物流や製造現場において、トレーサビリティの確保はもはやできていて当たり前の基準となりました。
サプライチェーンの複雑化や効率化への要求、さらにグローバル規制強化が進む近年、トレーサビリティへの対応力は、企業の経営リスクを最小化する重要なカギとなります。
本コラムでは、いまさら聞けないトレーサビリティの基礎知識から、多くの現場が直面する「製造と物流で情報が途切れてしまう」という課題の解決策まで、わかりやすく解説します。
目次
1. トレーサビリティとは
2. トレーサビリティの種類
6. まとめ
トレーサビリティとは
トレーサビリティとは、一言で表現すると、製品や原材料の移動履歴を追跡・管理できる仕組みです。
具体的には、「その製品が、いつ、どこで、誰によって作られたのか、さらにどのようなルートで運ばれてきたのか」といった情報を、必要に応じて一方向または双方向で確認できる状態を指します。
このトレーサビリティを理解する上でポイントになるのが、情報をたどる「向き(方向)」です。
例えば、製品の行き先を追う(トレースフォワード)や、製品の履歴をさかのぼる(トレースバック)といった2つのアプローチがあります。
トレースフォワード(追跡)
原材料や部品の段階から、完成した製品が市場へと流れていく動きを時系列に沿って追う方法です。
例:特定の原材料に不純物が混入していたことが判明した際、その原材料が「どの製品」に使われ、「どの配送先」へ出荷されたかを瞬時に特定し、ピンポイントで回収(リコール)する。
トレースバック(遡及)
市場に出回った製品から、製造や生産の段階へと、時間を巻き戻すように履歴をさかのぼる方法です。
例:出荷した製品に不具合が見つかった際、原因となった原材料のロットや、問題の起きた製造ラインを特定する。
トレーサビリティの種類
トレーサビリティは管理して追いかける「範囲の広さ」によって、大きく2つの種類に分かれます。
それぞれの特徴とビジネスにおける役割を整理してみましょう。
チェーントレーサビリティ(企業間連携)
原材料の調達から、加工、製造、流通、そして最終消費者に届くまで、サプライチェーン全体(サプライヤー、製造・メーカー、物流業者、小売店など)を通して製品の動きを追跡する仕組みです。一般的にトレーサビリティと言う場合、この広範囲な繋がりを指すことが多くなっています。
内部トレーサビリティ(企業内・工場内)
特定の工場の中や一つの企業内など、限られた範囲における部品や製品の動きを追跡する仕組みです。どの原材料ロットを使い、どの機械で、誰が組み立てたのかといった、製造工程の細かなデータを記録・管理することを指します。
なぜ、トレーサビリティが重要視されているのか
いまやトレーサビリティは、単なる「品質管理のルール」にとどまらず、市場やお客様からの信頼を支える大前提となっています。これほど注目されるようになった背景には、消費者の意識変化や、厳しさを増す法令順守(コンプライアンス)への対応という、企業を取り巻く環境の大きな変化があります。
企業への信頼が評価を左右する時代
あらゆる業界でトレーサビリティの重要性が高まっている背景には、消費者の食やモノの安全に対する意識の向上があります。万が一トラブルが起きてしまった時の「原因究明の早さ」や「情報公開の誠実さ」こそが、企業の信頼性やブランド価値を大きく左右します。
避けては通れない、グローバルな法規制への対応
特に近年、欧州(EU)を中心に義務化が進むデジタル製品パスポート(DPP)など、世界中で環境規制が急速に強化されています。DPPとは、製品の製造からリサイクルまでの情報を記録し、開示する仕組みです。
- ・原材料や成分、有害物質の有無
- ・リサイクル素材が使われている割合
- ・コンプライアンス情報やCO2排出量
- ・廃棄、リサイクルの方法
これらの情報を、製品に付けたQRコードなどを通じて簡単に確認できるようにする動きが始まっています。こうした法規制に対応できない企業は、今後グローバルな取引において不利になる可能性があります。つまり、トレーサビリティの確立は「海外ビジネスを続けるための必須条件」になりつつあるのです。
トレーサビリティを実現するためには
法規制への対応で現場の管理項目が増えるなか、エクセル等の手入力管理では入力ミスやデータ特定の大幅な遅れを招きます。一刻を争うトラブル対応や業務の効率化を目指すなら、WMS(倉庫管理システム)などのデジタルシステムを活用した管理環境の構築が欠かせません。
システム化がもたらす3つのメリット
システムを使った管理に移行すると、規制対応だけでなく、日々の現場作業そのものが大幅に楽になります。
- 1. 手作業をなくして、現場を効率化
膨大な情報の手入力や二重管理がなくなり、転記ミスや確認の手間を削減します。
- 2.在庫管理がもっと正確に
「どの製品が・どこに・どれだけあるか」がリアルタイムで見える化します。古い在庫の滞留や過剰在庫を防ぎ、経営のキャッシュフロー改善にも貢献します。
- 3.お客様からの信頼度がアップ
確かな移動履歴のデータ証明により、取引先や消費者に対して確実な安心感を提供できます。
導入のためのステップ
トレーサビリティの導入は、大きく次の3つのステップで進めていきます。
- ステップ1.製品に「識別コード」をつける
バーコードやQRコード、RFIDなどを活用し、製品やロットごとにシステムで識別できるようにします。
- ステップ2.データを集めて、記録する
入荷、製造、出荷といったそれぞれのタイミングでコードを読み取り、製品の動きを自動でシステムへ記録していきます。
- ステップ3.データを一元管理して、つなぐ
集まった情報をひとつのデータベースにまとめ、必要な情報をいつでもすぐに検索・追跡できる環境を整えます。
データの収集を支える4つのIT技術
現場の状況や予算に合わせて、以下のような技術を選んで活用します。
- 1.QRコード:省スペースで大容量の情報を記録、低コストかつ手軽に導入可能。
- 2.RFID:電波による複数タグの一括読み取り。箱を開けずに検品や棚卸しを劇的に効率化。
- 3.IoTセンサー:位置情報に加え、温度・湿度・衝撃といった移動中の品質状態をリアルタイム自動記録。
- 4.ブロックチェーン:事実上改ざん不可能な仕組みにより、企業間で高い信頼性を確立できる取引履歴を共有。
製造から出荷まで途切れないトレーサビリティ
いざシステムを導入しようとする際に多くの現場で壁となるのが、「物流(WMS)」と「製造(生産管理)」のシステム情報が途切れることです。 弊社の倉庫管理SLIMSと生産管理SPENCERはデータ連携が可能で、製造領域の「原料受入・投入~製造」と物流領域の「入庫・賞味期限〜出荷」までをつなぐことができます。これにより、現場に過度な負担をかけずに製造から出荷までのトレーサビリティを一気通貫で実現できます。
スムーズなデータ連携を実現する3つのステージ
【製造ステージ】SPENCERでミスを防ぎ、工程を見える化
クラウド上の視覚的な管理ボードを使って、原料から完成品までの「つながり」をリアルタイムに把握できます。現場ではハンディ端末を使って照合を行うため、原料の投入ミスや記録漏れを防ぎ、正確な製造履歴を自動で蓄積できます。
【物流ステージ】SLIMSで在庫と期限情報を一元管理
SPENCERから引き継いだ製造データをもとに、入庫から出庫までの物流在庫を一元管理します。賞味期限や鮮度情報と製造履歴を紐づけることで、出荷内容を適切にコントロールし、精度の高い在庫管理を実現します。
【トレースステージ】現場に負担をかけない高速検索
2つのシステムがつながっているため、万が一のトラブル時にも、対象ロットや出荷先をシステム上ですぐに検索・特定できます。
農林水産省委託の調査資料でもシステム導入によってトレースにかかる時間が大幅に短縮されることが示されています。これまで紙やエクセルの記録を確認する場合は数時間から1日を要していた作業も、システム化によって数分から数十分で完了できるようになります。
このように、製造と物流のデータをつなぐ仕組みは、日々の現場作業の効率化だけでなく、万が一の際の迅速な原因特定や回収判断にも役立ちます。
まとめ
現代のトレーサビリティは加点要素ではなく、「最低基準(必須要件)」に等しいものとなっています。 これから先、求められる状況を乗り切るには、現場に負担をかけない仕組み化のアプローチが不可欠です。システムの構築にお悩みの企業様は、豊富な実績を持つ弊社までぜひお気軽にご相談ください。
このコラムの監修者![]() |
セイノー情報サービスは450社以上へのWMS導入を通して培った物流ノウハウをもとに、お客様の戦略立案や物流改善をご支援しています。 当コラムは、経験豊富なコンサルタントやロジスティクス経営士・物流技術管理士などの資格を持った社員が監修しています。 |
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