今回は、現場における最新技術の活用方法と、これからの物流管理の在り方についてお話します。
ITによる運用管理の高度化
1.需要分析システムを活用した、在庫配置の変更
当社では、在庫量の適正化を行う需要分析システムを、在庫配置(レイアウト)の見直しにも活用しています。 まずは、WMSと連携し、出荷データや在庫データを取り込み、移動指示支援リストを発行します。これに、新商品の販売予測データを踏まえて、最適な棚配置をシミュレーションします。特に、週毎に商品の入れ替えがある小売業のお客様では、この分析を毎週行います。 こうして、在庫配置を出荷傾向に合わせて高頻度に見直すことで、作業時に歩く距離が減り、生産性を向上させることができます。 ※在庫最適化(SLASH)の詳細はこちら
2.継続的に生産性を向上させる取り組み
物流センター内では、ハンディターミナルを使用しない作業も多数あり、その生産性が見過ごされてしまいがちです。かなり以前になりますが、弊社が請け負うアウトソーシングの現場でもこの点が課題となり、計測する仕組みを作ることで改善に取り組みました。 この仕組みや運用方法は非常にシンプルです。 まず、ICカードとタブレットを使用して作業内容と時間を計測し、生産性を計算します。その実績の中から生産性が平均値を超えるデータを用いて、推奨する要員数を算出します。そして、そこに予想される作業量を加味して要員計画を立てます。 この仕組みにより、取得した実績を進捗状況としてリアルタイムに確認できるようになり、センター長は現場での要員調整が行いやすくなりました。 また、人は「少し忙しい」時に最大の生産性を発揮するため、この少し忙しい生産性を基準とすることで、良い状態を計画的に作り出すことができます。そうすることで、より生産性の向上につながるのです。 ※取り組み事例をご紹介するセミナーはこちら
3.AIを活用した最適要員配置
前述の事例では、要員数の算出をシステムで行いましたが、AIを活用することで、さらに高度な要員配置が可能になります。 AIを活用した最適要員配置は、以下のように行います。
- 1. WMSの過去の実績情報を基に、AIで未来の物量を予測
- 2. これを作業量に展開し、作業に必要な人数を予測
- 3. この予測結果に個人毎の生産性・スキルマップ情報とシフト情報を加え、AIで最適な作業を割り当てる
このように、AIを活用することで、計画立案の属人化解消と、業務の標準化が可能となります。さらに、全社共通のKPIも設定できるようになるため、本社物流部としても現場としても管理がしやすくなります。
4.画像データの活用
物流現場でも、画像や動画の活用ニーズが非常に高まっています。 例えば、以下のような利用が考えられます。
- ・輸配送:受領サイン、荷物の破損状況、車載カメラによる運転状況の管理
- ・倉庫 :梱包の内容、入荷した際の商品破損状況、AIを活用した検品
- ・災害時:被災状況の確認(拠点の被害状況、渋滞、交通障害)
画像認識AIの活用やテレワークによる遠隔管理は、今後さらに進むと考えられます。そのため、最新技術ををうまく活用し、作業そのものだけでなく「管理の効率化・高度化」を進めましょう。
これからの物流部門が行うべき 4つのポイント
これからの物流部門が行うべき管理としてお話してきましたが、重要な点は以下の4つにまとめられます。
- 1. 運営管理と運用管理の自社化
- ・物流コストの構造を把握する(そのためにデータとシステムを自社保有する)
- ・新たな技術を検討し、効率化に取り組む
- ・変化を早期に把握し、即応する
- 2. 物流コスト増の要因を数量化
- ・社内の物流制約条件の排除や、要求事項のコストを可視化する
- ・納品条件の調整に、物流部も参加する
- 3. 投資・資産のコントロール
- ・物流資産の投資計画を立案する
- ・償却費用や運用費用を管理する
- 4. 有益なパートナー企業の選定(物流事業者、IT会社 など)
- ・パートナーの技術やノウハウを把握する
- ・変化に即応するための構造改革を提案できるパートナーを選定する
今後、増々重要になることは、社内および社外との連携強化です。 2.物流コスト増の要因を数値化 で述べた通り、まずは社内の「生産・販売・物流」で連携を強化しましょう。例えば、生産側事情による大ロットでの在庫移動や、販売側事情による厳しい納品条件は、物流コストに影響します。そのため、物流コストがいくらかかるのか、本当に必要なのかを協議することは、物流部門の重要な役割です。 生産・販売・物流が連携しモノの流れを最適化することで、「物流」が「ロジスティクス」になり高度化されます。将来が定まっておらず変化の速度が激しい現在を生き残るには、このようなロジスティクスの実現が不可欠です。 そこから更に、お客様や仕入先との連携体制を作ることで、サプライチェーン全体での最適化を図ることができます。 特にコロナ禍では、サプライチェーンが分断され、供給の遅延・停止が起こったことから、仕入れ先やお客様、委託業者との連携強化を推進する企業が増えてきました。
「関係者全体で目標を設定し、目指す方向を共有した上で、ロジスティクスを自社の生産・販売・物流で連携して作り上げる。」物流部はそのための運営管理・運用管理を行います。それがこれからの物流部門の在り方ではないでしょうか。