出荷準備で慌ただしい金曜日の午後。
パレットが並ぶ倉庫の一角で、伝票を確認していたベテランスタッフがふとつぶやきました。
「今日は集荷が遅れるな。トラック、渋滞につかまるぞ」
まだドライバーからの連絡もないのに、そう言って積み込み順を入れ替え始める姿に、「なんで分かるんですか?」と聞きたくなります。
「この時期は近くでイベントがあるんだ。毎年ここが混むんだよ」と笑うベテラン。
実際、30分後に到着したトラックは渋滞で遅れ気味だったのですが、それでも出荷は予定通り完了!まるで先を読んでいたかのような采配に、周囲は驚きます。
天候、曜日、荷主の傾向、道路の混雑、ドライバーの顔ぶれ。
そうした無数の要素を瞬時に組み合わせて判断できる力。
それが、マニュアルには載っていない「現場の勘」です。
ベテランさんにもうまく説明ができない!?
長年の経験からくる判断には、言葉にしにくい感覚が隠れています。
ベテラン自身も、「なぜそう思うのか」をうまく説明できないこともあります。
だからこそ、「やり方を教わる」だけでなく、「考え方を聞く」姿勢が大切です。
「どうしてこの順番にしているんですか?」と尋ねてみると、経験の背景にある思考の筋道が見えてきます。
「教えてもらえる人」に共通する3つの姿勢
ひとつ目は、とりあえずやってみること。
「見て覚えます」より「やってみましたが、合ってますか?」の方が教えたくなります。努力する姿勢は、誰にとっても応援したくなるサインです。
2つ目は、「すごいですね」で終わらせないこと。
「どうしてそうするんですか?」と理由を聞くことで、勘が言葉として引き出されます。冒頭のベテランも、長年の経験から“法則”を掴んでいたのです。
3つ目は、「ありがとうございます」で終わらせないこと。
教わったことを翌日に実践して見せると、「ちゃんと聞いてるな」と信頼が生まれ、次は向こうから声をかけてもらえます。
教えたくなる空気を作る
長年の勘や経験で上手に立ち回れる人ほど、そのノウハウに誇りを持っています。
その誇りを「守り」から「共有」に変えるには、まずリスペクト。
「こうやってきたから、今のチームがあるんですよね」と添えるだけで、表情がやわらぐことも。学びとは、知識の継承ではなく「信頼のやり取り」。
「なぜそうするのか」がわかれば、現場の知恵は財産になる
やり方を真似しているうちは、その人がいなければ回らない現場のまま。
けれど、「どうしてそうするのか」を理解できれば、それは誰でも使えるノウハウになります。
今日の「教えてください」が、明日の「こうすればうまくいきますよ」につながる。そんな循環を生むのが、若手の「学ぶ姿勢」なのかもしれませんね。



