IT部門が設けたセキュリティルールほど、現場の不満が集まりやすいものはありません。
「また制限?」「他の会社はもっと自由らしいよ」
そんな声を聞くたびに、心の中で「いや、それにはちゃんと理由があるんです……」とつぶやきたくなりますよね。
面倒なルールの本当の意味
ここ最近、物流業界を狙ったサイバー攻撃のニュースが相次いでいます。
システムが止まり、出荷が一時停止するなど、現場への影響は深刻です。
そんな中でよく話題になるのが、USBの使用禁止。
「ちょっとデータを移すだけ」「スマホを充電するだけ」
その 「ちょっとだけ」が、思わぬ感染の入り口になります。
物流センターのように多くの作業者がいる現場では、誰のパソコンから感染が始まるか分かりません。ひとたびシステムが止まれば、出荷も在庫確認もストップ。取引先にも迷惑が及びます。だから、これは単なる面倒なルールではなく、ちゃんと守る理由があるルールなんです。
マスクのようなルールと考えてみる
でも、分かっていても「不便だなぁ」と思う気持ち、ありますよね。
IT部門が「感染防止のマスク役」だとしたら、現場は「働く人の肺」。どちらが欠けても呼吸ができません。コロナ禍の頃、マスクや検温が面倒でも「うつらない、うつさないため」に頑張ったように、ITのルールも誰かを守るためのちょっとした我慢なのだと思います。
「なぜ必要なのか」を伝える工夫を
とはいえ、我慢だけをお願いしても続きません。
だからこそ、私たちIT部門にできるのは、「なぜ必要なのか」を、日常の言葉で伝える工夫です。
たとえば、USBメモリを使いたがる人には「それ、ノーマスクで満員電車に乗るようなものですよ」と言ってみる。添付ファイルの制限に文句を言われたら「マルウェアって、無防備なところから入り込むんですよ。だから添付ファイルに制限があるんです」と軽く返す。小さな比喩ひとつで、相手の表情がやわらぐこともあります。
守る理由を共有できる職場へ
現場とIT部門の温度差は、永遠のテーマかもしれません。
現場は少しでも業務を早く終わらせたい。IT部門は会社を守りたい。どちらも間違っていません。だからこそ、ルールを守ってもらうためには、「守る理由」を伝わる形で共有することが大事なんですよね。
セキュリティルールは、私たちを縛るためではなく、安心して仕事を進めるための空気清浄機みたいなもの。普段は意識しないけれど、これがあるおかげで今日も気持ちよく働けます。
そう思える職場が少しずつ増えていけば、IT部門の「ため息」も、きっと減っていくはずです。



