今回は、ロジスティクスPSIとは(第3回)で説明したロジスティクスPSIによる2つのアプローチ「在庫の適正化」と「物流リソースの適正化」のうち、「物流リソースの適正化」を取り上げます。
物流リソース適正化のステップ(第3回のおさらい)
トラックや作業員、保管スペースなどの物流リソースを最適化するには、サプライチェーン上の各企業もしくは社内の各部門がそれぞれPSI情報を持ち、それらの情報を連携することが求められます。それも、従来のような川上の部門から川下の部門へ直前に情報を渡すのではなく、川下から川上に一定期間の予測情報を渡すことが必要です。 例えば、当日確定した受注・出荷情報だけを運送依頼として物流会社に渡すのでは計画性がありません。もし予想を超える物量があった場合、物流会社は都度、トラックや作業員を手配しなければなりません。あらかじめPSI情報が連携されていれば、ピークになる日の作業を、余裕がある日に山崩しをすることが可能になり、物量も作業量も平準化されます。これにより無駄な作業員の手配をしなくてもよくなり、トラックの積載率や配車効率もアップし、物流リソースは適正化され、物流コストも削減できます。
物流リソースの可視化
各部門の垣根を越えて在庫や生産の情報を管理するためには、PSI情報の統合管理が必要です。それにはまず、PSI情報のつながりをリアルタイムに可視化します。そして、未来在庫のシミュレーションを行うことで、全社で未来在庫の情報を共有できます。これにより、部門間のコミュニケーションが活性化され、計画変更や納期調整にも迅速に対応することができるのです。
また、倉庫プロセスや輸送プロセスにおける物流リソース(作業員、トラックなど)も可視化します。そして、倉庫の計画を立てた後に、物流リソースのキャパシティに収まるように計画を見直します。こうすることで、全社の在庫と物流リソースを適正化できるようになります。
在庫計画・物流計画の変更手順(例)
- 1. 販売見込みを基に、物流拠点からの出荷数を決定
- 2. 物流拠点の在庫が足りない場合、工場からの入荷数を安全在庫の考慮をして決定
- 3. 各物流拠点の入荷数を基に、出荷数を決定
- 4. 工場に在庫が無いため、製造数を決定
- 5. 全社PSIで計画した物流拠点への出荷数と車両キャパシティを基に、移送計画の数量を決定
- 6. 車両キャパシティ超える場合、輸送リソースに余裕がある前日に前倒し
- 7. 出荷数量の変更により、全社PSIへ自動で反映
- 8. 変更された数量に合わせて計画を再度見直し
物流リソース計画の可視化
PSI情報に基づき計画された物流リソース計画は、状況の変化に応じて更新する必要があります。その場合、企業間サプライチェーンでは、PSI情報をサプライチェーン上にあるプレイヤー間で分断させることなく、情報を提供することにより、物流リソースの効率向上やコスト低減などの改善につながることが期待できます。 このようなPSI情報の連鎖により、物流リソース計画を可視化し企業間で共有するためには、以下の3つの要件が重要です。
- 1. サプライチェーン各社がPSI情報プラットフォームを持つこと
- 2. 各社のPSI情報を直前の連携ではなく、予め連携すること(事前連携)
- 3. リソース計画をリアルタイムで更新できること
物流リソース計画の山崩し
サプライチェーン上の各社がPSI情報プラットフォームを持ち、商流情報(PSI情報)を連携することができるようになれば、製造業(荷主)と物流業(運送事業者)の取引関係や業務関係をより望ましい姿にすることができます。 荷主である製造業から運送事業者への運送依頼のタイミングは「当日」が多く、それは都度確定した情報となっています。このため運送事業者側では、より効率的な運行をするための調整の期間が短くなり、物流リソースの活用度(積載率)は低いものとなり、平準化(山崩し)は不可能になります。 そのため、物流リソースの平準化(山崩し)を可能とするには、「事前予約」が必要です。これは、物流取引(発荷主と運送事業者の間の運送取引)に先行してある商流取引(着荷主と発荷主の間の物品取引)の情報を用いた「早期情報提供型」の運送依頼です。例えば1週間(7日)後、1ケ月(30日)後、あるいは3ケ月(90日)後までのForecastを日々更新します。これにより、「空きリソース(トラック)」と「未割当の貨物」をマッチングする機会を増やし、積載率を高めることが期待できます。