2026.1.26

物流法改正が荷主企業や物流コストに及ぼす影響

知らないと困る物流法改正

 

物流法改正により、荷主企業にも契約・発注・委託体制に関する新たな責任が課されるようになりました。これまで運送事業者側の問題とされてきた取引の透明性や労働環境の改善が、荷主を含めた全体の課題として扱われています。 この記事では、物流法改正の主要ポイントを整理し、荷主企業のコンプライアンス対応やコスト面、業務運営への影響について解説します。物流やサプライチェーンの管理を担当する方は、今後の対応方針を検討する際の参考にしてください。

 

目次

  1. 1. 物流法改正が荷主企業のコンプライアンス面に及ぼす影響

  2. 2. 物流法改正が物流コストに及ぼす影響

  3. 3. 物流法改正による業務運営の変化

  4. 4. まとめ


 

物流法改正が荷主企業のコンプライアンス面に及ぼす影響

物流法改正により荷主企業が締結する運送契約や発注、運送管理に関する責任が明確化され、コンプライアンスへの影響は一層大きくなっています。ここでは、物流法改正のなかでも、特に貨物自動車運送事業法および貨物利用運送事業法の改正ポイントに焦点をあてて、荷主企業が押さえておくべき対応や留意点について解説します。

運送契約を結ぶ際の書面交付を義務化

物流法改正では荷主企業は運送契約の締結に際して、運送役務や附帯業務、燃料サーチャージなどを含む契約内容を明記した書面(電子記録も可)の交付が義務化されました。改正前は契約内容が曖昧な場合があり、荷主企業と物流事業者の間でトラブルが発生していましたが、同改正により、不当な取引の防止と物流事業者の適正な収益確保が期待されています。

物流改正法


委託先への発注内容を適正化

物流法改正ではすべての物流事業者に対して、利用運送委託先への発注を適正に行う努力義務が課されました。上流の事業者が一方的な発注を行わないようにするためのもので、具体的には以下の対応が求められています。

  • ・利用する運送に要する費用の概算額を把握し、概算額を勘案して利用の申込みをすること
  • ・荷主企業側が提示した運賃・料金の場合、事業者は荷主企業に対し、運賃・料金について交渉したい旨を申し出ること
  • ・委託先のトラック事業者がさらに利用運送を行う場合、例えば「二以上の段階にわたる委託の制限(再々委託の制限)」などの条件を付すこと

加えて、事業者は健全化措置に関する管理規程を作成し、管理者を選任することが義務化されました。
これまで、実運送事業者への不当な運賃や、無理な運行スケジュールによる過重な配車が問題となっていましたが、同改正により、実運送事業者の労働環境改善や適正な収益確保が進めやすくなると期待されています。

トラック事業者のメリット

運送体制の記録・保管を義務化

元請け事業者(荷主から委託を受けた運送事業者)には、再委託先である実際の運送事業者を管理・記録する「実運送体制管理簿」の作成が義務付けられました。これは、複層的になりやすい下請け構造を可視化し、取引の透明性を高めることを目的としたものです。
さらに、物流法改正では、取引の適正化を後押しするため、国土交通大臣が事業運営に必要な費用を基に「適正な運賃の算定基準」を告示できる仕組みも整備されました。これにより、運賃の妥当性が客観的に示されるようになり、荷主企業にも適正な委託体制の理解と協力が求められます。
こうした一連の取り組みによって、荷主企業は委託した荷物が誰によって、どのような体制で輸送されているのかを把握しやすくなり、コンプライアンス面でのリスク管理を強化できます。
なお、「実運送体制管理簿」には以下の事項を記載します。

  • ・実運送の商号又は名称
  • ・実運送事業者が運ぶ貨物の内容及び輸送区間
  • ・実運送事業者の請負階層(一次請け、二次請けなど)
実運送体制管理簿の作成
情報の通知義務
トラック事業者へのメリット

業務記録の範囲を拡大

荷待ちや荷役などの非効率な業務を可視化するための業務記録義務の対象範囲が拡大され、これまで一部の大型車両に限定されていた記録が、すべての車両に適用されるようになりました。同改正により、荷主企業はドライバーの労働状況をより詳細に把握でき、長時間労働の是正や作業環境の改善に活用できるようになりました。また、荷主企業と運送事業との間で契約内容や作業条件の交渉を行う際の参考資料としても利用できる可能性があります。

軽トラック事業者に新たな義務

物流法改正により、これまで規制対象外だった軽トラック事業者にも一部規制が適用されることになりました。荷主企業にとっても、委託先の軽トラック事業者が新たな義務を遵守しているか確認する必要が出てきます。新たに義務化された項目は以下の通りです。

  • ・貨物軽自動車安全管理者の講習受講
  • ・貨物軽自動車安全管理者の選任・届出
  • ・初任運転者等への指導及び適性診断の受診
  • ・業務の記録
  • ・事故の記録
  • ・国土交通大臣への事故報告

これにより、軽トラック事業者も安全意識を高めた運営が求められるようになり、荷主企業は委託先の運行管理状況や記録内容の確認を通じて、コンプライアンスや安全管理の強化に取り組む必要があります。

400社以上への導入実績を持つWMSも
\  AIソリューションも!  /


 

物流法改正が物流コストに及ぼす影響

物流法改正は業界の効率化やドライバーの労働環境改善を目的としていますが、実施に伴い物流コストへの影響も避けられません。人件費の増加や車両・設備投資の負担、賃金の上昇など、さまざまなコスト要因が発生します。ここでは、特に影響が大きい3つのポイントを解説します。

人件費の増加

物流法改正により、労働時間管理や安全対策の強化が求められるようになり、それに伴う業務量も増える傾向にあります。荷主企業では、CLO(物流統括管理者)の配置や運行管理体制の見直し、教育・記録業務の充実など、人件費の増加につながりやすい要素が広がっている状況です。

車両・設備投資のコスト増加

安全管理や業務効率化のために、運送事業者では車両や設備の更新・データ管理システムの導入などに追加投資が必要になる場合があります。さらに、環境規制の強化により、最新の環境対応型車両や設備への投資が求められるケースがあります。

賃金の上昇

労働環境改善の取り組みに伴い、運送事業者や倉庫事業者では賃金の上昇が進んでいます。増加したコストを配送料金に転嫁しにくい場合、荷主企業にも契約交渉や運賃調整の負担が及ぶ可能性があり、物流コストへの影響が生じやすくなります。


 

物流法改正による業務運営の変化

物流法改正により、荷主企業は単に発注者としての立場にとどまらず、契約・委託体制・運送管理において新たな責任を担うこととなりました。これまで運送事業者の問題とされてきた取引の透明性や労働環境の改善が、荷主企業側の業務プロセスにも影響を及ぼすようになっています。主な変化は以下の通りです。

契約・発注プロセスの書面化・管理強化

運送契約の締結時には、運送役務や附帯作業、燃料サーチャージなどを文書(電子記録可)で交付することが義務化されました。契約条件を明確に示すことで、誤解や不当な取引慣行を防ぎ、荷主企業自身のリスク低減にもつながります。

委託先の適正化・再委託管理

物流法改正により、荷主企業には利用運送の委託内容を適正化し、再委託の流れを把握する役割が求められるようになりました。費用の概算把握や過度な再委託の抑制、管理規程の整備を進めることで、委託先の監督体制を明確にでき、取引の透明性向上にもつながります。

許可確認・委託先選定の厳格化

無許可事業者への委託禁止が徹底されたことで、荷主企業は取引先の許可状況を確認し、適切に選定する体制づくりがもとめられるようになりました。さらに、許可更新制度の導入に伴い、取引先の法令遵守状況や安全管理体制、財務面の健全性を定期的に確認することが求められ、荷主側の監督責任はこれまで以上に明確になっています。

運送体制・業務記録の把握

荷主企業は、実運送事業者の運行体制や荷待ち・荷役などの非効率作業の記録状況を把握する必要があります。これにより、運送事業者との交渉や改善施策の提案が可能となり、物流効率化や労働時間適正化の取り組みに直接的に関与できるようになります。

計画運営型への移行

荷待ち・荷役時間の責任が明確化されたことで、荷主企業は従来の“現場任せ”から、事前の輸送計画や作業予定に基づく計画運営型の管理へ移行する必要があります。搬入時間の調整や作業手順の共有を進めることで、ドライバー拘束の削減と業務効率化につながります。

データ活用の強化

荷主企業には、荷待ち時間や荷役状況、実績データなどを収集・分析し、現場の課題を可視化したうえで改善につなげる取り組みが求められます。データ活用を進めることで、荷待ち時間や作業の偏りといった現場のムダを把握でき、改善点が明確になります。その結果、日々の運用をよりスムーズにし、無駄なコストの発生も抑えやすくなります。

リスクマネジメント・BCPへの対応

災害や事故、委託先が急に運行できなくなる事態に備え、荷主企業にもリスクマネジメントとBCPの整備が求められます。代替ルートや複数の委託先確保、緊急時の連絡体制整備、委託先の法令遵守状況の定期確認を行うことで、突発的な輸送トラブルが発生した場合でも、事業への影響を抑えて対応できる体制を構築できます。

教育・研修の強化

契約担当者や物流管理者に対する法令遵守や運行管理に関する定期的な教育・研修の実施が求められます。法違反リスクやトラブル発生時の対応力を高めることができます。

環境・持続可能性への配慮

輸送計画や積載効率の最適化によるCO₂削減など、環境負荷低減も荷主企業の責任として重要です。効率化と同時に、持続可能な物流体制の整備が求められます。


 

まとめ

物流法改正により、荷主企業は契約・発注・委託体制や運送管理における責任が明確化され、業務運営やコンプライアンス対応、物流コストへの影響は避けられなくなりました。契約書や管理簿の整備、委託先の監督、荷待ち・荷役時間の管理など、従来の慣行中心の業務から計画運営型への移行が求められます。また、実績データや業務記録を活用した運用管理や改善策立案が必須となり、効率化とコスト管理の両立が重要課題となります。荷主企業は、法令遵守と安定的な物流体制の確保を両立させるため、業務フローや管理体制を再設計し、持続可能な物流運営に対応することが求められます。

物流改善について何かお困りごとなどありましたら、お気軽にお問い合わせください。

400社以上への導入実績を持つWMSも
\  AIソリューションも!  /


このコラムの監修者
column_kansyusya-SIS.jpg
セイノー情報サービスは400社以上へのWMS導入を通して培った物流ノウハウをもとに、お客様の戦略立案や物流改善をご支援しています。
当コラムは、経験豊富なコンサルタントやロジスティクス経営士物流技術管理士などの資格を持った社員が監修しています。
記事一覧に戻る

メルマガ登録

導入事例や新しいソリューション情報など、メルマガ会員限定で先行案内しています。

登録はこちら
CONTACT

お問い合わせ

サービスに関するご相談、資料請求は
以下よりお気軽にお問い合わせください