朝礼が終わり、作業が始まる倉庫。
ピッというスキャン音が響く中、「あれ、ハンディが動かない」と誰かがつぶやきました。
その瞬間、胸がざわつき、
「予備のハンディはあるだろうか…」「このままだと出荷に遅れが出るかもしれない…」
と頭に浮かびます。リーダーになってからは、こうしたトラブルが起きると、作業全体の流れや対応の手順がすぐに気になってしまいます。
「誰が壊した?」よりも「いつから壊れてた?」
ハンディターミナルは、今や倉庫作業には欠かせない道具です。
入荷・出荷・棚卸。すべてがこの小さな端末に支えられています。
それだけでなく、オフィスのプリンターやパソコン、1台でも動かなくなると一気に作業が滞ってしまいます。
「昨日は動いてた」「昼ごろから反応悪かった」
そんな会話をつなぎ合わせながら原因を探るのは、まるで探偵のよう。
ですが、一番の問題は、壊れた瞬間を誰も知らないこと。作業が始まってからでは、修理に出すにも予備を回すにも手間がかかり、どうしても遅れが出てしまいます。
「早く言ってくれれば、こんなに焦らなくて済むのに…」とつい思ってしまいます。
壊した本人も、言えない理由がある
とはいえ、報告が遅れるのにも理由があります。
「自分が壊したのかも」「怒られたらどうしよう」
そう思って、つい黙ってしまう。特にパートさんにとって、ハンディなどは会社の高い機械です。それを壊してしまったとなると、心理的なハードルは想像以上に高くなります。
わざとではなく、落としてしまったり、ぶつけてしまったりしただけのことです。
だからこそ、日頃から「壊してしまったのはしょうがないけど、すぐ言ってね」と声をかけておくことが大切です。「早く言ってもらえるほうが、直すのも早いし、こちらも助かるよ」と、冗談まじりに伝えるだけでも違います。
報告しやすい空気を作るのは、特別な仕組みではなく、日々のちょっとした雰囲気づくりなのです。
言いやすい雰囲気は現場のスピードを上げる
たとえば、壊れたハンディを置く「故障ボックス」を設けるだけでも効果があります。
「置いたらすぐメモを書く」「誰でも入れられる」そんなルールにすれば、報告がスムーズになります。
また、朝礼で「昨日は1台壊れたけど、すぐ報告してくれたから助かった!」と声に出して感謝を伝えるのも、「言っても怒られない」という優しいイメージが現場に根づいていきます。
結局のところ、小さなトラブルを早く共有できる現場ほど、生産性は上がります。
壊したことよりも、黙っていたことのほうが痛いのだから。
ハンディの故障は防げない。でも人間関係は普段から予防ができる!
今日も誰かがぽつりと言います。
「ハンディ、勝手に壊れたみたいです…」
まあ、勝手には壊れないんですけどね。それでも、言ってもらえると助かります。




