによって、現状業務を抜本的に見直すことも必要となります。
荷主企業としては全社的な取り組み
やはり、物流コスト削減などの3PL化の目標を達成するためには、サービスレベルの見直しや在庫の持ち方の見直しなどにも目を向ける必要があります。 これには、受注から配送までのリードタイムを長くする、または、出荷タイミングを調整して出荷物量を平準化するなど、営業部門も巻き込んだサービスレベルの見直しが必要です。 さらに、生産部門(仕入部門)も巻き込んで、商品によっては在庫型から受注生産型(都度仕入型)に切り替えたり、工場(仕入先)からの直送に切り替えたりなど、物流センターにおける在庫の持ち方と配送方法の見直しも必要です。 一般的によく言われることですが、物流におけるサービスとコストはトレードオフの関係にあります。本気で物流コスト削減に取り組む場合には、サービスの見直しは避けては通れません。 また、このような取り込みは物流部門だけで進めることはできないため、営業部門・生産部門・仕入/調達部門・システム部門など、下図のような全社的な体制で3PLプロジェクトを発足することをおすすめします。
次回も引き続き、『立ち上げフェーズ』において、早期に確実に立ち上げるために考慮すると良いポイントについてお話しします。
このコラムの監修者 |
セイノー情報サービスは400社以上へのWMS導入を通して培った物流ノウハウをもとに、お客様の戦略立案や物流改善をご支援しています。 当コラムは、経験豊富なコンサルタントやロジスティクス経営士・物流技術管理士などの資格を持った社員が監修しています。 |
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