「今週、少しシフトを減らしてもらえますか?」
秋になると、そんな声がちらほら聞こえてきます。
理由はもちろん、「扶養から外れたくないから」
シフト表を開いた瞬間、頭の中ではパズルが動き出します。
この人を減らしたら、誰を入れる?
この時間帯が空くと出荷が回らない……
ただでさえ人手がギリギリの現場で、シフト調整は毎月の頭痛のタネです。
時給アップが「年収の壁」を早める皮肉
かつて多くの人が気にしていたのは「103万円の壁」。
制度改正で多少見直しは進んでいますが、現場の感覚はまだ大きくは変わっていません。
また、やっかいなのは、最近の賃上げの波です。
時給を上げれば採用にはプラスですが、その分「年収の壁」に届くのも早くなります。
「去年は12月まで働けたのに、今年は10月でもうギリギリ」
そんな声も珍しくありませんよね。
時給を上げたせいで勤務時間が減る… なんとも皮肉な話です。
年収の壁が近づいてくると、現場はこう動く
年末が近づくころになると、パートさん同士でも情報交換が始まります。
「うち、そろそろ103万超えそう」
「私も来月からは控えるかも」
そんな会話が休憩室から聞こえてきたら、シフト調整のサイン。慌てて調整しようとしても、他の人も同じタイミングで減らすため、結局穴が埋まらない…だからこそ、そうなる前に動けるよう、管理者側も早めの気配りが欠かせません。
誰が壁を意識している人なのかを早めに把握する
まずは、採用時や年初の面談などで、「扶養内の目安はどのあたりか」をさりげなくヒアリングしておくことが大切です。103万なのか、130万までOKなのか?この違いを知っているだけでも、年末の混乱をかなり防げます。
また、勤怠データをもとに、累計収入を見える化するのも効果的です。
「このペースだと10月には130万円を超えそうですね」と早めに共有できれば、双方が余裕を持って調整に入れます。
最近では、勤怠システムやExcelでも簡単に「年収アラート」を設けることが可能です。
数字で気づく仕組みをつくることが、慌てない第一歩です。
シフトを1年単位で設計する
もう一つのポイントは、シフトを月ごとではなく、年間を見通して設計すること。
「秋以降に勤務を抑える人が多い」とわかっていれば、年間を通してムリのないペースで勤務を配分するなど、計画的な調整ができます。また、「年収の壁が近づいたら◯か月前に相談してくださいね」といった早期相談ルールを決めておくと、パートさんも安心して話しやすくなります。
加えて、繁忙期や急な欠勤に備えて、「この人ならお願いできそう」という人を把握しておくと、急なシフト変更にも余裕が生まれます。
仕組みは変えられなくても、空気は変えられる
年収の壁は、制度の問題です。
管理者の努力だけでどうにかできるものではありません。
それでも、少し早めに動くだけで、焦らずに済みます。
シフト表とにらめっこしながら、「今年は少し楽かも」と思える。
そんな現場を目指したいですね。





