WMSを導入しても、事前準備や運用体制が不十分なままでは、期待した効果を十分に得られない場合があります。
導入効果を高めるには、自社の課題を整理したうえで適切なシステムを選定し、稼働後も運用状況に応じて見直しを続けることが大切です。
本記事では、WMS導入を成功に導くポイントや導入にかかる費用の項目、今後WMSに求められる役割、導入事例について解説します。
目次
WMS導入を成功させるコツ
WMSを導入して業務効率化につなげるには、事前準備に加え、稼働後のサポート体制や効果測定、セキュリティ対策が欠かせません。ここでは、WMS導入を成功に導く3つのポイントを解説します。
1.スムーズな導入のために事前準備を行う
WMSを円滑に立ち上げるには、導入前の準備を十分に行う必要があります。製品によって得意とする倉庫規模や物量、業種が異なります。そのため、自社と同じ業種、または近い業務での導入実績があるかを確認しましょう。
また、パッケージ型のシステムを導入する場合は、標準機能の充実度も重要です。業界・業種特有の作業ルールや商習慣に合った機能が標準搭載されていれば、カスタマイズを抑えやすく、導入時の負担軽減につながります。
導入前には、以下の点も確認しておきましょう。
- ・新しい業務フローのシミュレーション
- ・現場の運用を熟知している担当者を中心としたチーム編成
- ・一斉切り替えか、拠点や業務ごとの順次展開かといった移行方法
- ・既存の基幹システムとの関係を踏まえたリスクと回避策
- ・トラブル発生時にシステム上で対応する範囲と、現場運用で補完する範囲
特に、新しい業務フローのシミュレーションが不十分だと、切り替え当日に現場で混乱が起こる可能性があります。
実際の業務を想定しながら準備を進め、想定されるリスクや対応方法を事前に整理しておきましょう。
2.サポート体制を確認し、定期的な効果測定を行う
WMSは本番稼働がゴールではなく、現場の状況に合わせて使い方を見直すことで効果を高めていくシステムです。物流業界では、荷主企業からのサービスレベル変更、仕入先の事情による入出荷単位の変化、販売チャネルの拡大など、外部環境や経営状況の影響を受けやすい傾向があります。そのため、運用方法や在庫の保管場所、システムの処理性能や対応範囲を見直す場面も出てきます。こうした変化に対応するには、幅広い相談ができるベンダーを選ぶとともに、運用状況を定期的に見直し、PDCAを回しながら改善を続けることが重要です。稼働後の課題に対して、運用面・システム面の両方から支援を受けられる体制があれば、課題の早期解決につながります。
3.セキュリティ対策が十分なシステムを選ぶ
物流センターでは、内部からの情報漏えいや外部からの不正アクセスなど、さまざまなリスクが想定されます。
たとえば、ランサムウェア攻撃によってシステムトラブルが発生し、出荷業務が停止すると、取引先との信頼関係だけでなく、事業継続にも大きな影響を与えかねません。
特に、通販に代表されるBtoCを扱う物流センターでは、届け先情報など多くの個人情報を取り扱うため、セキュリティ対策、障害対策、災害対策が十分なシステムを選ぶことが重要です。
求められる対策レベルは、自社や取引先の事業規模、取り扱う情報の重要度、サービス停止時の影響度によっても変わります。安定した稼働が見込めるか、障害発生時にどの程度の時間で復旧できるか、どの時点までデータを復旧できるかなどを事前に確認しましょう。
また、情報セキュリティ管理体制に関する国際規格であるISMS認証やISO/IEC 27001の取得状況に加え、アクセス制御、ログ管理、バックアップ体制など、具体的なセキュリティ対策の内容も確認することが大切です。将来的に取引条件や事業規模が変化すれば、求められるセキュリティ水準が高まる可能性もあるため、将来の運用も見据えてベンダーを選定しましょう。
WMS導入にかかる費用の項目
WMSの導入費用は、倉庫の規模や拠点数、利用人数、出荷件数、必要な機能、既存システムとの連携範囲によって大きく変わります。そのため、一概に金額を示すことは難しく、実際の費用は自社の運用条件に合わせて確認する必要があります。
導入時には、主に以下のようなコストが発生します。
- ・ソフトウェアの購入費またはライセンス料
- ・ハンディターミナルなど、WMSの運用に必要な機器のレンタル、購入費
- ・サーバやネットワーク機器などのハードウェア費
- ・初期設定、導入支援費
- ・既存システムとの連携、統合費
- ・操作研修費
- ・ソフトウェア保守、アップデート費
- ・セキュリティ対策費
- ・ハードウェア保守費
一般的に、クラウド型は初期費用を抑えやすく、オンプレミス型は自由度が高い反面、初期投資が大きくなる傾向があります。導入後もユーザー追加や機能拡張によって費用が発生する場合があるため、初期費用だけでなく、導入後のランニングコストを含めた総コストで比較しましょう。
今後WMSに求められる役割
人手不足や出荷形態の多様化が進むなか、今後のWMSには、倉庫内の在庫管理や入出荷管理を効率化するだけでなく、物流全体の最適化を支える中核システムとしての役割が求められます。
EC市場の拡大や多品種少量出荷の増加により、物流現場ではより高い精度とスピードが必要とされています。そのため、WMSには在庫状況をリアルタイムに把握し、作業の進捗や人員配置を可視化する機能が求められます。
また、AIやIoT、ロボットなどの先端技術と連携することで、需要予測に基づく在庫配置の最適化や、ピッキング作業の自動化・省人化も期待されています。さらに、TMSやOMSなどの周辺システムと連携し、受注から配送までの情報をつなげて管理することも重要です。
このように、今後のWMSは単なる倉庫管理システムではなく、物流現場の生産性向上、コスト削減、顧客満足度向上を支える基盤として、より戦略的な役割を担っていくでしょう。
WMSの導入事例
WMSを導入した2社の事例を紹介します。導入前の課題や導入後の効果を確認することで、自社での活用イメージを具体化しやすくなります。 p>
株式会社テクノアソシエは、1946年の設立以来、鋲螺(びょうら)・金属加工品・化成品をはじめ、産業を支えるさまざまな部材・機構部品を扱っている企業です。物流業務の効率化や標準化などを目的として、WMSを導入しました。 WMSの導入により、現物在庫とシステム上の在庫を一致させる「現物主義」、作業手順の標準化、進捗状況の可視化を実現しました。主な成果は以下のとおりです。 アドレス通商株式会社は、宛名のタイピングを主な業務として創業した企業です。現在は、通販物流などの「ロジスティクスサービス」、ダイレクトメールの企画・制作・発送を行う「DM発送サービス」、派遣・紹介を行う「総合人材サービス」の3つの事業を展開しています。株式会社テクノアソシエ
導入前には、以下のような課題がありました。
アドレス通商株式会社
同社の通販物流では、従来、ハンディターミナルを使った検品が中心で、作業効率の向上が課題でした。そこで、WMSとレジ型検品システムを連携し、検品作業の効率化を図りました。
さらに物流ロボットを導入することで、4件のピッキングを同時に進められるようになりました。作業者はハンディターミナルを持たずに両手で作業でき、ピッキング後に出荷仮置き場まで移動する手間も削減されています。
また、「LOGISTICS・COCKPIT」により倉庫内の状況を可視化し、現場にいなくても作業進捗を把握できる体制を構築。加えて、「FLabor」で作業員ごとの実績や生産性をデータ化し、作業のバラつきや負荷の偏りを把握・改善できるようにしました。
これらの取り組みにより、検品・ピッキング・現場管理の効率化が進み、作業状況をデータに基づいて把握しながら、継続的に改善できる環境が整っています。
まとめ
WMSをスムーズに導入し、継続的な改善につなげるには、導入前の準備と稼働後の見直しが重要です。まずは自社の課題や業務フローを整理し、倉庫規模や商品特性、既存システムとの連携範囲に合ったWMSを選定しましょう。導入時には、費用項目やランニングコスト、サポート体制、セキュリティ対策も確認しておく必要があります。また、WMSは導入して終わりではありません。作業実績や進捗状況をもとに運用を見直すことで、さらなる効率化や標準化を実現できます。人手不足や出荷形態の多様化に対応するためにも、WMSを物流改善の基盤として活用し、現場の変化に合わせて継続的に改善していきましょう。
倉庫管理システムSLIMS
物流センター業務をリアルタイムに可視化・最適化
このコラムの監修者![]() |
セイノー情報サービスは450社以上へのWMS導入を通して培った物流ノウハウをもとに、お客様の戦略立案や物流改善をご支援しています。 当コラムは、経験豊富なコンサルタントやロジスティクス経営士・物流技術管理士などの資格を持った社員が監修しています。 |
|---|





