導入ソリューション
- 作業員管理
- 倉庫管理
- ロボットマネジメント
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- 企業名
- 日本出版販売株式会社
- 業種
- 卸売業
- 売上高
- 2,865億円(2025年3月31日現在) 事業内容
- 1. 書籍、雑誌、教科書及び教材品の取次販売
- 2. 映像及び音声ソフトの製作、販売、ならびにこれに関する著作権の取得、賃貸
- 3. コンピュータ機器及びソフトウェアの販売、ならびに情報提供サービス業
お客様の概要
日本出版販売株式会社は、出版社と書店をつなぎ出版流通の中核を担う、国内最大手の取次企業です。1949年の設立以来、書籍や雑誌、教科書など多様な出版物を、全国の書店をはじめ、コンビニエンスストアやオンライン書店へ安定的に届けてきました。
東京近郊に集約された拠点から、北海道から沖縄まで全国へ商品を届けるという、国内物流の中でも特徴的な配送網を長年にわたり構築してきました。配送効率を高めるため、ライバル会社との共配も行うなど、出版物流ならではの仕組みです。
出版業界の背景
こうした変化の背景には、書店の店頭構成の変化があります。書店では現在、書籍や雑誌に加え、文具、雑貨、手帳、プラモデル、菓子など、幅広い商品が並んでいます。全国に配送ルートと取引基盤を持つ日本出版販売にとって、書店が求める商品を一括して届けられる体制を整えることは、流通全体の効率化にもつながる取り組みでした。
物流システム刷新と「反転攻勢」という戦略
こうした事業環境の変化を受け、日本出版販売では、文具・雑貨の物流を担う3つの拠点を統合し、新物流拠点「N-PORT新座」を新設しました。出版物とは異なる商習慣や出荷特性を持つ非出版商材を集約することで、運用の標準化と処理能力の向上を図るとともに、将来の取扱量拡大にも対応できる体制を整えています。
この物流基盤の再構築を起点として打ち出されたのが、「反転攻勢」という戦略です。
出版物の需要動向の変化や書店取り扱い商材の多様化を前提に、物流を従来の延長線上で捉えるのではなく、将来に向けて競争力を高める基盤として再構築します。出版物以外の文具・雑貨などの商材を扱うことで、従来の物流基盤を最大限に活用し、出版流通の持続可能性を支えます。さらには、物流事業として3PLサービスへの展開も視野に入れ、新たな収益の柱を築くことを目指しています。
単なるシステムの置き換えではなく、事業拡張や多角化に対応できる共通基盤の構築こそが、このプロジェクトの出発点となったのです。
- ・多品種・小ロット出荷による現場負荷の増大
- ・拠点ごとに異なる運用
- ・紙伝票による非効率なピッキング作業
- ・将来を見据えた人材確保が難しい
- ・作業効率の大幅向上と負荷軽減
- ・全体最適を支える物流基盤の実現
- ・作業品質の安定化とヒューマンエラーの抑制
- ・繁忙期・人員変動に強い柔軟な現場運営を実現
動画で見る|WMS×ASRSで進化する物流基盤 ~3PL事業拡大による外部収益の獲得~
抱えていた課題
多品種・小ロット出荷による現場負荷の増大
全国の書店やネット書店への出荷では、多品種の商品を小ロットかつ高頻度で扱う運用が求められていました。そのため、文具・雑貨の物流では、鉛筆1本、消しゴム1個といったバラ単位でのピッキングが日常的に発生していました。また、販売単位が商品ごとに異なることやメーカーの直接納品が混在するなど、文具業界特有の商習慣も存在していました。さらに、取り扱い商品は年々増加しており、特に新入学・新学期需要期には出荷量が平常時を大きく上回り、作業者への負荷も大きくなっていました。
拠点ごとに異なる運用
各拠点では、扱う商品や出荷先が異なっていたため、拠点ごとに複数の運用が存在していました。さらに、それぞれ異なる物流システムで管理されていたため、拠点間での業務の標準化が困難な状況でした。 また、現行システムではアナログ作業が多く、在庫や出荷のデータを正確に取得することができませんでした。さらに、ISBNベースで設計されていたため、文具・雑貨のような非出版商品への対応にも制約がありました。その結果、在庫情報の把握や出荷単位の修正などの作業が複雑化し、現場の負担となっていました。
紙伝票による非効率なピッキング作業
従来は、発行された伝票を確認しながら商品を棚からピッキングしていました。そのため、伝票と商品を目視で照合する必要があり、作業には時間がかかっていました。さらに、文具・雑貨は販売単位が商品ごとに異なり、同じ鉛筆でも「ケース単位で出荷するもの」と「1本単位で出荷するもの」が混在しているため、ピッキングミスが発生することもありました。また、伝票を先出しする運用のため、ピッキング後に数量不足や傷のある商品が見つかると伝票の修正が発生し、確認作業ややり直しが重なることで、作業効率に影響が出ていました。
将来を見据えた人材確保が難しい
出版物流や文具・雑貨の出荷業務は、扱う商品が多品種・小ロットで複雑なため、現場運用の多くは人に依存しています。しかし、今後は労働人口の減少が見込まれるため、人に頼る運用だけでは対応が難しくなることが課題です。そのため、ロボティクス技術や簡単に作業できる設備の導入、当日対応できるアルバイトの活用など、多様な働き手への対応が必要とされていました。
求められる物流基盤
新しい物流システム、ロボットを検討するにあたり、単に機能を比較するだけではなく、現場の運用や将来の拡張性まで見据えた基盤をつくることが重要でした。そこで、WMSや物流ロボットに求める役割や条件を整理した結果、以下のような物流基盤が必要であると考えました。
全社で統一できる物流基盤を
構築
コード設計
これらのポイントを総合的に検討した結果、複数社の比較を経てセイノー情報サービスの倉庫管理システムSLIMSおよびロボットマネジメントシステムRMSを採用しました。セイノー情報サービスを選んだ大きな理由のひとつが、チームの対応力の高さです。RFP段階から、複雑な業務内容やシステム構成を丁寧に理解し、自社では手が回らない部分まで柔軟に対応してくれました。また、導入前の提案内容や対応範囲の調整も迅速に行ってくれたため、立ち上げもスムーズに進めることができました。
物流ロボットの選定
物流ロボットの導入検討では、「生産性・品質・価格」の3点を軸に検討しました。候補として挙がったラピュタASRSは、多品種・小ロットの商品を効率的に扱える点や、レイアウトの柔軟性、将来的な拡張のしやすさが評価されました。
また、ただロボットを導入するのではなく、RMSを介してSLIMSと連携させる設計により、ロボットの動きをシステム側で制御することで、現場任せにならず、業務全体の流れを崩さずに自動化を実現します。RMSにより現場は意識せずに安心して運用できる点も大きなメリットです。
ASRS導入後の業務の流れ
ラピュタASRSとは
ラピュタASRSは、倉庫内の保管・入出庫・ピッキング作業を自動化する自動倉庫システムで、ブロック構造により自由なレイアウトが可能なうえ、規模の拡大や移設も容易です。業界最薄なロボットが、ビン(商品を収納するコンテナ)を下から持ち上げて搬送します。垂直搬送は高速エレベーターが対応し、ルートやエレベーターの選択はAIが自動で判断します。また、電池式でバッテリーは自動交換されるため、業務を止めることなく運用できます。
このN-PORT新座では、650㎡に9階層の棚が設置され、91台のロボットと8台のエレベーターが稼働しています。倉庫全体で取り扱う約4万アイテムのうち、一部の保管・入出庫・ピッキング業務をラピュタASRSが担っています。
ASRSを活用した業務の流れ
入荷作業では、入庫した商品をハンディターミナルでスキャンし、商品をビンに格納します。格納されたビンはロボットが自動で保管場所へ搬送するため、作業者が倉庫内を移動する必要はありません。
出荷作業では、ロボットがSLIMSからの出荷指示に応じて、ピッキングエリアまで該当のビンを自動搬送します。作業者は定位置でピッキング作業を行い、モニターには商品画像や数量、取り出すビン、投入先のビンが表示されます。さらに、指定のビンが発光するなど視覚的に分かりやすい作業環境が整っており、誤ピッキングが発生した際は、その場で該当のビンが点滅して警告される仕組みにより、ミスを未然に防げます。
ピッキングした商品は一旦別のカゴに入れ、その後オリコンへ投入することで、仕分や荷合わせも分かりやすくなっています。このように、ピッキングから仕分までの工程をASRS内で完結させることで、作業効率と正確性の両立を実現しています。
さらに、段ボール製のビンを採用することで、商材サイズに応じたビンの構成を柔軟に変更でき、保管効率の向上だけでなく、商品投入やピッキング時の扱いやすさも高まり、現場作業の負担軽減につながっています。
導入の効果
全体最適を支える物流基盤の構築
SLIMSの導入により、入荷・在庫・出荷といった各業務を一元的に管理できるようになりました。入出荷時にはハンディターミナルで作業実績を登録し、データを即時に反映することで、在庫状況や作業の進捗をリアルタイムで把握できる体制を整えています。
また、これまでISBNコードに依存していた旧システムから脱却し、JANコードをはじめとした多様なコード体系を扱えるようになったことで、今後新たな商品ジャンルが増えた場合も柔軟に対応できます。
さらに、物流機能を疎結合化したシステム構成とすることで、新しい商品や処理ルールを追加する際も、既存の仕組みに大きな影響を与えることなく対応できる体制を構築しました。
ASRS導入による省人化と生産性向上
ASRSの導入により、保管・ピッキング作業の在り方が大きく変わりました。
移動・探索作業の削減による生産性向上
商品を探して歩く、棚を確認するといった作業が不要となり、作業者はピッキングや検品といった本来の作業に集中できるようになりました。その結果、出荷明細の処理能力は、1時間あたり1人で90行から300行に約3倍向上しています。
作業品質の安定とミスの抑制
ASRSから搬送される商品を指示に従って処理するため、「取り間違い」「取り忘れ」といったヒューマンエラーが起きにくい環境が整いました。実際に、ASRSで管理しているエリアでは棚卸時の誤差率はゼロとなりました。
繁忙期・人員変動への対応力向上
作業の流れがシンプルかつ明確になったことで、誰でもその日から作業できる環境になりました。人手不足や作業量の波があっても、現場を安定して回せる体制につながっています。
大量データ処理を支えるシステム基盤
システム面では処理能力と安定性が向上しており、繁忙期に出荷明細が増大してもレスポンスは低下せず、月間70万行にも及ぶ出荷明細の処理に対応できます。さらに、顧客ごとの異なるデータ加工や処理ルールもシステム側で柔軟に制御しているため、現場は意識することなく安定して業務を進められる環境が整っています。
お客様の声
今後の事業展開と、物流に求められる役割
今後は、他社商品を扱う3PLサービスの拡大を見据え、SLIMS・RMS・ASRSを活用した効率的な物流運用を進めていきます。あわせて、日本出版販売の主力商材であり、膨大な物量を扱う出版書籍についても、SLIMSを活用したさらなる効率化を図っていきます。自社で培ってきた物流ノウハウを、出版・非出版を問わず活かせる体制を整えることで、安定的かつ持続可能な物流基盤の構築を目指します。
また今後は、ロボットやシステムによる自動化に加え、物流版AIエージェント「ロジスティクス・エージェント」にも期待しています。現場状況を可視化しながら管理者の判断を支援する仕組みの重要性も高まっていくと考えています。人員配置や作業進捗、生産性の変化といった情報をもとに、気づきや判断材料を提供することで、現場運営のさらなる高度化につながると思います。
セイノー情報サービスへの期待
セイノー情報サービスの評価として大きかったのは、現場とシステムを切り分けず、一体として捉えてくれた点です。現場の実情や日々の運用を理解した前提で話が進むため、細かな背景を一から説明する必要がなく、議論が非常にスムーズでした。また、自社では気付かない点にも柔軟に対応してもらえて、「痒いところに手が届く」大きな安心感がありました。
また、営業・SEともに、できることとできないことを明確に伝える姿勢が印象的でした。自社の対応範囲を正直に説明し、必要に応じて他の選択肢も含めて提案する姿勢から、ベンダーとしての誠実さとプロフェッショナリズムを感じました。熱意をもってプロジェクトに向き合い、最後まで伴走する姿勢も強く印象に残っています。
システムやロボットは導入して終わりではなく、運用を通じて育てていくものです。今後も単なるシステムベンダーではなく、物流全体を共に考え、進化させていくパートナーとしての関係を期待しています。
物流企画部 部長 大熊 祐太 氏
物流企画部 企画課 尾形 萌花 氏
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