見積を比較できるように見積条件を明確化すること
3PL事業者から提示される見積を適切に比較するために、以下の4点を明確にすることをお薦めします。 (a)物量条件 (b)見積項目 (c)見積範囲 (d)契約期間 まずは、物量条件と見積項目を統一することで、以下の図のように、3PL事業者各社の見積もりを適切に比較することができます。
(a)物量条件
上記の情報開示の通り、現状の物量データや業務概要を伝えることと合わせて、比較するための物量条件を伝える必要があります。 作業単価だけでは、実際に1ヶ月の運用費がいくらになるか分からないため、例えば、平均的な物量である1ヶ月の物量を取りまとめて提示します。入荷伝票の明細数やケース数、出荷伝票の件数や明細数やケース・ピース数などです。 上記の表の通り、3PL事業者各社からの物量条件が統一され、見積費目毎の比較や、月間運用コストの比較が容易になります。 また、現状のコストとの比較も可能となり、コスト削減効果なども把握することが可能となります。
(b)見積項目
前述の通り、見積費目を提示することも重要です。業者も色々な考え方で、見積項目を設定しますので、比較しやすいように、見積項目を提示します。 例えば、出荷作業料を例にあげましょう。 ある業者は、出荷作業料1000円/件というシンプルなものであったとします。別の業者は出荷事務作業料100円/件+ケース出荷料50円/ケース+ピース出荷料20円/ピース+梱包作業料100円/箱と各作業内容にあわせた詳細な単価設定であったとします。 前述の通り、月間コストとして提示されても、そのトータルコストでしか比較できません。また、運用稼働後には、荷主企業様と3PL事業者と一緒になって物流改善に取り組んで行くわけですが、改善の結果が物流コスト削減に繋がるコスト体系にしておくことも考慮する必要があります。 先の例では、各作業内容に合わせたコスト体系の方が、各作業の改善結果に合わせて単価の見直しが可能となります。
また、物流改善といった観点だけでなく、今後の販売・生産/調達・在庫戦略を立案するにあたっても、得意先別や商品別の物流コストを分析する場合が考えられますが、そのような分析を行うためには、先程と同様に各作業内容に合わせたコスト体系が必要です。 よって、3PLコンペとして適切に比較するためにも、また、運用稼働後の改善や物流コスト分析に繋げられるコスト体系を、見積項目として提示することをおすすめします。
(c)見積範囲
見積に含めること、そうでないことを明確にします。例えば、梱包用の企業ロゴ入り段ボールは支給するとか、商品に対する保険は自社で掛けるため不要であるとか、高額商品であるため運送保険も必要であるとか、荷主企業側・3PL事業者側ともに考え方は様々です。 そのため、あらかじめ見積範囲を明確にしておくか、または、見積項目として分けて提示することを3PL事業者へ依頼する必要があります。
(d)契約期間
コストを比較するためには、希望する契約期間も提示し、3PL事業者の提案条件を統一することが必要です。 新たに物流を構築するには、多くの初期投資が発生します。新たに倉庫を借りる場合には敷金・礼金が、また、新たに保管什器としてパレットラックや棚が、フォークリフトや作業台車などが必要になる場合もあります。 物流システムの準備や事務機器も必要です。3PL事業者は初期費用として提示したり、月額の管理費などで提示するわけですが、後者の場合は想定する契約期間が各社様々であると比較できなくなります。 そのため、あらかじめ契約期間を明示しておくことをおすすめします。
3PL事業者に十分な検討期間を与えること
ここまでで記載した通り、コンペを開催する荷主企業には十分な準備期間が必要になりますが、提案する3PL事業者側にも十分な検討期間を与える必要があります。 依頼企業側としても、現時点で空いている倉庫での提案を求めている訳でなく、自分達の物流に対して最適なアセットでの提案を求めている訳です。 現在、倉庫の需要が高く、空き倉庫をなかなか見つからない状況にありますので、3PL事業者は他の顧客の保管商品を別の倉庫に移動させて、適切なエリアに適切なスペースを確保しようとやり繰りしますので、顧客及び社内との調整も必要になります。 改善・改革といった工夫による高品質・低コストな提案を受けるために、十分に検討できるスケジュールを調整しましょう。 今回のコラムでは、3PLコンペ開催にあたって、3PL事業者へ開示すべき情報や、見積条件の提示方法など、具体的な手順について、お伝え致しました。 次回は、3PL事業者から提案が実施された際、どのような観点をどのように評価するべきかといった3PL事業者選択時の評価ポイントについて、お話させて頂きます。