2025.9.5

ミルクランとは?メリット・デメリット、手順、事例を解説

物流改善

 

こんにちは。物流アウトソーシングサービス「物流業務クラウド」を提供するセイノー情報サービスです。
ミルクランは、1台の車両が複数のサプライヤーを順番に回って集荷する共同配送方式です。配車や運行管理の効率化、コスト削減、安全性の向上など多くのメリットがあります。一方で、スケジューリングの複雑化や配車制限によるコスト増などが課題です。この記事では、ミルクランの特徴やメリット・デメリット、手順、事例をわかりやすく解説します。ミルクランを検討する際の参考にしてください。

 

目次

  1. 1. ミルクランとは何か?

  2. 2. ミルクランのメリット

  3. 3. ミルクランのデメリット

  4. 4. ミルクランを成功させる手順

  5. 5. ミルクランの事例

  6. 6. まとめ


 

ミルクランとは何か?

ミルクランとは、発注者や発注者から委託された運送会社が車両を手配し、複数のサプライヤーを順番に回って商品や原料を集荷する共同配送の方法です。もともとは牛乳メーカーが牧場を回って生乳を集めた手法が由来で、「巡回集荷」とも呼ばれます。集荷ルートを固定することで、配車や運行管理の手間を軽減できます。特に、各サプライヤーの納品量が少なく、個別に輸送すると非効率になる場合に有効です。

ミルクラン

 

ミルクランのメリット

ミルクランには、コストの透明化、コスト削減、安全性の向上など、さまざまなメリットがあります。ここでは、それぞれの効果について詳しく解説します。

コストを透明化できる

ミルクランは、コストの構造を明確にするうえで有効な手法です。発注者側が車両を手配し、複数のサプライヤーから商品を直接引き取ることで、サプライヤーは配送業務を担う必要がなくなり、請求は製品の製造コストのみに限定されます。配送にかかる費用は発注者側で一元管理されるため、製造コストと配送コストが明確に分離され、各費用の内訳を可視化できます。これにより、コスト構造の把握が容易になり、サプライヤーごとの提供単価を客観的に比較・評価しやすくなります。また、調達戦略の見直しや資金計画の精度向上にもつながります。


配送・検品コストを削減できる

ミルクランは、配送および検品にかかるコストの削減にも効果を発揮します。発注者側が一括して輸送を手配し、輸送計画やオペレーションを実施することで、配送ルートの最適化や積載効率の向上が可能となり、配送コストの削減が期待できます。さらに、1台のトラックで複数のサプライヤーの商品を一括納品できるため、荷受けや検品の回数が減少します。その結果、受入れ作業の負担軽減や人件費の削減にもつながります。


安全性を高められる

ミルクランは、安全面の改善にも寄与します。従来はサプライヤーごとに個別のトラックが工場構内や周辺道路に出入りしていたため、混雑や接触事故、作業中の危険が発生しやすい状況にありました。ミルクランでは、集荷が発注者側の便に集約されることで構内の車両の出入りが減少し、交通の流れがスムーズになります。その結果、接触事故やヒヤリハットのリスクを低減することが可能です。



 

ミルクランのデメリット

ミルクランには多くのメリットがある一方で、注意すべき点もあります。ここでは、代表的なデメリットについて解説します。

集荷のスケジュールが複雑化する

ミルクラン方式を採用する場合、限られた時間内に複数のサプライヤーから集荷を行う必要があるため、スケジュール管理が煩雑になります。トラックドライバーは、各サプライヤーを効率よく回るために、最適なルートを事前に計画したうえで運行する必要があります。さらに、道路状況や交通渋滞などにより予定通りの時間に到着できない可能性もあるため、各サプライヤーと事前に連携し、遅延時の対応方法について取り決めておくことが重要です。


コストが増加するリスクがある

サプライヤーの所在地が広範囲に分散している場合、配送距離が長くなり、集荷にかかる時間が増えることで、人件費や燃料費などのコストが上昇するリスクがあります。また、出荷量が多く1台のトラックでは対応できない場合は、複数の車両を手配する必要があり、その分コストが増加します。このように、配車やルートの調整が複雑になると、ミルクラン方式のメリットが薄れ、かえって全体コストが増加する可能性があるため、事前の綿密な計画と運用体制の構築が求められます。



 

ミルクランを成功させるための手順

ミルクランを成功させるためには、決まった手順を踏む必要があります。以下で、順を追って解説します。

1.サプライヤーとの調整とルール策定

まずは、各サプライヤーと集荷に関する内容を事前にすり合わせることが重要です。集荷場所や対応可能な時間帯、商品数とあわせ、渋滞などによって到着が遅れる場合の対応についても、具体的に確認しておきましょう。さらに、これまで利用していた配送業者の集荷方法について各サプライヤーから情報をもらうことで、無理のない効率的なルールを設けられます。事前の調整を通じて、双方にとって負担の少ない集荷体制を構築しましょう。


2.サプライヤーへの出荷作業の協力依頼と効率化の促進

次に、ミルクラン運用を円滑に進めるためには、サプライヤーの出荷作業に対する協力が不可欠です。出荷作業が遅れると、ドライバーは積み込みが完了するまで現場で待機せざるを得ず、次のサプライヤーへの到着が遅れ、全体の集荷スケジュールに影響を及ぼす可能性があります。こうした遅延を防ぐためには、サプライヤー側での出荷作業の効率化を促進することが重要です。具体的には、作業手順を明確にした業務フローの整備、十分な作業スタッフの配置、マテハン機器)の導入、適切な在庫管理などが挙げられます。


3.配送管理システムの導入と運用整備

最後に、配送管理システム(TMS)の導入と運用体制の整備を進めましょう。配送管理システムを利用することで、各サプライヤーの倉庫への効率的なルートを決められます。これにより、ミルクランを効率よく進めることが可能です。配送管理システムのおもな機能は以下のとおりです。


配送計画の作成

各車両の担当サプライヤーや通行ルートを決める配送計画を立案する

進捗管理

ドライバーの配送状況をリアルタイムで把握し、事故や渋滞が起きた際には配送計画を適宜修正する

運輸管理

集荷にかかる費用を把握し、運賃の計算や請求・入金の管理を実施する

特にドライバーやサプライヤーが多数いる場合は、配送管理システムの導入を検討することをおすすめします。


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ミルクランの事例

ミルクランを検討する際には、他社の事例も参考にしましょう。ここでは、トヨタ自動車株式会社の事例を紹介します。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、ドライバー減少への対応とドライバーの作業負担の軽減および環境負荷の低減を目的に、2019年より従来の「お届け物流」から自社主導の「引き取り物流(ミルクラン方式)」へ移行を進めています。これは1台のトラックが複数のサプライヤーを巡回して部品を集荷する方式で、2016年に九州、2018年に東北で試験的に導入し、2020年9月からは東海地域で本格展開を開始。各地域で約12%の輸送効率改善や約6%のCO₂削減を実現しています。東海地域では荷降ろし環境の整備や積載率向上に取り組み、働きやすさと安全性も向上。2024年末時点でトヨタの物流拠点の約40%にあたる527拠点で切り替えが進んでいます。今後も関係企業と連携しながら、物流の全体最適化と持続可能な輸送体制の確立を目指しています。
コラム:調達物流は自社でコントロールする時代へ(事例:トヨタ自動車による調達物流の改革)


 

まとめ

ミルクランは、1台のトラックが複数のサプライヤーを順番に回って商品を集める共同配送の仕組みです。効率的な配送で、配車・運行管理の効率化やコスト削減、安全性の向上などが期待できます。導入にはサプライヤーとの調整や出荷作業の効率化、配送管理システムの活用が欠かせません。
物流領域のDXを支援するセイノー情報サービスでは、「物流ITクラウド」や「物流業務クラウド」を通じて、サプライチェーンの最適化と現場業務の効率化を実現しています。ミルクランの検討においても、豊富な知見とIT活用により、最適な運用設計や課題解決を支援します。お気軽にご相談ください。


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このコラムの監修者
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セイノー情報サービスは400社以上へのWMS導入を通して培った物流ノウハウをもとに、お客様の戦略立案や物流改善をご支援しています。
当コラムは、経験豊富なコンサルタントやロジスティクス経営士物流技術管理士などの資格を持った社員が監修しています。
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