WMSの導入は事前準備が成功のポイント
WMS(倉庫管理システム)の導入・リプレース検討を始めてから実際に導入するまでには、様々な工程が存在します。 その中でも、計画通り新WMSを導入し、立ち上がり時のトラブルを低減するために重要なのが、導入の1~2カ月前から行う準備作業です。 新システム稼働時は不測の事態が発生しやすいのですが、それでも物流を止めないために準備段階で対策をうちます。 しかし一口に導入準備と言っても、受け入れテストやマニュアル作成、運用リハーサルなど行うことは多岐に渡ります。 そこで当コラムでは、導入準備として行うべきことと各工程のポイントについて解説します。
目次
- ・導入計画の立案、資料化
- ・倉庫内の準備
- ・データ移行の準備
コラムのポイント
- ・新WMS稼働までの流れと行うべきことを解説
- ・導入プロジェクトを失敗させない(大きなトラブルを起こさない)ためのポイントを紹介
- ・計画書のアジェンダサンプルを掲載
導入準備とは
当コラムにおける「導入準備」とは、システム開発着手後に行う一連の作業全般と位置づけます。 移行準備と呼ぶこともあり、新WMSがスムーズに稼働するよう事前に行っておくべき作業全般を指します。
具体的には、要件定義で検討された内容を具体化していくのですが、大きく分けて3つのことを行います。
- ・もれなく準備を行うための計画立案
- ・業務運用視点での入念なテスト
- ・現場への教育
導入準備を行う目的、メリット
導入準備は、新WMS稼働時のトラブルを低減するために行います。 大きなトラブルが起こって物流が止まれば顧客に商品を届けられなくなるため、売上や企業としての信用に影響します。 そのような事態を避けるため、準備段階でトラブルを最小限に抑える対策をうつのです。 また、新WMSがスムーズに稼働することで、生産性向上など期待する効果を早期に達成することも可能となります。
導入準備の全工程は、以下の通りです。
準備のために十分な時間を取れる企業は多くないため、どの工程に注力するのかを決め、ポイントを押さえて効率的に進めることが重要です。
では、行うべきこととポイントを工程別に解説します。
導入準備として行うべきことや決めるべきことを洗い出し、役割分担とスケジューリングを行います。
よく「段取り8分(ぶ)」と言われる通り、導入準備においても計画立案は重要な工程です。
特に次の3点は、プロジェクトの成功・失敗に大きく影響します。導入準備
導入計画の立案、資料化
倉庫内の準備
WMSの導入・リプレースは、運用の変更や管理の高度化を伴います。 そのため、倉庫内では新しいシステム・運用に切り替えるための準備が必要となります。
- ・インフラ整備:ハンディターミナル・PC・プリンタなど機器の準備、LAN工事 など
- ・庫内整備:ロケーションラベルの作成・貼付け、一時仮置き場など特殊エリアの整理整頓、各商品へのバーコード貼付、庫内レイアウトの変更、什器の手配 など
データ移行の準備
データの受信・送信のリールが要件定義で取り決められていますが、ここで再度確認します。
- ・対象データ:トランザクションデータ(出荷データなど)、商品・届け先などのマスタデータ、初期の在庫
- ・初期の在庫計上は特に注意が必要:管理項目が変わるなど、システム移行の影響を受けやすいため
この工程は情報システム部門や、基幹システムベンダーと役割を分担しながら進めることになります。 認識齟齬が発生しないよう、議事録を共有するなど密にコミュニケーションを取って進めることが重要です。
まとめ
システム導入前の準備作業は、立ち上げ時のトラブルを極力なくすために重要です。 なかでも重要なのが導入計画を立案する工程で、導入プロジェクトの成功・失敗に大きく影響します。 自社の商品・物流特性を加味して行うべきことや決めるべきことを洗い出し、役割分担とスケジューリングしておくことで、トラブルを最小限に抑えるための対策を確実に行えるようにします。 さらにもう1つ重要な工程が、システムの受け入れテストです。 「要件定義の通り作られているか」だけでなく、現場運用に耐え得る仕様になっているかをユーザー目線で確認します。 次回は実行編として、受け入れテスト~リハーサル、本番稼働日の注意事項など、導入準備の後半について解説しますので、計画編と合わせてご一読ください。