2022.4.1

<第7話>輸送効率の改善余地と荷主企業のメリット

ロジの素 物流クライシスを乗り越えるスマート物流サービス

 

輸送効率の改善余地と荷主企業のメリット

当社は社会問題である物流クライシスを解決するため、「業界の壁を超える共同輸配送」の広がりによる輸送効率の改善を提唱しています。
輸送効率を上げるには積載率を考慮して貨物を組み合わせる必要があります。加えてもし「いつ運ぶか」が調整できれば、さらに高い積載率で運ぶこともできるでしょう。しかし、そのような調整が本当にできるのでしょうか。
今回は「いつ運ぶか(配達日)」を調整できる運送依頼がどの程度あるのか、それが増えることで物流クライシスの解決に貢献できるのかについて解説します

 

「いつ運ぶか」調整可能な運送依頼はどれくらいあるのか

第6話のとおり、当社では荷主企業57社とともに、2021年8月23日から2021年9月19日までの4週間にわたって共同輸配送の試験運用を実施しました。
そのうち、「いつ運ぶか」調整可能な運送依頼はどれくらいあったのでしょうか。

    「調整可能」と判断する条件

  •  ・早期の運送依頼:出荷の前日までに確定した運送依頼をいただく
  •  ・配達(納品)猶予期間:「○日~○日の間に配達(納品)」のように、輸配送スケジュールに幅がある

※試験運用に関する詳細は、第6話を参照ください。

早期の運送依頼

「早期の運送依頼」とは、遅くとも出荷の前日までに確定した依頼を受け取ることです。
早めに受け取ることで、積載率を考慮した輸配送計画を立てるための時間を確保することができます。

試験運用期間中、この条件を満たした運送依頼は36.7%でした。
また、試験運用に参画した荷主企業を対象としたアンケートでは、59.7%が「運送依頼(手配)は、出荷の前日までにすることが多い」と回答しました。

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配達(納品)猶予期間

「配達(納品)猶予期間」とは、輸配送スケジュールに幅がある運送依頼のことです。
「○日~○日の間に配達」のように幅があると、「いつ運ぶか」を運送事業者側で調整できることになります。

試験運用期間中、この条件を満たした運送依頼は16.4%でした。
試験運用に参画した荷主企業を対象としたアンケートでは、61.3%が「納品予定日の事前連絡があれば、納品日を期間で設定して発注することが可能」と回答しました。※荷受人企業の立場となった場合

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荷主企業の輸送力確保に対する危機意識はかなり高まっており、荷送・荷受双方の企業および運送事業者間での情報共有が容易になれば、この2つの条件を満たす運送依頼は更に増えると考えられます。

 

調整可能な運送依頼が増えることの数値的効果

「いつ運ぶか」調整可能な運送依頼が増えれば、はたして物流クライシスが解決するのでしょうか。
数値で考察するために以下のシミュレーションを行いました。

シミュレーション概要

  • ・使用データ:試験運用期間(4週間)のうち、9月6日(月)~10日(金)における東海地域内の集配実績
    - 車両台数182台、5日間の合計貨物量972,767kg(平均:194,553kg/日)
     ※合計貨物量は集荷・配達の両方を含む
  • ・シミュレーション条件:全ての運送依頼が2つの条件を満たしていると仮定する
    -早期の運送依頼、および配達(納品)猶予期間があること

今回のシミュレーションは次の2つの数値で評価します。

  • ・輸送能力:輸送リソースが1日に運びうる物量(単位kg)
  • ・輸送効率:輸送物量÷輸送能力
         今回は4日間の平均積載率(単位%)
         ※有効車両における積載可能重量のグロスを使用

シミュレーションの結果

結果は以下の通りです。

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<結果>

①物量のばらつき(標準偏差):日ごとのばらつきが956kg減少し物量が平準化された
②輸送能力(平均)     : 1日あたりに必要となる輸送能力が83,600kg抑制された(効果:-33.6%)
従来の約7割の輸送リソースで同じ物量を運ぶことができる(輸送リソースの抑制)
③輸送効率(平均)     : 1日あたりの積載率が39.7ポイント改善した
100%を超えており必要な車両の積載能力がフル活用されている状態と言える
※該当車両の複数運行(2回転)が可能となり100%を超過

考察:物流クライシスは解決できるか

早期の運送依頼、および配達(納品)猶予期間に幅を持たせることで、1日あたりの物量が平準化され必要な輸送リソースの最小化が可能となります。同じ車両数・ドライバー数でより多くの貨物を運ぶことができ、結果、輸送リソースの安定供給(確保)に結びつきます。
これらの考察より、この取り組みは物流クライシスの解決に向けた一助になりえると考えています。

 

荷主企業にとってのメリット

「輸送効率(積載率)の改善」というと、「運送事業者の問題」「荷主企業にはメリットが少ない」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし荷主企業にとっても、大きなメリットがあります。


中ロット貨物の輸送課題を解決

荷主企業からヒアリングした課題の1つに「中ロット貨物の輸送網確保」がありました。
路線便では「量が多すぎると敬遠される」「運んでもらえるよう分けて出荷するなど手間をかけている」、貸切車両で運ぶには「量が少なすぎて逆に割高」になってしまうなど、中ロット貨物の輸送に関する課題が散見されました。
そのため、中ロット貨物を積極的に受け入れる当共同輸配送は大きな可能性を秘めています。


輸送力の安定確保はレジリエンス強化につながる

長期化するコロナ、働き方改革、災害対策など変化の激しい現代社会に適応し、「商品の供給を止めない」物流体制を構築することは重要な経営課題の1つです。
柔軟かつ強靭な輸送網を確保し、物流のレジリエンス(社会変化への適応力※)を強化する必要があります。


※レジリエンスとは
「弾力性」「回復力」などと訳され、物理学や心理学の用語として使われてきたが、昨今は「レジリエンス経営」「組織レジリエンス」など企業が社会に適応する力を意味する用語としても使用されている


「脱炭素経営」への取り組み

2050年カーボンニュートラルを目指した脱炭素経営の取り組みが急速に広がっています。
製造現場はもとより調達や販売に伴う輸送時のCO 2は削減対象の1つです。カーボンニュートラルはSDGsとも密接に関係しており、「環境に配慮した企業」であることや「環境に配慮した取り組み」を行うことは、取引先の選定条件にもなっていくことでしょう。自らの企業価値向上と新たなビジネスチャンスの獲得にも結びつきます。


※脱炭素経営に関する環境省の取り組みはこちら

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中ロット貨物の特積みとしてサービス化

セイノーグループをはじめ複数の輸送会社と提携し、2022年1月よりこの共同輸配送を中核とする「配送計画サービス」をスタートしました。当社がサービスプロバイダとして運営し、地域ごとの共同集荷・共同配送、地域間を結ぶ幹線集約輸送を軸に最適な輸送モードを選択することで輸送効率を高め、CO 2排出量とコストの低減に貢献します。

また、ご要望のお客様には「中ロット貨物に限定しない全ての輸配送」の手配・マネジメントをお請けします。
当社はアウトソーシングサービスの一環として、輸配送に特化したマネジメントセンターを長年運用しており高い評価を頂戴しています。中ロット貨物の特積みも選択肢の1つとして提供し始めました。
お客様における物流の最適化と、高い社会適応力を持ち「決して止まらない物流体制」の構築を目指しています。


※サービスの詳細はこちら

 

まとめ

試験運用期間中、以下の条件を満たす運送依頼が一定量存在しました。

  • ・早期の運送依頼:36.7%(アンケート結果では、前日までに依頼する企業が59.7%)
  • ・配達(納品)猶予期間:16.4%(アンケート結果では、荷受企業として調整を受け入れられる企業が61.3%)

また、これらの条件を満たす運送依頼が増えると、物量の平準化、必要な輸送リソースの最小化、輸送効率の改善が見込めるというシミュレーション結果も得られました。


運送依頼の条件緩和は、運送事業者にとってはもちろん、荷主企業にとっても大きなメリットをもたらします。

  • ・現場が苦慮していた「中ロット貨物の輸送網」を確保
  • ・輸送力の安定確保により「供給を止めない」物流体制の構築(レジリエンス強化)が可能
  • ・輸送効率の向上はCO 2排出量の抑制に直結し、自らの企業価値向上や売上拡大にもつながる

このように「業界の壁を超える共同輸配送」は、物流クライシスや環境問題の解決に向け必要不可欠な取り組みです。
今後、共同輸配送を検討する企業は益々増えていきます。
当コラムが、みなさまの取り組みの一助となれば幸いです。


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