物流現場では、人手不足や物量の変動が続いています。特に物量の波動が大きい物流センターでは、要員配置の精度が生産性やコストに直結します。 そこで今回は、AIを活用した「時系列予測」により、物流センターにおける要員配置の高度化に取り組んだ事例を取り上げ、そのプロセスと効果について解説します。
目次
6. AI活用の取り組み結果
7. まとめ
要員配置が物流センターの生産性を左右する
物流センターにおける要員の適正配置は、労働力不足が深刻化・常態化する中で、生産性を大きく左右する重要なテーマとなっています。ここで言う生産性とは「人時生産性」です。これは作業者1人が1時間あたりにどれだけの作業を処理できたかを示す指標であり、現場の効率性を測るうえで欠かせません。
人時生産性は大きく以下の2要素に分解できます。
- ・作業者(誰が行うか)
- ・作業量(何を・いつ・どれだけ行うか)
要員配置計画は、これらの要素をもとにシフトや作業指示として具体化されます。
また、作業者情報として、勤務予定、保有スキル、作業スピードなどの把握が必要です。一方、作業量を把握するためには、予測作業量、作業進捗、優先順位といった情報が求められます。さらに、実際の配置検討では物量以外にも多くの条件を考慮しなければなりません。例えば、取り扱い数量、荷姿特性、作業タイムスケジュール、マテリアルフロー、業務フロー、設備レイアウトなどです。
これら複数条件のもとで、適切な人員を適所に配置し、状況に応じて柔軟に再配置できるかどうかが、生産性向上の鍵を握ります。
作業員管理 FLabor
人時生産性の向上と適切な要員配置を実現
物流現場における作業量予測の難しさ
要員配置の精度を高めるうえで、最も難易度が高いのが「作業量予測」です。 作業者情報(勤務予定やスキル等)は調査・測定の手間はあるものの、一度整備すれば管理の難易度は比較的低い領域です。また作業進捗の把握や優先順位の整理も、可視化ツールの活用によって一定の管理が可能です。 しかし作業量予測だけは事情が異なります。多くの物流センターでは、入出荷実績や販売計画をもとにしつつも、最終的には管理者の経験や勘に依存しているのが実情です。 その結果、「不足するよりは良い」という判断から、人員を過剰配置してしまう傾向が見られます。これはコスト増加だけでなく、生産性低下にもつながる課題です。
AIによる要員配置最適化の事例
今回、AIによる要員配置の高度化に取り組んだのは、全国に8カ所の物流センターを展開する卸売業A社です。
同社の物流現場では、計画から日々の運用管理までを支える基盤として、当社のクラウド型物流情報システムを活用しています。中核となるのが、次の3サービスです。
統合物流管理システム(LMS)
基幹システムなどの商流システムと物流システムをつなぐハブ機能を担います。点在する物流情報を包括的に管理し、各システム間の情報連携を支える役割を果たしています。
倉庫管理システム(SLIMS)
入荷・出荷・在庫を一元管理し、進捗状況を可視化できます。物流センター内作業の精度向上と効率化を支える中核システムです。
作業員管理システム(FLabor)
作業者ごとの「一人時間当たり生産性」を可視化します。要員配置の適正化と現場全体の生産性向上につなげています。
これらを連携させることで、商流・物流・作業情報を一元管理し、現場の可視化と生産性向上を実現してきました。
AIによる作業量予測とシフトの最適化
従来、作業量予測やシフト立案は、入出荷実績や販売計画、催事情報などのデータをもとに行われてきました。これらから日々の作業量を見積もり、人時生産性や作業者同士の相性も踏まえながら配置を検討します。しかし、この判断には高度な経験とノウハウが求められ、誰もが同じ精度で実施できるものではなく、属人化の解消と配置精度の向上が、大きな課題となっていました。
要員配置の精度向上と人件費最適化を狙ったAI活用
そこでA社では、AI活用の目的を「配置計画の高度化に向けた検証」と位置づけました。狙いは大きく2つあります。1つは、担当者の経験に依存していた要員計画の属人化を解消し、再現性のある配置立案を実現すること。もう1つは、過不足のない要員配置によって人件費を最適化し、コスト削減につなげることです。
これらを実現するため、AIが各種データをアルゴリズムで分析し、最適な配置案を算出する仕組みを構築しました。
AIによる未来物量予測(ケース①)
まず、要員配置の前提となる未来物量予測に着手しました。 作業実績、作業予定、人時生産性をインプット情報とし、AIが未来物量を予測します。そして、そこから未来作業量と必要作業人数を算出します。
管理者の判断を支える予測可視化基盤
精度検証では、予測値と実績値の差異をKPIとして設定しました。作業量差異および必要人数差異を比較し、予測モデルの実用性を評価しています。
AIによる要員の適正配置(ケース②)
次は、AIが算出した必要人数をもとにシフト案を自動生成します。管理者はその案をベースに配置を調整し、ピッキング・検品・梱包など各工程の生産性向上を図ります。
シフト計画作成を支えるAI機能
シフト計画作成にあたっては、AI予測結果をもとに配置検討を行える仕組みを構築しました。具体的には、次の機能を備えています。
- ・時間単位の物量予測
- ・作業量算出
- ・必要人数算出
- ・個人別作業割当
- ・実績管理
AIが提示するシフト案はリアルタイムで確認でき、管理者の判断に応じて柔軟に修正できます。
現場運用を通じた検証
運用では、AIが作成したシフト案を参考に作業指示を行い、状況に応じて配置変更を実施しました。その実績データを蓄積し、精度検証および継続的な改善に活用しています。
AI活用の取り組み結果
未来物量予測の結果、月初から中旬にかけては実績と高い適合を示し、物量ピーク日についても予測と一致するなど、良好な精度が確認されました。一方、月末においては予測と実績に乖離が見られました。これは営業施策の実施やメディア露出など、外部要因による需要変動の影響が大きいと考えられます。 今後は商流データや製品特性(新製品・定番品)といった要素も加味することで、さらなる予測精度の向上が期待されます。
AIによる要員の適正配置(ケース②)の結果
AIによる要員適正配置の検証では、必要作業人数予測も概ね実績と適合する結果となりました。一方で一部に乖離も見られました。特に、作業個数が多い日には、人時生産性が平均値を上回る傾向が確認されており、平均値を基準とした学習モデルとのズレが生じたと考えられます。 今後は生産性補正や前倒し作業の影響も織り込み、さらなる予測精度の向上を図ります。
ロジスティクス・エージェント
物流版AIエージェントが業務を分析・判断・実行
まとめ
今回は、AIを活用した未来物量予測と要員適正配置に取り組み、その有効性を確認しました。その結果、AIは人の経験や勘に依存していた認知・予測・判断を補完し、配置計画の高度化に寄与することが明らかになりました。要員配置の最適化は、AIが示す示唆を人が運用に落とし込むことで、より現実的な形で実現していきます。今後AIの汎用化が進めば、労働力不足を補完し、持続可能な物流の実現を支える基盤となるでしょう。
次回は最終回として、「Sharing(シェアリング)」の取り組みを紹介します。
このコラムの監修者![]() |
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