地域物流の効果検証(改善効果)
当社では、物流業界の課題を解決するため、「業界の壁を超える共同輸配送(地域物流)」を検討しています。
検討にあたり、当社を含めた6社を対象に想定している運用が成り立つか、どの程度の効果が得られるのかを確認するため、実際に運用を行い検証しました。
- ・運用が成り立つか:プロトタイプの運用テスト
- ・どの程度効果が得られるか:効果の測定
今回は「効果の測定(結果検証をどのように行ったか、どういう結果が出たか)」について解説します。
検証時の条件・運用などの詳細は、第3話を参照ください。
運用実績
以下の通り検証しました。集荷先と配達先
- ・集荷先:検証に参画した岐阜県内の荷送人企業2社(A社・B社)
- ・配達先:A社・B社の得意先の拠点(関東地域)
スケジュール、輸配送回数
- ・実施期間:2020年5月~7月
- ・輸配送回数:6回
検証した輸配送モデル
現行モデルと、共同輸配送を活用した新たな輸配送モデル、それぞれの実績を数値化し比較検証しました。
各モデルの詳細は、第3話を参照ください。
- ・現行モデル
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- ‐トラックの積載率に関わらず、貸切で車両を仕立てて輸送したと仮定
- ‐算出方法:「輸送していたとしたらどうなるか」を過去実績から試算
- ・新モデル:集荷地域の集約拠点を活用した輸配送モデル
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- ‐全区間(集荷・幹線・配達)を共同輸配送
集荷地域と配達地域、それぞれに集約拠点を設置し、届け先ごとに集約して輸配送- ‐算出方法:実際の輸配送から得た実績値を計測
注意:検証対象となる貨物だけでなく、「運送事業者が独自に集荷した貨物」も実績値に含む - ‐全区間(集荷・幹線・配達)を共同輸配送

効果の検証
算出方法
算出された数値項目と方法は、以下の通りです。
なお、検証数値は全て幹線輸送を対象としています(集荷、配達は対象外)。
- ・パレット枚数、積載重量:今回検証時の実績値を使用
- ・走行距離
‐現行モデル:地図アプリを使用し計測
‐新モデル:今回の検証で得た実績値を使用 - ・走拘束時間:トラックに乗車している時間のほか、待機や休憩時間も含む
- ・車両台数
‐現行モデル:受注1件につき、大型車1台(13tまたは14t)とする
‐新モデル:今回の検証で得た実績値を使用
輸配送結果(1回目)
図3は、6月末に実行された1回目の輸配送結果です。
-
注意:パレット枚数、積載重量
- ‐新モデル:検証対象となる貨物だけでなく、「運送事業者が独自に集荷した貨物」も含む
- ‐現行モデル:新モデルと条件を合わせるため、「独自集荷分」の貨物量を加えて試算

- 1. 積載率
‐パレット換算・重量換算ともに、新モデルの方が向上
‐特にパレット換算の場合、新モデルは積載率87.5%と満車に近い状態 - 2. 拘束時間
‐1回の輸配送で済むため、新モデルの方が19時間10分短縮 - 3. 車両台数、ドライバー人数
‐現行モデル(合計):3回の輸配送が発生するため、それぞれに車両とドライバーが必要
‐新モデル:必要リソースは1台・1名のみ
輸配送結果(全検証6回分の平均値)
図4は、全検証(輸配送6回分)の平均値です。
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注意:パレット枚数、積載重量
- ‐新モデル:検証対象となる貨物だけでなく、「運送事業者が独自に集荷した貨物」も含む
- ‐現行モデル:検証対象となる貨物のみで試算

- 1. 積載率
‐新モデルの方が、パレット換算で54.5ポイント、重量換算で34.7ポイント向上
‐現在の国内平均(重量換算:約40%)と比べても、新モデル(重量換算)の方が約12ポイント向上 - 2. 拘束時間
‐新モデルの方が、1時間53分短縮(効果:-18.2%)
考察:期待できる効果と課題
- ・幹線輸送の積載率向上
- ‐積載率を勘案した計画、及び共同輸配送により積載率が向上
- ‐但し、貨物の「上積み条件」などで変化するため、運用を通じた更なる検証が必要
- ・幹線輸送ドライバーの拘束時間の抑制
- ‐集荷・幹線・配達に分割することで、幹線輸送ドライバーの拘束時間を抑制
- ‐労働環境が改善されることで、ドライバー不足の解消に貢献
- ・必要なリソース(車両、ドライバー)の適正化
- ‐輸配送結果(1回目)の通り、輸送方面が同じであれば、必要リソース(車両、ドライバー)の抑制が可能
- ‐トラック輸送における需給ギャップが解消され、荷主企業における輸送力の安定確保に貢献

まとめ
今回の検証を通じて、共同輸配送(地域物流)による2つの期待効果が認められました。
- ・低迷が続く積載率の向上(効果:重量換算で4,573kg増、34.7ポイント改善)
- ・幹線輸送ドライバーの拘束時間を抑制(効果:-1時間53分抑制、18.2ポイント改善)
共同輸配送(地域物流)の取り組みにより、以下の物流課題を解決することも可能です。
- ・リソース(車両、ドライバー)の適正化により、トラック輸送の需給ギャップを解消
- ・労働環境の改善により、ドライバー不足を解消
しかし、共同輸配送による課題解決は、より多くの企業に受け入れられて初めて達成できます。
今回検証したモデル=「プロトタイプ」が多数の企業で適用可能か、また共同輸配送のニーズがどの程度あるか、
が成功に向けての重要なポイントです。
次回は、プロトタイプの運用テスト結果と、アンケート調査の結果について解説します。
共同輸配送への参画に興味をお持ちの方は、ぜひご一読ください。
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